TBSラジオで放送中の「ACTION」。木曜パーソナリティは、羽田圭介さん。

9月24日(木)のゲストは、小説家の長嶋有さん。TBSラジオ『たまむすび』ではブルボン小林さんとしてお馴染みです。羽田圭介さんは「最終回のゲストは、長嶋さんしかいらっしゃらないだろう」とおっしゃっていました。今日は長嶋さんの新刊『今も未来も変わらない』についてたっぷりお伺いしました。

『今も未来も変わらない』あらすじ…
主人公の星子は40代のシングルマザー。職業はあまり売れていない小説家。大学受験を控えた娘を見守りながら、娯楽好きの親友とカラオケやスーパー銭湯などのレジャーを楽しむ日々を送っている。そんなある日、ひょんなことから20代の男性との間に恋が芽生える。年齢差に戸惑いつつも、久しぶりの感情に喜ぶ星子。果たして恋の行方は…?

羽田:これは婦人公論で連載された小説ですが、本の装丁がユニークです。婦人公論の装丁そのまんまです(笑)

長嶋:画像検索すると、皆さん勘違いされます(笑)

羽田:「婦人公論」という文字が一番目立ってますからね。その中の大きい特集が、長嶋有さんが書かれた「今も未来も変わらない」のように見えます(笑)

長嶋:白バックでモデル立ちしているというのも、篠山紀信さんがそういった写真を撮って表紙にしているのを完全に模倣しています。

婦人公論という場所で男性が連載を持つというのは非常に珍しかったみたいです。僕聞き間違えたみたいで、「長嶋さんが初めてです」と言われていた気がしたの(笑)でもそれがきっかけで、「婦人公論で男性が書く意味のあるものを書こう」と思いましたね。あと単行本になると、婦人公論でやったことがあんまり関係なくなるんだよね。だから随所に婦人公論ネタを入れ込みました。作中の人が婦人公論を買って読んでいるんですね。「こないだの占いなんだけど…」というシーンでは、本当の婦人公論をめくったらその占いが書いてあるようにしました。雑誌を読んでいる人に向けてのサービスがすごかったから、「単行本の帯に”婦人公論”のロゴを入れてくれ」って言ったの。そうしたら帯じゃなくて、表紙全体が婦人公論になりました(笑)
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羽田:この小説の感想は、カラオケや映画館や飲み屋などの「ここにいる感」がすごい強かったです。

長嶋:この小説は文芸誌ではなくエンタメ雑誌での連載だから、「カラオケとレジャーだけの小説にしよう」と思ったの。たまに文学になり得ないことを書こうと思うのね。このちょっと前に書いた長編は、ただただゴシップのことを書いたの。ゴシップやワイドショーって文学的じゃないですよね。

でも皆好きじゃないですか。だからほかの作家が「ゴシップ的なものじゃない世界を書くことが文学だ」としているから、余ったゴシップやワイドショーだけで小説を書こうと思ったんですね。
木曜ACTION最終回のゲストは羽田圭介の憧れの小説家、長嶋有さん!

長嶋:こういった「食べられないと思っていたら実は食材として使えるはずだ」という考え方で、人生のなかで深淵な悩みがない瞬間というのはカラオケとレジャーだと思ったんです。深淵な悩みのときって文学が書けそうですよね。それに対して悩まずにカラオケをしたりレジャーを楽しんだりすることって文学の俎上に載らないと思うんだけど、それをやろうと。だからかなり書くことは限定しましたよ。

羽田:僕はそれが結果的にめちゃくちゃ文学になっていると思います。中途半端な読書好きって、役割を含んだ文書の連続というか、ありがたい教えのような重厚な文章の連続を小説らしさだと思うんですが、これは役割を含んだ文章が一文もないまま終わっていきますよね。でもその観察の仕方って自分の人生においてなにかを認識するプロセスと違いがないですよね。「ちゃんと観察し続けなきゃダメだよ」とこの小説から言われている気がします。この小説を書くのってとても集中力がいるし、体験の類型化の出来なさを突きつけられる感じがして、ここまで文学的なものはない気がします。曖昧な既存の深い意味に接続しないという、すごくコストのかかった文章だと思いました。


木曜ACTION最終回のゲストは羽田圭介の憧れの小説家、長嶋有さん!

長嶋:文学だったんだ!やった!僕は「くだらないことが書いてあるな~」と思ってペラペラめくってました。

羽田:主人公たちのやっていることはくだらなくても、それをそのまま書くというのは技術がいることですよね。

長嶋:文芸評論家に言ってほしいな(笑)

引き続き、『今も未来も変わらない』についてお話を伺いました。

◆9月24日放送分より 番組名:「ACTION」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200924153000

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