今年の朝日杯フューチュリティステークス・G1(12月21日、阪神競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・21年勝ち馬のドウデュース(武豊騎手が騎乗)を振り返る。

 無傷の3連勝でドウデュースがG1初制覇を果たした。騎乗した武豊騎手(当時52歳)は22度目の挑戦で悲願の朝日杯FS初制覇。JRA平地G1・24競走完全制覇へ、残すはホープフルSだけとなった。

 やっと勝てた―。ファンからの大歓声を受け、ドウデュースと検量室前に引き揚げてきた武豊が力強くガッツポーズをつくった。「なかなか勝てなくて…。毎年、このレースが近づいてくると、『今年は勝ちたい』と思っていました。ようやく勝てて、すごくうれしいです」。22回目の朝日杯挑戦で“競馬界の七不思議”にピリオドを打ち、喜びを爆発させた。

 出たなりで、中団をリズムよく追走。「よしよし、という感じ。折り合いもついて、4角でも待つ余裕がありました」と相棒を信頼していた。

京都競馬場の改修の影響で連続開催11週目で、外伸びの馬場に変貌していた阪神。直線で大外に誘導し、残り200メートルで得意の右手前に替えると、1番人気のセリフォスをねじ伏せてゴールに飛び込んだ。「相手も強いので、最後まで勝つ確信はありませんでした。僕自身、G1を勝ったのも久しぶり」と19年菊花賞以来、約2年2か月ぶりの美酒に酔いしれた。2戦2勝で迎えた大一番は前走から10キロ減の馬体重というG1仕様だった。

 武豊と“二人三脚”で記憶に残る名馬だった。朝日杯FS後は報知杯弥生賞ディープインパクト記念、皐月賞をともに1番人気ながら敗れた。22年の日本ダービーをレースレコードで制覇も、その年の凱旋門賞は19着の大敗。23年のドバイ・ターフの出走取消、その後の天皇賞・秋は7着、ジャパンCは4着も、武豊が右足の負傷から復帰したばかりの有馬記念では、人馬ともに劇的な復活Vを飾った。馬主(名義はキーファーズ)の松島正昭さんは、24年の有馬記念前に行われたスポーツ報知のインタビューで「ドウデュースは勝った、負けたがあって、色んなドラマがある。マキバオーみたいやな。漫画にしてくれって、いつも思うねん。

『みどりのドウデュース』って」と表現したように、ドラマ性のある馬だった。

 史上3頭目となる秋の古馬G1・3連勝や、歴代最多獲得賞金の更新などさまざまな記録がかかっていた昨年の有馬記念・G1で圧倒的1番人気が予想されていたが、右前肢ハ行のためレースの2日前に出走を取り消した。歴代最多のファン投票を獲得したラストランは幻となり、そのまま現役を引退。現在は北海道安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬として第2の馬生を送っているドウデュースのドラマは子孫に受け継がれる。

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