◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 選挙が近づくと政治家のインタビューが大きく掲載される。スポーツ紙らしい、くだけた記事が多く、写真も独特なポーズをお願いして撮らせてもらう。

 ある女性政治家の写真取材で肝を冷やした経験がある。インタビューが終わり全身の撮影をお願いすると突然、表情が険しくなった。「昨夜、レストランの出入りの時にフラッシュを焚きまくられて腹が立つ思いをした」「承諾もなく不愉快な撮影の仕方をしたのは女性カメラマン」と小言を語り始めた。普段はサービス精神てんこ盛りの方で、滞りなく取材できると思い込んでいた私は、予想外の一言に面食らってしまった。

 機嫌を悪くさせた女性カメラマンと私は一切関係ない。しかしながら不愉快な思いを引きずっていたら、動きのあるポーズは拒否されても仕方ない。ちょうど妊娠中で、身体のラインがよくわかる写真をと記者から注文されていたが、無難に済まそうと一枚だけシャッターを切った。

 するとその女性政治家は毒を吐きスッキリしたのか再び豪快な笑顔を復活させた。ならばこちらもと調子に乗り、「右向きで2、3歩いて」「ウエストラインがよく見えるようポーズしてください」などとずうずうしく頼んでしまった。するとモデルなみに笑顔でポーズを決めてくれた。

 2日連続で初対面の女性カメラマンからしつこく撮影をされ、不愉快だったと思う。しかし表情からは、こちらの取材意図を理解し対応してくれる優しい心づかいが伝わり、本当に助けられた。

(写真担当・頓所 美代子)

 ◆頓所 美代子(とんしょ・みよこ)1990年入社、インタビューからプロ野球、サッカーと幅広く取材。

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