大相撲 ▽夏場所12日目(21日、両国国技館)

 東前頭2枚目・義ノ富士が東同15枚目・翔猿を押し出し、8連勝で首位と1差の3敗を守った。7日目時点でトップと3差から優勝を果たせば、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降で史上2人目の大逆転劇となる。

大関復帰の霧島は関脇・琴勝峰をはたき込み、不戦勝の平幕・琴栄峰とともに2敗をキープ。首位の2人を1差で小結・若隆景、平幕・義ノ富士、宇良、翔猿が追う。

 義ノ富士の度胸と勝負勘がさえ渡った。立ち合いで左から張って突き起こし、相手の引きに乗じて一気の押し出し。日大の9学年先輩・翔猿との初顔合わせで「大先輩を張っちゃいました」と申し訳なさそうに話したが、取組前に考えていた戦略は胸から当たって左前まわしを取る形。だが、仕切りで相手の立ち位置が少しずれていたと感じた。両手を突いた瞬間に「張り差しで動きを止めたい」と切り替え、3敗を死守した。

 今場所は2日目から3連敗を喫し、1勝3敗と序盤戦で苦しんだ。4日目で3差がついたが、そこから幕内で自己最長の8連勝。快進撃の原動力を「連敗して『くそっ』という気持ちですかね」と語ったが、2敗で首位の霧島、琴栄峰との1差をキープ。7日目時点でトップと3差をひっくり返せば、23年春場所の霧馬山(現霧島)以来、史上2人目の大逆転優勝となる。

 終盤戦まで賜杯争いに加わるのは新入幕の昨年名古屋場所以来だ。

当時は千秋楽まで可能性を残し「ガンガン前に出てがむしゃらに取っていた。毎回懸賞をもらったり、楽しかった」と懐かしんだ。そこから大きく番付を上げて1年近くを過ごし、幕内上位での戦いの厳しさを肌で感じた。「今は楽しいというより、一生懸命」。緊張感を漂わせ始めた新鋭に、八角理事長(元横綱・北勝海)も「やっと上位に慣れてきた感じだね」と期待を寄せた。

 東前頭2枚目で9勝を挙げ、来場所の新三役にも大きく前進した。だが、三役以上に望むのは「それは優勝ですよ」ときっぱり。幕内所要6場所での優勝なら、年6場所制となった58年以降で大鵬に並ぶ歴代5位のスピード記録。「1差なので、一生懸命ついていくしかない。全部勝っていくしかないので、一番一番、明日のことしか考えてない」。24歳のホープが勢いを増してきた。(林 直史)

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