馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はスーパーホーネットが勝った2007年のスワンSを取り上げる。

今や競馬界の第一人者となった“世界のYAHAGI”の重賞初制覇は、厩舎にとっても原点と言える名馬が運んできた。

 思いは届いた。「届いてくれ!」最後の直線。藤岡佑が強い思いを乗せて、右ステッキをスーパーホーネットへ飛ばす。大外から一頭だけ、違う脚いろで飛んできた鹿毛の馬体。前を行く先行馬群をとらえ、そして復活勝利が目前だったフサイチリシャールを競り落としたところがゴール板だった。「馬に助けてもらいました。どんどん力をつけています」。藤岡佑がホッとした表情で振り返った。

 厳しい戦いだった。道中は位置取りがズルズルと下がり、直線入り口ではまだ後方4、5番手。絶望的とさえ思えたポジションだったが、結果的に稍重の馬場で、上がり3ハロン33秒9をマークする極限の瞬発力を引き出す形になった。

 「本当に馬が成長しているね。よかったよ」と笑みを浮かべたのは矢作調教師。開業3年目、18度目の挑戦で重賞初タイトルを運んできたのは、やはりこの馬だった。父ロドリゴテトリアーノと地味な血統だったが、開業初年度の05年にデイリー杯2歳Sで厩舎初の重賞の舞台へ立ち、同年の朝日杯FSでは再び厩舎初となるG1の大舞台で2着。矢作厩舎の歴史を常に動かしてきた「特別」な馬だった。その朝日杯FSで首差2着に敗れていたのが、この日鼻差だけ前に出た2着のフサイチリシャール。2年の時を経て、借りをようやく返した。

 安心してばかりもいられない。大目標はあくまでマイルCS。トレーナーも笑顔は一瞬、あとはグッと表情を引き締めた。「今日のような競馬ならマイルでも大丈夫。胸を張って、本番へ向かいます」。

ようやく充実期を迎えた4歳秋。このままの勢いで頂点へと駆け上がる。

 続くマイルCSはダイワメジャーに首差の2着と惜敗。しかし、ウオッカをねじ伏せた翌年の毎日王冠など長く一線級で走り続け、同年暮れには香港マイルで、今度は厩舎初の海外遠征を経験した。今でこそ“世界のYAHAGI”と呼ばれるが、調教師試験に14回目で合格したように、はい上がってきたトレーナー生活。スーパーホーネットはその草創期を支えた原点の馬であることは間違いない。

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