先月、ある画期的なシャワーが発表されました。

寝たまま浴びられるシャワー「switle BODY(スイトル ボディ)」

株式会社シリウス・代表取締役社長 亀井 隆平さん

入浴が困難なお年寄りですとか、体が不自由な方が、普段使っているベッドに横たわったまま、まるでシャワーを浴びたように綺麗に洗ってあげることができる、介護用の洗身用具「スイトルボディ」を開発しました。

カーペットとか、マットレスとかソファーにこぼしてしまった食べこぼし・飲みこぼし。

これに水をジャーッと吹き付けて同時に「吸い取る」機構が、私どもの技術としてあるんですね。

掃除機の吸引力を使って、水を吹き出して、同時に吸い取るので、たちまちにカーペットの汚れが綺麗にしてしまうっていう技術なんですが、その技術を応用した商品が、この「スイトルボディ」です。

お湯をジャーッと体に吹きつけながら同時に吸い取ることによって、綺麗に洗ってあげることができます。

「switle BODY(スイトル ボディ)」、実物はこちら。

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見た目はコンパクトなボックスで、縦23センチ、横45センチ、重さ5・5キロ。シャワーヘッドが1つ付いていて、予めボックスの中にあるタンクに水と洗剤を入れておけば、準備完了。

寝たままシャワー。担い手不足の救世主?

<シャワーヘッドのノズルから、お湯を「出しながら」「吸う」。そうすると、水で濡れてびちょびちょにならず、ベッドの上で使えます>

寝たままシャワー。担い手不足の救世主?

<亀井社長の、腕を洗っている様子。ギュイーンと掃除機のような音がします>

ヘッドはぴったりと肌に密着させて使います。使い方は3段階。

  • シャワーヘッドを撫でるように滑らせながら、瞬時に「お湯」を出して、瞬時に吸い取る。
  • スイッチを切り替えて、こんどは「洗剤」を出しながら、吸い取る。
  • スイッチを切り替えて、「お湯」を出しながら、吸い取る。
  • 普通、体を洗う時は、まず濡らして→石鹸を付けて→洗い流します。これを同じ要領で、スイッチを切り替えながら、3段階で行います。ヘッドを変えれば髪の毛も洗えてしまうということで、慣れれば15分程度で、全身を洗うことができるそうです。

    3人がかりで入浴介助

    もちろん、全身リラックスして湯船につかるのとでは感覚は違いますが、でも介護の現場では、入浴はどれぐらい大変なのか?30年近く介護士を務めた方に、聞きました。

    元 介護士

    寝て入るお風呂の場合は、3人対応ですね。

    当然、寝たきりなので体が動かないので、職員が抑えてあげて、背中を洗ったり、お尻を洗ったり、足を洗ったり。

    頭を洗うときは耳に入ったり、目に入ったりするので、耳栓をする方もいるし、目隠しをする方もいます

    でも、その時の体調とかによってタオルで体拭くっていう場合もあります。とにかくタオルを何枚も使うんですね。

    お湯の温度が50~55度にしまして、継ぎ足しながらバケツに。

    もう手真っ赤ですね。丁寧に丁寧に、一人に40分以上はかかりますね。

    元気なうちは、自宅のお風呂に自分で入ります。

    でも体が不自由になったり、認知症が進んだら、今度は介護士や家族の介助のもとお風呂に入ります。

    ただ、それも困難になってきたら、ベッドの上で拭くしかないのですが、「拭く」というのもなかなか大変なようで、お湯を沸かして、あつあつのタオルを作って、冷やして、体を拭いていく。その後、洗濯して、干して、畳んで…と、これらの手間を一気になくしてくれるものとして、「スイトルボディ」が期待されています。

    気になる価格は、18万4800円(税込)。現在、基本的には、個人向けの販売は行っていないようですが、今後、介護保険適用の申請予定。これが認められれば、来年4月から、ひと月1300円位で、個人宅でレンタルができるようになるようです。

    少ない人数で、効率よく回す

    早く保険適用されて使いやすくなって欲しいなと思いますが、なんといっても、介護の現場では、人手不足の問題も深刻です。

    特に施設介護だけでなく、自宅に赴いて入浴の介助をする、「訪問介護入浴」というものは、かなり逼迫しているようです。スイトルボディ開発者の亀井さんのお話。

    株式会社シリウス・代表取締役社長 亀井 隆平さん

    地方によっては、「訪問介護入浴」っていうのは受けたくても受けられない方々もいるんですね、なかなか予約しても来てもらえないとか。

    ボイラーのついてる特殊な車両で、「看護師さん」「介護士さん」「介護オペレーター」の3名1組で、各家庭に訪問するんですけど、お風呂を玄関のところに持っていって設定して、場合によっては家の水を1回車に持ってきてお湯を沸かして、またお風呂に入れて、って。ベッドの横にお風呂をやってね。

    で、入浴する前に健康状態をチェックする。その後お風呂に入れてやって、体を拭いて、帰ってくるんですけど、なかなか効率が悪いんで、やっぱり事業として成り立たないっていうことで。

    いま全国で、業者がどんどんどんどん減ってるのが実情ですね。

    効率を上げなきゃいけないっていうのは、必須の課題っていうか。これで全てを解決するとは到底思えないんですけど、一助になればいいなという技術になるかなと思ってますね。

    去年、訪問介護事業者で倒産した件数は、過去最多の67件。訪問介護でも、施設での介護にでも、少ない人数で質を落とさず運営していくのは、大変な時代になっているようです。

    お風呂は、人間の尊厳を支える大事なもの。そうしたケアを、誰もが受けられるようになってほしいものです。