今日は日本酒を作るときにできる「酒かす」の話題です。

今年は3トン増えた酒かす 無料配布で対応

新潟県の酒蔵が「今年はレベルが違う」くらい酒かすが余っていると、SNSで投稿して、1万件以上リポスト(拡散)されて話題になっていました。何が起きていたのか、新潟県上越市にある竹田酒造店の10代目蔵元・竹田春毅さんのお話です。

竹田酒造店 10代目蔵元・竹田春毅さん
去年よりも、うちで言ったら生産量が増えた、それに加えて、夏が暑すぎてお酒を作る段階でお米が溶けなくて、お酒になる量が少なくて「酒かす」になる量がその分増えた、割合が増えてしまったという原因があります。去年だったら酒かすの量、トータルで7トンくらいでしたが、今年10トン近くになった。このままいくと廃棄しないといけない状況だったので、近隣の方々に差し上げようかなと「今年の酒かすはちょっとレベチだよ、レベルが違うよ。これからもどんどん出てくるので、差し上げます」という投稿をしたんですよね。電話も鳴りっぱなしでしたし、土曜日も交通整理いないとダメなくらい来てもらって、まさか1週間で全部無くなると思っていなかったので、大きすぎる反響にびっくりしました。

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竹田酒造店では酒かすは例年7トンほどですが、今年は3トンほど多かったそうです。


例年は販売するなどしていたんですが、それだけでは無くならない!ということで、2月末にSNSで告知をして、無料配布することにしました。今年増えたおよそ3トンを無料配布すると、大好評で1週間で全て無くなったということです。

今年は酒かすが多い!?無料配布は大盛況

お店に来た方で多かったのは60代~70代でしたが、中には「酒かすを食べたことがない」という20代など若い方の姿も。「酒かす」は食物繊維も豊富、タンパク質もあって栄養価が高いそうで、水と一緒にレンジで温めて柔らかくしてから、味噌汁や、炒め物、ラーメンなどに入れても楽しめるということでした。

酒造りで必ず出る「酒かす」とは

今年はとりわけ酒かすの量が多かったということですが、例年、かなりの量の酒かすが出ているという中で、捨てられる酒かすを活用、リユースして、新たなお酒を作っている企業がありました。
まずは、酒かすができる流れや現状、課題について、エシカル・スピリッツ株式会社 代表取締役 小野力さんに伺いました。

エシカル・スピリッツ株式会社 代表取締役 小野力さん
日本酒造りの中で、最後の工程ですよね。

いわゆる米と水で発酵プロセスを経て、アルコールができるんですが、最後の最後でしぼったときに液体として出荷できるものが「清酒」となって、できないものが「酒かす」になる。一番最後のフェーズで必ず発生する副産物が「酒かす」になります。3分の1くらいと言われますが、例えば大吟醸など贅沢なお酒になると、5、6割、酒かすになってしまうこともありますね。酒かす自体を粕問屋さんに卸すことができたり、飼料や肥料という使われ方もしますが、問題としては廃棄をされてしまうところだと思っているので結局それが酒蔵さんにとってはコストになるので、経済的にも環境的にも負荷のある状況は、現状ありますね。

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全国に酒蔵は1,400ほどあって、一年間で全国で出る酒かすの量は、3万トンほどになるとも言われています。酒蔵がお金を払って産業廃棄物として捨てている量も少なくないそうなんです。

廃棄される「酒かす」を使って新たなお酒を

こういった現状に立ち上がったのがエシカル・スピリッツです。
再び、エシカル・スピリッツ株式会社 小野力さんのお話です。

エシカル・スピリッツ株式会社 代表取締役 小野力さん
もともと廃棄される予定だった「酒かす」から再度お酒を作って、それを原料に、我々の方で「クラフトジン」を作っているのが「エシカル・スピリッツ」の取り組みです。酒かすを、清酒と同じプロセスを通っているにもかかわらず、最後のフィルターを通らなかったというだけで、無価値になってしまうのはもったいないよね、何とか活用できないかというところから、スタートしました。鳥取県の千代むすび(酒造)さんや、佐賀県の天吹酒造さんは、彼らが年間で出している酒かすの2割ほどは、我々で活用し始めている。課題を抱えている酒蔵さんは全国中にいるので、酒かすを価値を持って有効活用していく最大手、一番手になりたいですし、より世の中のみなさんに飲んでもらえるお酒造りをしていきたいなと考えています。

今年は酒かすが多い!?無料配布は大盛況

エシカル・スピリッツは2020年から、酒かすを使って作ったお酒を仕入れて、「クラフトジン」を生産、販売しています。クラフトジンは「LAST」という名前で、LASTには最後という意味と、続くという意味、両方あるので、お酒造りの「最後」に出る酒かすが、再び使われて「続く」という思いが込められていると話していました。