吉田正尚外野手(32)が所属するレッドソックスが、21年以来4年ぶりにプレーオフ進出を決めた。ヒットで出塁した打者がベース上で、飛行機の翼のように両手を広げるしぐさにお気づきだろうか。

味方ベンチでもナインが同様に、両手を広げて応えているシーンがよく見られる。これは、今季のシーズン途中から、レ軍で出塁した打者へのセレブレーションになった「タービュランス(乱気流)」のパフォーマンスだ。

 きっかけは、7月27日(日本時間28日)の夜にさかのぼる。本拠フェンウェイパークでのドジャース戦を4―3で勝利し、次の遠征地ミネソタに向けて離陸したチャーター便が乱気流に巻き込まれた。デトロイトにいったん、緊急着陸した末に、計7時間もかかって目的地に到着した。

 「経験したことないくらい揺れました。僕は大丈夫だったけれど、吐いている人もいましたし。その後、いつの間にか、パフォーマンスになっていました」と吉田は振り返る。乱気流パフォーマンスを取り入れたツインズ戦を挟んで、チームは4カードで連続勝ち越し。ナインにすっかり定着し、「Turbulance」と飛行機の絵柄がデザインされたオリジナルTシャツもできた。急降下と急上昇を繰り返しながら、何とか目的地にたどりついた一夜は、アップダウンを繰り返しながらプレーオフの舞台を目指す今季のチームと重なる。

 多くのナインが激しい乗り物酔いに苦しんだ中で何と、コーラ監督は眠っていたという。

「よほど、疲れていたんでしょうね」と、吉田も驚きを込めて振り返る。直前のドジャース3連戦で、大谷には12打数4安打と打たれたものの、打点はソロ弾の1だけ。ダメージを最小限に抑え、同カードを2勝1敗と勝ち越した労力と安堵(あんど)感がうかがえる。

 いよいよ、佳境に入った25年のメジャーリーグ。ポストシーズンを勝ち抜いて復権を果たすべく、名門が乱気流を耐え抜いた力を実らせる。(一村 順子通信員)

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