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日本最大級のハンドメイドマーケットプレイス「Creema(クリーマ)」を運営する株式会社クリーマ(以下、クリーマ)が東京証券取引所マザーズに上場承認を受けた。承認日は2020年10月23日で、同年11月27日に上場を果たす。


クリーマは、「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する」をコンセプトに事業展開を行っている。2009年3月に赤丸ホールディングス株式会社として、丸林耕太郎氏(以下、丸林氏)によって創業された。2014年6月に株式会社クリーマに社名を変更、設立からおよそ11年での上場となる。

本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部の情報をもとに、同社のこれまでの成長と今後の展望を紐解いていく。

売上高の着実な成長に伴い、営業利益も黒字化

CtoCマーケットプレイスを展開する、クリーマのIPOサマリー
上図は、過去5年間の売上高と営業利益の推移である。売上高は、2016年2月期に比べて2020年2月期では約3倍になっており、継続的に売上高を伸ばしていることがわかる。

営業利益に関しては、2020年2月期に黒字化を達成している。2020年8月期の時点で、同年2月期の営業利益の5倍となる2億4,859万円となっている。

「Creema」事業を支える4つの収益源

クリーマグループは、同社及び海外子会社1社で構成されており、クリエイターエンパワーメント事業の単一セグメントでの事業運営を行っている。創作活動に取り組む全国のクリエイターと生活者(ユーザー)が、オンライン上で直接オリジナル作品を売買できるCtoCのハンドメイドマーケットプレイス「Creema」の運営を2010年より開始している。2016年7月には、海外展開の第一歩として、中国語版「Creema」をリリースするとともに、海外子会社「可利瑪股份有限公司」を台湾に設立し、台湾・香港のユーザーに向けて自身の作品を簡単に出品することが可能となっている。

サービスの種類と特徴は以下の通りである。

(1)マーケットプレイスサービス
「Creema」はオンライン上で個人が直接、オリジナルのハンドメイド作品を売買できるCtoCマーケットプレイスで同社の中心的なサービスだ。「Creema」は、クリエイターが自身の作品を同社が運営するマーケットプレイスに出品し、ユーザーがその作品を購入する際、同社が決済の仲介を行い、購入代金から一定の販売手数料を差し引き、その残金を売上金としてクリエイターに入金するというビジネスモデルとなっている。
(2)プラットフォームサービス
「Creema」のプラットフォームを活用し、出店クリエイター・企業・地方公共団体のマーケティング支援などを行うプラットフォームサービスを提供している。
(3)イベント・ストアサービス
クリエイター作品の販路として、ハンドメイドマーケットプレイス(オンライン)の提供だけでなく、 直接クリエイターとユーザーをリアルの世界で結びつけるクラフトイベントやエディトリアルショップ(常設店舗)の積極展開を行っている。

 (a) 「HandMade In Japan Fes’」
 2013年から「クラフトの市場/カルチャーを日本に確立するために、ミュージシャンにとっての音楽フェスと同様に、クリエイターにも祭典とよべるステージをつくりたい」という想いから、東京ビッグサイトにて 「HandMade In Japan Fes’」を開催している。
 (b) 「Creema Craft Party」
 丁寧であたたかなクラフトの世界が感じられる空間で、ものづくりの魅力を体感できる大規模クラフトイベントであり、大阪・台北(台湾)の2箇所で継続的に開催している。
(4)クラウドファンディングサービス
 2020年6月に、ハンドメイドに限定することなく、あらゆるジャンルのクリエイターの創造的な活動を応援することに特化した、購入型クラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」を開始した。

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EC市場拡大の恩恵を受ける、新興ハンドメイドマーケット

日本のハンドメイドマーケット市場は、2010年、日本初のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を同社がリリースしたことに端を発する比較的新しい市場である。

現在の国内市場では、同社グループが運営する「Creema」 と、GMOペパボ株式会社が運営する「minne」の二大サービスが市場を牽引している。 一般社団法人日本ホビー協会が発行している「ホビー白書2018年版」によれば、日本のハンドメイドマーケット市場の直近4ヵ年の年平均成長率(CAGR)は168%と非常に高い水準で推移している。

また、近年ではスマートフォンの普及などを背景に個人間の電子商取引(CtoC)の市場が年々拡大を続けている。個人によるECサイトの開設や、これまで実店舗でハンドメイド製品を提供していた企業がハンドメイド専門のECサイトを作成するなど、オンライン上でのハンドメイド製品の流通が一般化している。今後も市場規模は引き続き一定水準以上の高成長率で拡大することが見込まれている。

クリーマが掲げる経営戦略と重要指標

同社グループでは、マーケットプレイスサービスにおいてユーザー数(アプリDL数や訪問数など)を安定的に積み上げ、豊富なユーザー基盤やプラットフォーム基盤の活用を行っている。また、広告サービスやイベント・ストアサービスなど、周辺領域でのサービス収益もスケールしていくモデルとなっている。

そのため、事業収益の基盤であり起点となるマーケットプレイスサービスの品質向上を通じたストック収益と戦略資産の積み上げに対し優先的にリソースを投下している。

そこで得た資産を活用する事業にもリソースを投下することで、シナジーの効く事業領域での収益源の多角化を図る方針だ。

また、同社グループの事業は、中心的なサービスである「Creema」の、プラットフォームとしての価値を高めることが重要であるため、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、登録作品数・アプリダウンロード数・流通総額の3つとしている。


CtoCマーケットプレイスを展開する、クリーマのIPOサマリー
CtoCマーケットプレイスを展開する、クリーマのIPOサマリー
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企業姿勢・各種取り組みの結果、業界内でもプロ及びプロを目指すクリエイターの出品が出品作品の中心となっており、品質の高い作品が集まりハンドメイドマーケットプレイスとしての地位を確立、現在まで上記のような急成長を遂げている。

潜在層への働きかけと収益の強化・複層化が、今後の成長の鍵

同社は事業上の対処するべき課題として、以下の5つを挙げている。

①プロダクトの強化と新技術への対応
②マーケットの拡張
③収益モデルの複層化
④優秀な人材採用と企業文化の醸成
⑤経営管理と内部管理体制の強化

ハンドメイドマーケット市場は年々大幅に成長しているが、更なる市場拡大に向けては、今までハンドメイド製品に関心を持っていなかった非ハンドメイドユーザー層にもアプローチを行い、新しい顧客層を獲得していくことが重要である。

そのため、ファッションやアクセサリー、インテリアなど、「Creema」が展開するカテゴリーの内、競争優位性があり、かつ世間全体のニーズも強い戦略カテゴリーの拡張を行う。当該カテゴリーのクリエイター数、登録作品数を増加させ、ハンドメイドユーザー層に限らず、非ハンドメイドユーザー層も含めたより多くの方々にも商品起点でサービスの魅力を訴求する方針だ。

また、「Creema」を始めとする各種サービスの運営を通じて、豊富なユーザー基盤、プラットフォーム基盤を保持している。その資産を活かしながら、クリエイター支援を目的とする新サービスを提供し、収益の強化・複層化を図る。

VCを中心に累計で24億円の資金調達を実施

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これまで7回の資金調達によって累計24億円の資金調達を実施したことがわかる。出資元は、グローバル・ブレインやグロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、日本郵政キャピタル、アイ・マーキュリーキャピタル、SBIインベストメントが参画している。

想定時価総額と上場時主要株主

上場日は2020年11月27日を予定しており、上場する市場はマザーズとしている。

今回の想定価格は、3,250円である。調達金額(吸収金額)は59.8億円(想定発行価格:3,250円×OA含む公募・売出し株式数:1,839,900株)、想定時価総額は197.9億円(想定発行価格:3,250円×上場時発行済株式総数:6,089,000株)となっている。

公開価格:3,570円
初値:4,850円(公募価格比+1.280円 35.9%)
時価総額初値:295.31億円

※追記:2020年11月27日(上場日)

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筆頭株主は、同社代表取締役の丸林氏であり、31.89%を保有する。次いで、丸林氏の資産管理会社であるアニマリズムグループが9.10%、グロービス・キャピタル・パートナーズが運営するグロービス4号ファンド投資事業有限責任組合が8.57%を保有する。

大株主には、グロービス・キャピタル・パートナーズを始めとするベンチャーキャピタルが多く名前を並べている。グローバル・ブレイン6号投資事業有限責任組合を運営するグローバル・ブレイン、KDDI新規事業育成投資事業有限責任組合を運営するKDDI、SMBCベンチャーキャピタル、SBI AI& Blockchain投資事業有限責任組合を運営するSBIインベストメントなどである。

またそのほかにも、グローバル・ブレインが運営するMF-GB投資事業有限責任組合、W ventures、日本政策金融公庫など多くのファンドが参画している。

※本記事のグラフ、表は新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部を参考



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