歌手のAdoが4月27日に放送された音楽番組『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)に出演し、“顔出し”したことが大きな話題を呼んだ。新曲『ビバリウム』を披露するなかで、Ado本人の目元部分がズームされたのだ。


“素顔隠し系歌手”の顔出しや姿公開に賛否両論

なぜAdoとtuki.の“容姿チラ見せ”は反感を買うのか? ...の画像はこちら >>
 デビューから一貫して素顔を明かさず、ライブもシルエットのみで行うなど、その“ミステリアスな世界観”と圧倒的な歌唱力で人気を集めてきたAdo。それゆえに、今回の一部顔出しに対してはネット上で賛否両論が巻き起こった。

 また、Adoと同じく素顔を隠して活動する歌手としては、TikTok発の現役女子高生シンガー・tuki.も、自身の後ろ姿をSNSにアップしたことで思わぬ批判を浴びた。

 近年活躍が目立つ“素顔隠し系歌手”たちだが、なぜ彼らの顔出しや姿公開といったプロモーションの失敗は起こるのか?

歌唱力と世界観を愛するがゆえの反発――Adoの場合

なぜAdoとtuki.の“容姿チラ見せ”は反感を買うのか?  覆面歌手が越えてはいけない「一線」とは
画像:株式会社J-WAVE プレスリリース
 Adoは2020年にリリースしたメジャーデビュー曲『うっせぇわ』がヒットして一気に世間から注目を集めたが、もともとはニコニコ動画で、ボカロ曲などをカバーした“歌ってみた”系の動画を投稿し、頭角を表していった。

 デビュー後には『ワンピース』や『SPY×FAMILY』といった人気アニメのテーマ曲を担当していることから、Adoのファンにはアニメオタクの割合が一定数いる。またニコニコ動画出身ということもあり、ボカロファンやネットカルチャーに精通するいわゆる“オタク層”からの支持が厚いといった印象もあるだろう。

 こうしたファン層は、歌い手の容姿やビジュアルよりも、純粋な歌唱力の高さや楽曲の世界観を高く評価する傾向にある。

 今年2月にリリースした新曲『ビバリウム』のMVで初の顔出しとなる“横顔ショット”が公開されたが、《実写MV…本人だったら歌声+美人で更に推せる..てか僕初めて顔公開でファン辞めないでいられるの…》といったコメントがあり、圧倒的な歌唱力に加え、見た目まで美しいということでポジティブに捉える反応があった。

 しかし見た目の良さが判明したことによって逆に以下のようなコメントも。

《こんな美人が“自分ブスで可哀想”みたいな曲出してたの、本当に気持ち悪いな。ブスのふりすんなよ嘘つき》
《個人的には結構ショックですわ。Adoさんには意地でも顔出しNGを貫いて「声」だけで勝負し続けて欲しかったな……》

 純粋に声や歌唱力、あるいは彼女のミステリアスな世界観の虜となっていたファンにとって、美しい容姿を公開することはただの“話題作り”にすぎず、むしろ不要だと思える要素なのだろう。

「承認欲求」への厳しい視線――tuki.の場合

 Ado以上にネット上で賛否が分かれているのが、新世代アーティストとして注目を集めるtuki.だ。

 tuki.はもともとTikTokでさまざまな楽曲のカバー動画を投稿していたが、2023年7月には自身初となるオリジナル楽曲『晩餐歌』のサビ部分を披露し、大きな話題となった。

 公開当初は《才能を感じる。
何年か経ったらすごい歌手になってそう》、《素敵な歌声だなあ》など、歌詞の世界観や唯一無二の歌声に多くの人から称賛の声があがっていた。

 当初は首から下のみを映した弾き語りの姿をメインに投稿していたが、2024年の冬頃から、自身のプロポーションがわかる後ろ姿の写真を公式SNSにアップする機会が増加した。

 2024年11月に公式Xに投稿された写真では、ハーフツインの黒髪ロングヘアに大きなリボン、黒いミニスカートから覗くスタイルの良い脚が映し出されていた。また、2025年1月の投稿でも、自身のPRポスターを背景にハートポーズをとる姿と、デニムのミニスカートから伸びる美脚が公開されている。

 こうした投稿に対し、一部のファンからは《スタイル良すぎ》《これは絶対美人》と歓喜の声があがった。しかし、女性層を中心に以下のような辛辣なコメントも相次いだ。

《いかにも“女”って感じ》
《承認欲求に満ち溢れているね》
《この子出たくて出たくて出たくて出たくてしょうがないって感じだよね。そんなに表に出たいなら出りゃいいのに》

 そんなネットでのネガティブな声を知ってか、今年2月に開催した初のワンマンライブのタイトルは『NIPPON BUDOKAN ~承認欲求爆発~』となっており、本人も自身の承認欲求を包み隠さず、むしろ潔く認めているようにも思える。

 tuki.はプロモーションの一環として自身の姿を公開しているというよりも、“とにかく注目されたい”という気持ちのほうが大きくなっているように見え、これが一部の容姿に厳しいネット民たちから批判される原因になっていそうだ。

求められるのは「スタンスの明確化」

なぜAdoとtuki.の“容姿チラ見せ”は反感を買うのか?  覆面歌手が越えてはいけない「一線」とは
画像:株式会社massenext プレスリリース
「歌声だけで勝負する」というミステリアスな魅力でファンを獲得したアーティストにとって、ビジュアルの公開は劇薬になり得る。

 Adoやtuki.のように素顔を隠して活動する歌手たちは、“出すなら出す、出さないなら出さない”という明確な線引きと一貫した態度を示すことが、ファンを幻滅させず、無用な反感を買わないための鍵となるのかもしれない。

<文/瑠璃光丸凪>

【瑠璃光丸凪】
編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。
興味のあるジャンルは、アングラ・音楽・ファッションなどサブカルチャー全般と、ジェンダー問題、政治経済問題について。趣味はレコード集め。
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