ドジャースの救援陣は仲が良い。今年メジャーに昇格したばかりのルーキーも中堅もベテランも、みんな一緒によく話し、よく笑う。

いつも笑顔で皆の話に耳を傾け、絶妙なタイミングで相づちやジョークを入れるのが、チーム最年長のカービー・イエーツ投手(38)だ。

 150キロ超の直球とスプリットを軸に、パドレス時代の2019年に41セーブを挙げてセーブ王を獲得。昨季はレンジャーズで7勝2敗33セーブ、防御率1.17をマークして今年1月末にドジャースに加入した。だが、5月に右太もも裏を痛めて負傷者リスト(IL)入り。3週間後に復活したが、8月に入ると腰の痛みで再びIL入りし、現在は8月中の復帰を目指したリハビリの最終段階にある。

 「今回のことは本当につらい。ようやく夢見てきたチームに入ったから、みんなの期待に応えたいのに、それができずにフラストレーションを感じている」と悔しそうな表情を見せる。年齢を重ね、変化しつつある肉体への対応も迫られていることも事実で「これまで下半身の故障や問題を抱えたことは一度もなかった。それが年齢のせいなのか、昨オフのトレーニングが悪かったのかは分からない。ただ、37歳の時の方が、38歳の今よりも良い状態に感じていた」と話す。

 不屈の男だ。これまでに06、21年と2度のトミー・ジョン手術を受けた。

特にセーブ王を獲得した後に受けた2度目は、トップコンディションに戻すまでに約3年間を要した。それでも「もう野球は諦めよう」と思ったことは一度もないという。

 「この競技は疑念に満ちている。マウンドに上がって自分を疑うこともあるし、もう戻れないのではないかと思うこともある。でも俺は、そういう疑念をうまく排除することができた。自分は戻れないとか、もうできないと思ったことは一度もなかった。結局は一歩一歩、進み続けるしかないのだから」

 諦めずに続けるために必要なのは、「決意」だという。「何かをやろうと自分を信じることができれば、毎回ではなくても大抵は実現できる。そして、決意をした上で、良いプレーをしなければならない。ただプレーするのではなく、良いプレーをし続ける。気を抜くことはできない。リラックスしすぎることも許されない。

それがメジャーだ」

 体の痛みを抱え、年齢に応じて調整を変え続けていても野球を続ける理由は。そう尋ねると「野球をしているときが一番楽しいから。それに、野球は人生について教えてくれる」と続けた。

 「野球は失敗を学ばなければならない数少ないスポーツのひとつ。失望することを学び、何かに向かって努力しても必ずしも成功しないことに、どう向き合うかを学ぶ。それと同時に、努力して目標を達成したとき、どれほど報われたと感じられるかも学ぶことができる。野球にはそうした人生の教訓がたくさん含まれている」

 そういえば…と思って聞いてみた。ともにトミー・ジョン手術を2度経験して復帰した投手として、大谷から何か相談されたことがあるか。

 「ない(笑)。もし彼が求めれば、俺は喜んでアドバイスをするよ。でも、彼にはその必要がないと思う。自分が毎日何をすべきか、どう感じたいかをよく理解しているからね」

 経験豊富で、観察眼にも優れる。

言葉のみならず背中でも“語れる”ベテランの存在は、若い選手が多いド軍で何よりの財産だ。(村山みち通信員)

 ◆カービー・イエーツ(Kirby Yates)1987年3月25日、米ハワイ州生まれ。38歳。2005年のアマチュアドラフト26巡目でRソックスから指名を受けるも、ヤバパイ大に進学。09年にレイズと契約し、14年にメジャーデビュー。ヤンキース、エンゼルスを経て、17年にパドレスへ移籍。19年に41セーブを挙げてセーブ王を獲得。25年1月に1年1300万ドル(約19億円)でドジャースに入団。178センチ、89キロ。右投左打。

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