◆第107回全国高校野球選手権大会第3日 ▽1回戦 広陵3―1旭川志峯(7日・甲子園)
1月に部員間による暴力事案があり、日本高野連から厳重注意処分を受けていた広陵(広島)は、旭川志峯(北北海道)に逆転勝ちで3年連続初戦突破。甲子園80勝を挙げた。
27個目のアウトを奪った広陵ナインは笑顔なく、駆け足で整列した。普段通り、最後の一礼まで集中。1月に起きた部内での暴力事案に周囲が揺れる中で迎えた1回戦を突破し、中井哲之監督(63)は「本当にいろいろなことで皆さんにご心配をおかけしましたが、甲子園という夢の舞台に立てて、全力でプレーができたことに感謝します」と丁寧に言葉を選んだ。
先制された直後の4回に同点とし、6回に4番・草島絃太が勝ち越しの左犠飛。7回にも犠飛で加点し、要所での堅実さと強さが光った。5回終了後の円陣では指揮官の「後半勝負。グラウンド整備の後に流れが変わる」と日頃から口にしている言葉で地に足を着け、エース堀田昂佑は3安打1失点、10奪三振で完投。6回以降は無安打と圧倒した。
5日に高野連が3月に厳重注意とした事案があったことを発表。6日、学校も野球部員の暴力行為を公表した。処分を終えているが、直前に事実が明るみになって迎えた舞台。歴代単独7位となる甲子園41勝目を挙げたベテラン指揮官も、普段との違いを「それは、ありますよね」と認めた。
試合前には、初めて騒動について言及。この件を改めて選手と話していないことを明かし「反省すべき事は反省して大会を迎えています」と受け止めた。大会前にSNSで情報が拡散するなど騒ぎが広がる難しい状況だが、部員は球場にも宿舎にも携帯電話などの通信機器を一切、持ち込んでいない。「子どもたちが決めたルール」という伝統。好投した堀田は周囲の様子は「全然知らないです」と準備に集中した。
吹奏楽部はコンクールを優先し、チアリーダーも不在。ナイターの日帰り移動に騒動も重なり、同校では異例の応援縮小となった。控え部員の大声に、主将の空輝星は「応援してくれる人がいるだけで力になる。仲間のために」と白球を追った。「(出場を)認めていただいた。粛々と全力を」と中井監督。全国屈指の強豪の春夏通算80勝の節目は、不思議な空気に包まれた。