タイガー魔法瓶(大阪府)は14日、過酷な暑さとなるレーシングカーのコクピット内で、ドライバーが適切な温度で水分補給を行うことができるドリンクシステムを開発したと発表した。同社のコーヒーメーカー技術を転用し、チューブ内に飲料が滞留して温まる従来の問題を解決。

現在はプロドライバー・Juju(20)の車両に搭載され、実用化に向けた改良を進めていく。

 例年のように酷暑が続く中、屋外作業や運動をする際の熱中症対策も重要な課題となっている。関係者は、他のスポーツや業界での活用も期待する。商品化については「未定」としているが、今後もJujuと共同で、様々なマーケティングや実証実験などを積み重ねていく。

 開発の契機は2023年のF1カタールGPだった。猛暑によって多くのドライバーが体調不良に陥るとの話を知ったクルマ好きの同社担当者が、親交のあったJujuの母、野田雅恵さんに様々な提案を行い、共同開発がスタートした。

 Jujuが参戦中のスーパーフォーミュラで直面した課題は「チューブ内に吸い出された飲料が、70度にも達する車内で温められてしまう」という点だった。試行錯誤の末、担当者が開発に携わってきたコーヒーメーカーの技術に着目。注水量や速度を調整する機構を応用し、飲料の流れを制御する新システムを構築した。

 ステアリングのボタンを押すと電動ポンプが駆動して送水する。同時にエアーバルブからボトル内に空気を送り、ボトル内の負圧を防いで送水力を維持する。ボタンを離すと、逆流経路の電動バルブが開き、チューブ内の飲料がボトルへ戻る仕組みだ。

また、ボールバルブが弁として機能するため、走行中の重力加速度(G)による意図しない逆流も防ぐことができる。

 容器には同社の真空断熱ボトルを採用。氷を入れなくても冷たさを保つことができ、880mlサイズで約390gと軽量なため、車両への重量も軽減できる。レースの開催時期や気候条件に合わせ、ボトルサイズの変更も可能となっている。

 現在、このシステムはJujuの車両のみに搭載される。ボタンを押してから飲料が流れるまでのタイムラグ改善など、実戦に向けたアップデートが続けられている。一連の開発で一定の成果が得られたことから、今回のお披露目となった。

 実証実験に協力したJujuは、開発過程で様々な要望をクリアしてもらったとして「昨年はドリンクが出てきちゃうこともありましたが、今は全くなくなり、集中して走ることができています」などとコメントした。

 都内で新商品説明会に出席した元F1レーサーで父の野田英樹氏は自らの経験を踏まえ、「夏場のレースでは70度ぐらいまで上がり、耐熱のウェアを着て、ヘルメットをかぶる過酷な環境」と説明。「水分補給は非常に大事ですが、相当のGもかかる上、暑さが課題です。レースが終わると、汗とドリンクでスーツがびしょびしょになってしまうこともありました」。今回の製品は、こうした課題をクリアしていると太鼓判を押し「ほかのスポーツなどにも応用できたらいいですね」と期待を示した。

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