「SOPHIA」の松岡充と「CHEMISTRY(ケミストリー)」の堂珍嘉邦が、13日開幕のTRUMPシリーズ最新作ミュージカル「キルバーン」(東京・サンシャイン劇場で開幕)で11年ぶりの共演を果たす。音楽というフィールドでも歩み続けている2人が互いのことを語り尽くした。
二人が並んでソファに座った。それだけで、バチバチと化学反応が起きる音が聞こえてくるようだった。共演は14年の映画「醒めながら見る夢」以来。松岡は「堂珍くんが(座組に)入るっていうのはすごくうれしかった」と話し、堂珍も「松岡さんと一緒にできる。出演の決め手はそこでしたね」と久々の共演を喜んだ。
吸血種と人間が共存する社会で、永遠の命を持つと言われる吸血種“トランプ”の不死伝説に翻弄される者たちを描く同シリーズ。末満健一氏が2009年から行っているシリーズで、今回は”脳天突き破るヒャッハーミュージカル“を掲げ、観客没入型のステージ展開となる。主演となる不死卿ドナテルロを松岡が、用心棒のダリを堂珍が演じる。「最近殺陣が楽しくなってきました。爽快感があって新鮮な感じ」と稽古の手応えも感じている様子の堂珍。座長の松岡は「やることが多すぎて、アップアップしてますよ。帰ったら寝落ちしちゃいます」と全身全霊で挑んでいる様子だった。
ロックバンド「SOPHIA」のボーカル松岡と、ボーカルデュオ「CHEMISTRY」として活動する堂珍。互いの印象を聞くと、松岡は「堂珍くんは誰ともかぶらない世界観を確立している」と答えた。「やっぱかっこいいですよ。表現者としてそうあるべきだと思います。ちゃんと看板を背負って、風を受けて来た人のたたずまいなんですよ。僕が演出家だったら(堂珍は)オールオッケーですよ。『もっとこうしたら』とか言うのが恥ずかしいぐらい。柱がそこにある感じ」
対する堂珍は「すごく柔軟な方に見える」と松岡を表する。「音楽のフィールドから舞台をやるとなると、バランス感覚が必要。そのバランスはどっちかをやればやるほど傾いていくし、そっちの世界に染まっていくはずなんです。だけど、松岡さんは自分のライブでお客さんを埋めて、舞台もやって、バランスを崩さずにずっと走り続けてきている。もしかしたら今後、自分も同じ道を歩むかもしれないので、その生きざまを僕はすごく見させていただいています」
そして、互いの共通項について松岡は「付き合いが悪いところ」と笑った。
「SOPHIA」は今年30周年、「CHEMISTRY」は来年で25周年を迎える。次なる目標は何か。松岡は「自分が今まで踏み込んで行かなかったものに貪欲に踏み込んで行きたい」と力を込める。「同じ舞台、ライブをやるにしても地方でやるとか、海外の箱でやるとか。
堂珍は「目の前のことをきっちりやっていきたい」という。12年にグループとしての活動休止を発表し、ソロ活動に専念。17年に再開した経緯を踏まえての言葉だ。「グループの活動を休止して、数年空いて、そこからグループ再開して。その間にはソロでアルバムをリリースして全国を回ったり、自分がもともとやってみたかったこととかをフットワーク軽くやってた。最初は居心地が良かったんですけど、でもやっぱり居心地が良くてもしょうがないなって思ったんです。目の前のことを一個一個きっちりやっていかないと意味ないなって」
観客へ向けてのコメントをお願いすると、「『3回くらい見に来てほしい』って簡単にいうヤツめちゃくちゃ腹立つんですよ」と松岡。後に続く言葉には表現者として長く生きてきた松岡のあたたかさがにじんでいた。「来てほしいですよ。もちろん来てほしいんだけど、チケット代いくらするんだよって。今どんなライブだって舞台だって1万円切らないんですよ。
最後に、堂珍が「松岡さんと僕のバトルシーンもありますからね」と言うと、松岡は「新たなケミストリーが生まれるね(笑)」と返した。二人がともにミュージカルの舞台で躍動する。(瀬戸 花音)