◆JERA セ・リーグ ヤクルト1―7巨人(21日・神宮)

 巨人の田中将大投手(36)が史上4人目の日米通算200勝に王手をかけた。ヤクルト戦で5回3安打1失点と好投し、4月3日以来4か月半ぶりの今季2勝目、日米199勝目を挙げた。

打線は初回に主砲・岡本和真内野手(29)の適時二塁打で先手を取ると、2回にはリチャードと丸に2ランが飛び出すなど、6長短打で一挙5点を援護。6回以降は4投手が無失点でつないだ。チームも1日で5割に復帰し、3カードぶりの勝ち越しを決めた。

 自信を取り戻した。田中将が狙い通りスプリットを沈めた。5回2死一塁から最後は二ゴロ。直前のエラーを謝ってきた中山の尻を笑顔でたたきベンチへ戻った。5回3安打1失点、無四球の快投で4か月半ぶりの今季2勝目。楽天2年目の08年5月25日以来、神宮で6297日ぶりに勝利投手のコールを響かせ「とにかくうれしいです、勝てて」。日米199勝目を祝うマー君コールに、頬も緩んだ。

 17年ぶりに上がった赤土のマウンド。最速147キロの直球には角度と力があった。

「ストレートの状態が良く、押していけた」と5種の変化球を散らしながら3回までに4K。2回は村上から低めスライダーで空振り三振を奪い、1死二塁から山田には3球勝負を挑んだ。磨いてきた外角直球で見逃し三振。阿部監督も「(立ち上がりを)切り抜けて上がってきた」とベテランの投球術をたたえた。

 ファームにいた7月下旬。2月に密着指導された久保巡回投手コーチと久しぶりに本音で話し合った。開幕以降は自分で復活の糸口を探っていたが、はっきりと言われた。「今のままじゃ難しいよ」。キャンプ時に教わった一塁方向に左足を引く始動、縦回転のフォームなどを再確認。「マー君、諦めてないよね? 俺は諦めてないよ」。「大丈夫です」―。最後まで前向きに終わった会話で心が晴れた。

 シーズン前半、静観していた久保コーチは恋人に例え「あまり追っかけても逃げる。追いすぎず、離れすぎず。『自分でやりたい』というのも出して立ち向かった。けど最後に詰まってしまった。ここで話すべきだろうと」。必ず戦力になれると信じての助言。「話すタイミングとか、それも久保さんの優しさだと思う」。再昇格後は3戦、計15回2/3を自責2。結果で応えた。

 フォーム以外もアップデートした。ストライクゾーンを一から見直し、ブルペン捕手には小さく構えてもらうようにした。ヤンキース時代は“的”となる捕手が大きい上に、アバウトに構えるのが主流。

メジャーでの7年間で、気付かぬうちに制球力に狂いが生じていた。「1日1ミリのズレが何年かで何十センチのズレにつながっていくじゃない?」と助言をくれた桑田2軍監督との時間にも、気付きがあった。

 1軍での連続KO、バッシングも味わった。苦しい時、合言葉のように繰り返した。「俺らはマウンドで返せばいい」。5度目の挑戦で200勝王手。「(春先と)全然内容が違う。周りの方々の支えがあって」と何度も感謝した。指揮官には「頑張ってもらうよ」と28日の広島戦(マツダ)先発も明言され「2個3個、一気に勝てるわけじゃない。一つ一つ前に進んでいきたい」。日米177勝で日本球界に復帰してから5年。光を見いだし、偉業の扉に手をかけた。

(堀内 啓太)

◆記録メモ 田中将(巨)が21日のヤクルト戦で今季2勝目。これで8月はNPB通算で最多を更新する23勝目(7敗)。勝率は2ケタ以上登板の月では.767と抜群の成績を残している。

◆マーに聞く「とにかく大胆に行こうと」

 ―どんな思いで今日は。

 「先発としてアウトを1つでも多く取りたい気持ちで」

 ―序盤から大量援護。

 「非常に楽になった。とにかく大胆にいこうと」

 ―投球内容は。

 「これまで走者を出した後、慎重になりすぎる部分もあったので『ここで変えていかないと』と。ソロ本塁打OKぐらいの気持ちで攻めた。捕手の岸田とも話してプラン通り投げられた」

 ―日米通算199勝目。

 「2軍での暮らしも長かったし、応援してくれる方々の期待にも応えたいなと思っていた。勝ててよかった」

 ―昇格前の7月下旬に今のフォームになり安定した。

ステップアップした感じは。

 「そうですね。取り組み、自分がやろうとしている形の部分がようやくつながってきた」

 ―次回登板へ。

 「次は少しでも長いイニングを任せてもらえるように、もっと良い投球ができるように頑張りたい」

編集部おすすめ