◆第107回全国高校野球選手権大会第14日 ▽準決勝 日大三4―2県岐阜商=延長10回タイブレーク=(21日・甲子園)

 16年ぶりのベスト4入りを果たした県岐阜商(岐阜)が準決勝で日大三(西東京)に敗れた。2―2で延長10回タイブレークを迎えたが、1死二、三塁から連打を浴びて2点を献上。

その後の攻撃で得点を奪うことができなかった。生まれつき左手指が欠損するハンデを持つ横山温大右翼手(3年)は安打こそなかったが、0―1で迎えた2回無死一、三塁から右翼へ犠飛を放って同点に追いつくなどチームに貢献した。

 自信いっぱいの表情だった。「ここまで来て悔いはない。みんなで胸を張って家に帰りたいなと思います」。延長10回無死一、二塁から得点できず惜敗。それでも、グラウンドに整列する横山の目に涙はなかった。すがすがしい表情で、夢舞台の景色を胸に刻んだ。

 初回に先制され、迎えた2回無死一、三塁のチャンス。「絶対に追いつくぞ。なんとしてでも同点に追いつこう」。内角低めの変化球に食らいつき、右犠飛で同点とした。

9回無死で迎えた第4打席では、観客からの応援が背番号9を後押しした。惜しくも左飛に倒れたが「大きな声援があって、ここまでやってきてよかったなと改めて思った。ここに立てて、ここまでやってきてよかった」と思いを口にした。

 4強で唯一の公立校。ハンデを抱えながらもスタメンで活躍する横山の存在もあり、世間から大きな注目を集めた。「テレビとかで知ってもらえるのは自分的にもうれしい。周りの人たちに勇気を与えられるようにというのもあって、そういう思いで甲子園でプレーしていた。ハンデがあってもここまでやってこられるんだぞっていうのをしっかり示せたと思う」。準々決勝まで4試合連続安打。背番号9の懸命なプレーは、多くの人々に勇気をもたらした。

 今後は大学に進学し、野球を続ける予定だ。「どこまで行けるか分からないですけど、行けるならプロまで頑張っていきたい」。

横山の戦いは、まだ終わらない。

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