大相撲秋場所千秋楽(28日・両国国技館)

 強引上手投げも 豊昇龍が横綱初Vを紙一重の差で逃した。1差で追った大の里との本割は立ち合いでもろ手で突き起こし、一方的に押し出す完勝。

過去2戦2勝の優勝決定戦に持ち込んだ。勢いに乗って臨んだ決定戦。左のまわしを取り、強引に上手投げにいったが、先に土俵を割ったのは豊昇龍だった。

 支度部屋に戻ると、自ら両腕で「×」印を作って取材を断った。その直後。もろ手突きの動きをしながら、付け人に「もう一回、こうすれば良かった。俺、(まわしを)取りにいこうと決めてたんだよな。まあ、いいや」とつぶやいた。天井からつり下げられたテレビ画面には、大の里が賜杯を受け取る様子が映し出されていた。「うーん…」。悔しそうな表情で着替えを済ませた横綱は、報道陣に「お疲れさまでした」と声をかけて国技館を後にした。

 先場所は左足親指負傷で、横綱昇進後3場所で2度目の途中休場となった。

巻き返しを期した今場所に向けても、初日の数日前にぎっくり腰を発症。加えて39度の発熱にも見舞われていた。全休して来場所に万全を期す選択も考えられる状況だったが、師匠の立浪親方(元小結・旭豊)から「もう途中では休めないぞ」と覚悟を問われ、「出ます」と即答した。

 初日から自己最長の11連勝で首位を走ったが、12日目からの2連敗で暗転した。それでも14日目は立ち合いで変化を見せる執念を見せ、昇進後初めて千秋楽まで優勝を争った。八角理事長(元横綱・北勝海)は大の里とともに「横綱の責任? 十分に果たしている。一場所一場所、成長して経験を積んでほしい」と評価した。最高位の責務を果たした経験を来場所につなげる。(林 直史)

編集部おすすめ