日本相撲協会は1日、秋場所(14日初日、両国国技館)の新番付を発表し、21歳の安青錦(安治川)がウクライナ出身初の三役となる新小結に昇進した。初土俵から所要12場所の新三役は、年6場所制となった1958年以降初土俵(付け出しを除く)では朝青龍らの14場所を抜き最速。

東京・江東区の部屋で会見した安青錦は、大関取りへの意気込みを語った。日大出身で28歳の日翔志(追手風)も新入幕を遂げ埼玉・草加市の部屋で会見した。

 安青錦は新たな番付表で自身のしこ名を確認すると、表情をほころばせた。「番付を見て、名前がちょっと大きくなったのでうれしかった」。ウクライナ出身初の小結。所要12場所の新三役は58年以降初土俵(付け出し除く)で最速だ。小錦、朝青龍、琴欧州(後の琴欧洲)の14場所を上回り「記録を作ったのはうれしい」と素直に喜んだ。

 ただ、見据えるのはその先だ。「三役はもっと上の番付もある。満足するところじゃない」。スピード新三役の上位10人では自身を除く9人のうち、元横綱の朝青龍、武蔵丸、旭富士、曙を含む8人がその後、大関以上の地位を経験している。出世街道をひた走る21歳は「大関を目指して頑張っていく」と誓った。

 母国で相撲に取り組んでいたが、ロシアの侵攻を受け、戦禍を逃れて22年4月に来日した。同12月の創設と同時に入門した安治川部屋から初の三役力士となった。会見に同席した師匠の安治川親方(元関脇・安美錦)も「初めて会った時からしたら夢のよう。ここからもう一段上に2人でどう上がっていくか。燃えている」と二人三脚で挑戦を支える決意を示した。

 先場所は新入幕から3場所連続の11勝をマークしたが、14日目から連敗して初の賜杯を逃した。安青錦は秋場所へ「悔しい思いをぶつけていきたい。先場所よりいい成績を出せるように頑張りたい」と気合を込めた。

 大関昇進の目安は「三役で直近3場所33勝」だが、平幕が起点となった例も58年以降で照ノ富士ら6度ある。新入幕から4場所連続の2桁勝利なら、戦後初の快挙。さらに新三役場所で自己最高成績を残せば、11月の九州場所での大関取りの機運が高まる可能性も考えられる。21歳の新鋭が、大関への道も一気に駆け上がる。

(林 直史)

 ◆3場所前が平幕での大関昇進 年6場所制となった1958年以降で62年名古屋の栃光、63年春の豊山、83年夏の朝潮、86年初の北尾(後の横綱・双羽黒)、15年名古屋の照ノ富士、18年名古屋の栃ノ心の6人。照ノ富士は東前頭2枚目で8勝だったが、東関脇で13勝し、3場所目は12勝で優勝を飾って昇進した。

 ◆安青錦 新大(あおにしき・あらた)本名ヤブグシシン・ダニーロ 2004年3月23日、ウクライナ・ビンニツャ生まれ。21歳。7歳で相撲を始める。23年秋場所で初土俵。24年九州場所で新十両。しこ名は師匠(元関脇・安美錦)から安と錦をもらい、ウクライナの国旗と目の色から青をつけたのが由来。182センチ、138キロ。得意は右四つ、寄り。

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