◆世界陸上 最終日(21日、国立競技場)
世界陸上は21日、東京・国立競技場で9日間の全日程を終えて閉幕した。1991年大会以来、34年ぶり2度目の東京開催で、開催国としては史上最多3度目となった祭典に観客動員数は前回91年の58万1462人を上回る61万9288人の大盛況だった。
日本では、大阪大会以来18年ぶりの自国開催は連日熱気に包まれた。来場者数は9日間で約62万人。人気種目の決勝日はチケットの売り切れも続出し、選手たちがそろって口にしたのが、声援の大きさだった。最終日は今大会最多の5万8723人を動員。おなかに響いてくるような満員の大歓声を、男子3000メートル障害で8位に入賞した三浦龍司(23)=スバル=は「地鳴りのよう」と表現した。
21年東京五輪はコロナ禍で原則無観客開催だった。日本陸連の山崎一彦強化委員長(54)は「本当にお客さんが入ってくれるか、とても心配だった」と話していたが、無用の心配だった。会場の盛り上がりはもちろん、中継したTBSの視聴率も好調で連日SNSでも陸上の話題が多く発信された。欧州では盛んな陸上観戦。
日本陸上界は大きな成長を見せた。前回の東京大会だった91年。当時は男子マラソン金の谷口浩美らロード種目の躍進が目立ち、女子マラソンで4位に入った日本陸連の有森裕子会長(58)は「トラック&フィールド種目も皆、すごく頑張っていた。でも、世界とはものすごく遠かったし、注目度もものすごく低かった」と振り返る。トラック&フィールド種目での決勝進出は、男子400メートル7位の高野進だけだった。
男子400メートル障害代表として91年東京大会に出場した山崎強化委員長。14年から次世代育成施策を導入し、指導する村竹ラシッド(23)=JAL=も、今大会男子110メートル障害5位に導いた。同様に91年大会当時の苦しみを知る元競技者たちが、世界で戦う選手らを熱血指導中だ。今大会前のインタビュー取材時で聞いた有森会長の言葉を思い出した。「思いを持って育成している方たちが、さまざまな現場に散らばっている。34年ぶりに帰ってきた東京でどれだけ変わったかを見ていただけたら」―。