◆JERAセ・リーグ 巨人1―3阪神(17日・東京ドーム)

 さん然と輝く金字塔を打ち立てても、阪神・石井大智投手(28)の表情は変わらない。ただ心の中には、尽きることのない感謝の気持ちが充満していた。

2021年の平良(西武)を超え、NPB新記録の40戦連続無失点を達成。「たまたまかなと思う」と振り返った最強右腕は、こう続けた。

 「そのたまたまを引き寄せるためにいろんなことをしている。自分で結果は左右できないけど、準備はプライドを持ってやってきた」

 2点リードの8回にマウンドへ。1死から岡本に遊撃内野安打を許したが、冷静だった。「変化球が合うバッターかな」と続くキャベッジには全球直球勝負で挑み、最後は内角150キロ直球で見逃し三振。岸田も右飛に仕留めて快挙を成し遂げた。「いつも通り彼らしいピッチング」と藤川監督。今季43試合の登板で、失点は4月4日の巨人戦(東京D)で喫した1点のみ。頭部打球直撃の苦難も乗り越え、防御率0・21と異次元だ。

 原点は秋田高専からトライアウトを受けて入団した四国IL・高知時代。四国IL選抜の一員として臨んだ北米遠征で、世界観が変わった。

約1か月間で米国やカナダを転々とし、MLBを目指す米独立リーグ所属の選手と対戦。一投一打に全てを懸け、本気で夢を追うプレーヤーの熱を肌で感じた。「本当にいい経験になった」。その後、ドラフト8位から始まったプロ野球人生。不断の努力でここまではい上がってきた。

 「頭に当たった試合は2球しか投げてないし、その後は湯浅が抑えてくれた。日々、守ってくださる野手の皆さんにも感謝したい」。首位独走のチームは東京Dで球団最多のシーズン9勝目。貯金を今季最多の25に伸ばし、優勝マジックも2つ減らして22とした。鉄壁のセットアッパーが君臨する藤川阪神に、死角はない。(中野 雄太)

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