◆パ・リーグ 日本ハム4―3ソフトバンク(22日・エスコンフィールド)

 2位の日本ハムが首位・ソフトバンクとの3連戦初戦に競り勝ち、ゲーム差を2・5に縮めてホークスの優勝マジック初点灯を阻止した。「7番・中堅」で出場した万波中正外野手(25)が、同点の7回に右越えへ決勝19号ソロ。

逆転Vへ負けられない直接対決を前に新庄剛志監督(53)から助言を受けた大砲が、9試合ぶりの一発で試合を決めた。

 試合を決める放物線が、ギリギリでフェンスを越えた。万波はダイヤモンドを一周し、新庄監督と笑顔のハイタッチを交わした。3―3の7回無死、藤井から右翼席最前列へ決勝19号ソロ。「打ったらヒーローだな。ほんと『行ってくれ』と願いながら走っていた。最高です。ビリビリきました」。11日のソフトバンク戦(みずほペイペイ)以来9試合ぶりの一発で首位ホークスのマジック点灯を阻止し、ゲーム差を2・5に縮めた。

 今季は本塁打こそリーグ3位だが、打率はリーグ最下位の2割2分1厘。スタメンを外れることも多く、開幕前に掲げた全試合出場は6月の段階で消えた。悩めるスラッガーを救ったのは、新庄監督の魔法の一言だった。

 決戦2日前の20日。エスコンでの試合前、ティー打撃中の万波に指揮官が歩み寄った。「一回大きいの狙うのを我慢して、最悪ペッパー(打撃)くらいでいいから芯に当てるのを意識して」と、右肩をポンッ。わずか1分足らずの会話だったが、万波にとっては大きかった。「タイミングの取り方とか、いろんな人にヒントをもらいながらやっていることが感覚的に良かった。それプラスでボスに『力感減らして』と言われて、すごくいいバランスが見つかった」。フリー打撃では、捉えにいく時の前傾姿勢を崩さないよう意識し、「他の打席も含め、いいなと感じることが増えた。やりたいことがかみ合って、試合の中でも表現できつつある」と効果を実感した。

 23日も敗れれば自力優勝の可能性が消滅し、昨季王者に優勝マジックがともる。新庄監督は「ああいうところで決める男とは信じていた。調子上がってくるな、と思っていた」と満足そうに振り返り、続けた。「追いかける立場ではありますけど、ワクワクさせてくれているのはソフトバンクさんのおかげ。

きっちりあしたあさっても勝たせてもらって、デッドヒートをファンのみんなに見せられたら」。大舞台でこそ輝く“新庄マジック”が、王者のマジック点灯を阻止する。(川上 晴輝)

 ◆主な今季の新庄マジック

 ▽気が変わり代打(5月31日・ロッテ戦=エスコン) 2点を追う9回2死二、三塁で代走の準備をさせていたはずの矢沢を代打起用。同点の中前2点打を放ち二盗も決め、郡司の一打でサヨナラ生還。「何で矢沢くんいったんだろ、俺? 勘ですね」

 ▽新人を大役に(7月26日・ロッテ戦=同) 後半開幕戦に高卒ドラ1の柴田を起用し、3回完全投球。2番手のバーヘイゲンも6回無失点に抑える完封リレーに「ばっちりでしょ。今日は自画自賛」。

 ▽意表をつく奇策(8月5日・西武戦=同) 3点を先制した直後の3回1死二、三塁で万波に2ランスクイズを命じて成功。「あれがサードフライダブルプレーだったらアンチがお祭り騒ぎ」

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