歌舞伎の人間国宝で「当代一の女形」と称される坂東玉三郎がこのほど、7月と11月に全国11か所を巡る「坂東玉三郎~お話と素踊り~」の取材会を行った。

 質問コーナーもあるトークショーと素踊りで披露する地唄舞「残月」というシンプルな構成ながら、玉三郎の素顔と芸の神髄を堪能できると評判の公演。

2021年に始まり、公演回数は40回を超えた。「40回ともなってくるとリピーターの方もいらっしゃるので、どんなお話をしたらいいのか、毎回悩むんです。できるだけ重ならないように話をしたいです。会場の雰囲気を見て決めることもありますが、噺家(はなしか)ではないから大変です」と思いを巡らせている。

 トークショーの話題は食事や旅行など、多岐にわたる。「今の時代はインターネットや携帯電話でつながっているように見えますが、やっぱり人と直接会うことが一番大事なのだと思います。私自身も皆さん一人ひとりと向き合っている気持ちで話しています」。人生相談に乗ることもあり「今は人に何かものを言うのも難しい時代ですが、相談されたら真面目に答えないといけない、と思っています」と真摯(しんし)な姿勢で臨んでいる。

 衣装や化粧をしない素踊りは当初、不安もあったという。「いつもとは違う難しさがありますが、意外にもお客様が楽しんでくださったので、この形でいいんだと思えました」。歌舞伎の場合は1時間半前くらいから化粧を始め、徐々に役に入っていくが、素踊りでは「幕が上がる3分から5分前には舞台に立ち、その間に役の心になっていくかな。でもね、本当のことを言えば、若い時からずっと舞台に立っているから、いつ役に入っていくかなんて、もう分からないの」と笑った。

 素踊りは発想が自由になるという。「お客様の思考も自由なところへ飛んでいけると思います。そのためには音楽が大事です。『残月』は格調高く、清涼感のある名曲で、詩も素晴らしいですね」。舞台では「和歌を読み込むような心で表現していますが、感覚的なことなので言葉にはできないんです。ただ、夜、月を見た時の印象を大事にしています。『亡き人を思う』語り部としての客観性も大切です」と思いを明かした。

 〇…7月は7日に東京・町田市民ホール、9日に岩手・トーサイクラシックホール岩手、25日に宮城・電力ホール、28日に東京・浅草公会堂で上演。11月は1日に東京・ルネこだいら大ホール、3日に山形・やまぎん県民ホール、7日に奈良・なら100年会館大ホール、8日に大阪・南海浪切ホール、17日に東京・北とぴあ さくらホール、23日に兵庫・SHOWAグループ市民会館大ホール、24日に東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで上演される。

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