大相撲秋場所千秋楽(28日・両国国技館)

 横綱・大の里(25)=二所ノ関=が2場所ぶり5度目の優勝を決めた。7月の名古屋場所で横綱昇進後、2場所目で初賜杯。

結びで同・豊昇龍(26)=立浪=に敗れて13勝2敗で並ばれ、16年ぶりとなった横綱同士の優勝決定戦で寄り倒した。

 繰り返しで恐縮だが、私の“斜め45度”の視点でも本割の大の里の立ち合いは想像できなかった。当たりが弱くて豊昇龍にサンドバッグ状態で持っていかれた。14日目の不戦勝で集中力が途切れたのか。豊昇龍の立ち合いの変化を再び警戒したのか。雑念が中途半端な立ち合いを導いた。

 決定戦までの10分間の休憩で、大の里は「やるしかない」と腹をくくったのだろう。もろ手の立ち合いは封じられたが、豊昇龍に左上手を取られても右を差して左からおっつけた。この左おっつけが勝敗のターニングポイントになって体を預けることができた。

 私は師匠だった先代・佐渡ケ嶽親方(元横綱・琴桜)から「心技体で最も重要なのは心なんだ。だから技や体よりも上にあるんだ」と言われた。横綱でさえも心が乱れると中途半端な相撲を取ってしまうのだ。

 16年ぶりの横綱同士の優勝決定戦。最高の勝負を見させてもらった。緊張感で鳥肌も立った。この相撲を見る限り、2横綱と大関以下の力士とは力の差がある。若い力士も横綱の相撲に感銘を受けたと思う。“大豊時代”はこれからも続くと実感した。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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