◆第107回全国高校野球選手権大会第12日 ▽3回戦 横浜5―0津田学園(17日・甲子園)
今春センバツ王者の横浜(神奈川)が津田学園(三重)に5―0で勝利し、2008年以来17年ぶりに8強入りした。最速152キロの2年生右腕・織田翔希は、食あたりで万全ではない中、先発を志願して5安打完封。
派手なガッツポーズも雄たけびもない。大甲子園のスコアボードに9つのゼロを並べた瞬間、織田は静かに拳を握った。106球で5安打に黙らせ、今大会2度目の完封劇。それでも高揚感とは無縁だった。
「自分たちは春夏連覇を目指している。この一戦も通過点。目標は達成していないので、大きなガッツポーズはいらないと思います」
自己最速へあと1キロに迫る151キロと直球は走り、チェンジアップを沈め凡打の山を築いた。5回2死まで無安打。3点リードの7回には1死満塁を招くが、直球で遊ゴロ併殺に仕留めた。
舞台裏は過酷だった。実は15日に食あたりを発症。16日の前日練習には参加せず、ホテルで休養した。だが、織田は村田浩明監督(39)に直訴した。「3年生とまだまだやりたいので、僕が投げます。信じてください」。
少ない球数は制球力向上のたまものだ。「キャッチボールを一番大切にしています」。初夏に村田監督から「投手はキャッチボールが命だ」と指導を受け、原点回帰した。「思った軌道で投げることを意識して、球がグラブの奥に突き刺さり、グラブを通り越して奥に行くイメージです」。相手を務める前田一葵投手(3年)は言う。
くしくも3回戦での5―0勝利は、98年夏に春夏連覇を達成した松坂が星稜戦で完封した時と同じスコア。吉兆だ。「この先、勝たないと意味がない。もっとチームに貢献したい」と織田。27年前の再現へ、どんな難敵もその右腕で封じ込める。(加藤 弘士)
▼横浜2年生初の2完封 初戦で完封勝利した横浜の2年生・織田翔希が、2度目の完封勝ち。
夏の甲子園で下級生投手が1大会2完封以上は、昨年2年生で2完封した京都国際・西村一毅以来。神奈川県勢では60年3度の法政二・柴田勲、87年2度の横浜商・古沢直樹(ともに2年生)と3人目だ。
また、横浜で1大会2度以上の完封勝利は、98年春夏ともに3度の松坂大輔以来2人目で、下級生では初。2年生までに通算2度も織田が初(他に永川英植が73、74年春と2、3年生で計2度記録)。