◆サッカー北中米W杯▽1次リーグF組 日本2―2オランダ(14日・ダラス競技場)

サッカーW杯3大会に出場した元日本代表FWの岡崎慎司氏(現ドイツ6部バサラマインツ監督)が、スポーツ報知の特別評論「慎髄(しんずい)」を寄稿した。1次リーグ初戦で日本(FIFAランク18位)がオランダ(同8位)に2度追いつき、2―2のドローに持ち込んだ一戦を「いい引き分けだった」と総括。

後半44分に右CKからMF鎌田大地(クリスタルパレス)の同点ゴールを呼び込む豪快なヘディングシュートを放った途中出場のFW小川航基(NEC)をMVPに選び、「ジョーカー的な選手の活躍は大きい」と絶賛した。

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 W杯の舞台で強豪・オランダに2回追いついたのは、いい引き分けだった。前半の最初は相手にチャンスを作られて、途中は日本の時間帯もあり、後半はまた攻められながら、再び日本がボールを握った。互いにやろうとしていることは同じだった。相手のパスをカットして、いかに速く攻めるかでチャンスになっていたと思う。

 後半44分に右CKから小川のヘディングシュートが鎌田の頭に当たってネットを揺らしたのは、めちゃくちゃいいゴールだった。前半にクロスが何回かニア(サイド)でクリアされていた中、伊東からニアを越えるいいボールが入った。オランダは身長が高い選手が多く、セットプレーの守備が強い中で、小川の良さが出た。日本の大きな武器になる。

 小川のヘディングは難しいシュートだった。ジャンプヘッドでタイミング良く首を振り、あの威力を出せた。ジャンプしながらしっかり当てていて、彼が持っている空中戦の強さ、技術の高さが見られた。

あのスピードじゃなきゃ鎌田に当たらず、得点につながらなかったのではないかと思う。単純に『うまいな』と思った。(壮行試合の)アイスランド戦もヘディングで決勝点を決めていたし、得意なんでしょうね。

 クロスへの入り方もうまい。あれだけ多くの敵がいる中で駆け引きというか、後ろに1回引いて前に出る動きをしないとマークは外れない。蹴る前からめちゃくちゃ動くのではなく、蹴る時にフッと動き出して、狭いスペースでも自分がヘディングできる場所にポジションを取るのがうまい。僕でもそこに動くなというところに動いている。そういう感覚的なものはある。

 ジョーカー的な役割の選手が結果を出したのは、めちゃくちゃ大きい。そういう選手が出ないとW杯で上にいけない。中村敬斗もそうだけど、小川も結果を残し続けて、はい上がってきた。彼らが主力になるのは大事。

小川にとって、W杯でオランダ相手に通用したのは自信になる。上田綺世という絶対的と見られた選手に代わる選手が出てきて、競争というか、W杯はそういう選手の量が(増えることが)必要になるので良かった。

 今日のMVPは、GK鈴木彩艶も2失点はしながらも良かったけど、やっぱり小川だと思う。大きなチャンスが少ない中、あの一発でゴールを呼び込んだ。あれが入るかでFWの価値が変わる。鎌田のゴールにはなったけど、めちゃくちゃ大きかった。

 他の攻撃陣もいいプレーが多かった。中村の1点目は、彼の得意な形だったと思う。左サイドはイニシアチブ(主導権)を取れていた印象がある。中村がボールを持つと、相手がある程度、距離を離して守備をしていたので、そこを中村が見ていた。敵の足に当たったけど、いい振りのシュートだった。あの威力あるから敵が(阻止しようと)反応して足に当たり、コースが変わった。

自信を持ってプレーしている証拠だと思う。

 先発した上田の決定機は、前半45分にいい形でボールを受けて放ったシュートが外のネットに外れた1回くらい。それでも、チームとして戦う上で、前田大然らとともに前戦でプレスをかけ続けた。相手の中盤から怖いパスは出てこなかった。(パスコースを)外に追い込む意味では、うまく彼らが守備をしていた。チームの1選手として体を張って戦い、頑張ってプレーしていた。上田がその役割をして、後半に小川や塩貝健人が出てくるのが作戦だったと思うし、上田が後から出てくる逆パターンも今後はある。次の試合で少ないチャンスをゴールにつなげてほしい。

 森保一監督の采配は明確だったと思う。こうなったらこうすると、過去に経験をしているから焦りがない。プランは一貫していた。前半は0―0で終えて、後半30分から2トップで攻撃に厚みを持たせた。

2シャドーから2トップにしたり、それに近いプレーをできる選手を置いている。攻撃の時に2トップがゴール前、中盤の選手がその脇を取っているように見えた。ゴール脇のスペースである『ポケット』にボールが入った時にチャンスになっていた。このW杯はそこを取れているチームが得点につながっている。久保建英堂安律、伊東純也らが起点を作り、その時にゴール前に多くの選手がいた方がいい。そこを考えての交代だった。点を取りに行くという明確な意図があるので、選手もやりやすいと思う。

 守備陣は2失点したけど、大きなミスはなかった。頑張っていたと思うし、起点にもなってた。両サイドの堂安、中村が守備をしっかり頑張れたのは大事なところ。中盤で佐野海舟や鎌田大地がうまく奪えるように周りが働いたように見えた。シャドーもFWも、みんなが守備してパスコースを誘い込んだ。

穴はあまりなかった。

 主将の遠藤航が負傷の影響で初戦の3日前に離脱したけど、周りが思っているほどではない。彼らはプロなので。航の気持ちは本人にしか分からないけど、チームは『やるしかない』とピリっとする。ある意味で、仲良しこよしではない、W杯はそういう場所。それでバタバタする選手たちではない。長友佑都吉田麻也もいるので、そこは心配してないなかった。

 オランダ戦は戦い方のプランを考えて前田が先発出場したように、次のチュニジア戦もある程度、選手を代えるつもりではないかと思う。このチームの良さは、どのポジションでも2人くらい同じレベルの力を持った選手がいること。次は伊東をシャドーに置いたり、ボランチに田中碧もいる。フレッシュな選手が出たり、小川をジョーカーで使うか、上田と代えるか。メンバーを固定しつつも、2~3人は代わってくると思うので期待したい。

 サッカー自体は、やることは明確。2シャドーを2トップにするとか、多少の変更は選手は問題ないと思う。あとはそこの精度を上げていくこと。次戦も逆にどういう選手でいくのか楽しみにしたい。次はしっかり勝って突破に近づいてほしい。

 ◆岡崎慎司(おかざき・しんじ) 1986年4月16日、兵庫県生まれ。40歳。滝川二高から2005年にJ1清水入り。11年にドイツ1部シュツットガルトに移籍。同マインツを経て15年夏に英プレミアリーグのレスターに移籍し、15―16年シーズンにクラブ初のリーグ優勝に貢献した。欧州4か国でプレーし、24年シントトロイデン(ベルギー)で現役引退。日本代表通算119試合出場、歴代3位の50得点。W杯は10年南アフリカ、14年ブラジル、18年ロシア大会に出場。南ア大会のデンマーク戦、ブラジル大会のコロンビア戦で得点を挙げた。

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