◆第87回菊花賞・G1(10月25日、京都競馬場・芝3000メートル) 

 今年の皐月賞、日本ダービーを制したロブチェン(牡3歳、栗東・杉山晴紀厩舎、父ワールドプレミア)が20年のコントレイル以来、史上9頭目の3冠制覇に挑む。同馬を管理する杉山晴紀調教師が、インタビューに応じ大一番へ挑む心境などを明かした。

(取材・山本武志)

 ―史上9頭目の牡馬3冠を狙う瞬間が近づいている。

 「あまり意識しないようにはしているんです。ロブチェンだからとか、3冠かかっているからこうしようという持っていき方にならないように。あくまで他の馬と同様に、今の馬の状態や前走内容を踏まえ、次のレースへこういう調教をしていこうという。ただ、それだけですね」

 ―20年にデアリングタクトで牝馬3冠を達成した時の気持ちと同じ?

 「そう心がけていましたけど、デアリングタクトの時は調教師としてもまだ4年目で、キャリアも浅かった。若さというか、どうしてもちょっと人間がイレ込んでしまう。デアリングタクトばかり目で追っているところはあったかなと思います。実際に秋華賞のパドックであれだけ消耗するようなイレ込み方をさせてしまったのは厩舎力、そして僕の考え方がまだ甘かった、浅かったというところもある。本当にあのレースを勝ったのは、ジョッキーの好騎乗とシンプルにデアリングタクトが素晴らしく強かった。厩舎として、それを手助けることができなかった思いはあります」

 ―史上初の無敗牝馬3冠も、達成感よりも苦い記憶のように感じる。

 「もちろん、そうですね。悔いがあります。

勝ったら何でもいいというわけでは決してない。競馬に向かうまでの雰囲気やレース内容など、総合的に厩舎としていい仕事ができたなと思える時は勝った時だけじゃない。勝ったけれども…、みたいなレースもいっぱいあります。そのうちの一つが秋華賞だったかなと思います」

 ―3冠馬といえば、どういう存在ですか。

 「初めて競馬にすごく興味を持って見始めたのが1996年。その頃は(3冠馬が)いなかったんですよ。シンボリルドルフからナリタブライアンまで10年ですよね。今は歳をとったから10年が結構短く感じるんですけど、学生時代は10年ぶりってそんなに出ないもんなんだ、という感覚でした。シンザンから(ミスター)シービーも間隔が空いていた。それを考えると、やっぱり10年に1回出るかどうか。本当にすごいと思います」

 ―菊花賞は「人生の中でちょこちょこ出てくる」特別なレースと話してきた。

 「あえてターニングポイントというふうに設定するのであれば、あまりカッコつけるのもあれなんですけどね。

ただ、最初はジョッキーになりたいというのが競馬の世界へのスタートラインですけど、そう思わせたのはダンスインザダークの武豊ジョッキーでした。調教師を目指すという動機の一つに、(助手時代に携わった)スリーロールスで菊花賞を勝ったという経験もあるのは間違いないです」

 ―調教師となってから、印象的な菊花賞は?

 「やっぱり、コントレイルでしょうね。デアリングタクトとね、2頭で無敗でっていう背景も、もちろんあるんですけどね。接戦でしたから」

 ―ロブチェンは接戦での勝利が多い。

 「要因は分からないです。強い馬は結構離して勝つイメージありますからね。ディープ(インパクト)もそうだし、オルフェーヴルもそうだし。毎回一生懸命走って、ギリギリ勝ってくれるので、それはそれですごい馬だなと思うんですけど、能力差で言ったらそんなに差はないのかなとも取れるわけじゃないですか。ジョッキーがうまく乗って、しっかり勝ってくれてるというところも、もちろんあるんですけど」

 ―では、最後に意気込みを。

 「厩舎としては先ほども言ったように、ロブチェンだから特別に何かをすることはせず、今まで通りの杉山厩舎のやり方で、次もしっかり力出せるようにやっています。何とかロブチェンを3冠馬にさせてあげることができるように、一日一日大事に過ごしていきたいと思いますので、当日は皆さん熱い声援をよろしくお願いします」(終わり)

【20年デアリングタクトの無敗牝馬3冠VTR】

 新馬、エルフィンSの2戦2勝で1冠目の桜花賞へ。重馬場を苦にせず、上がり最速の末脚で大外から強襲した。

続くオークスでは単勝1・6倍の圧倒的人気を集めた。直線は進路を探しながらだったが、ひとたび前が開くと武器である瞬発力を発揮。ゴール前できっちりと差し切った。前哨戦を挟まず、最終戦の秋華賞に直行。向こう正面から仕掛けて直線は早め先頭から押し切り、史上初の無敗での牝馬3冠を成し遂げた。「すごくプレッシャーもありましたが、本当に強い競馬をしてくれた。馬にありがとうと言いたい」と松山。当時開業4年目の杉山晴調教師は「このタイミングで出合えたことに本当に感謝しています。厩舎の宝です」と喜びをかみ締めた。

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