2008年7月30日、カナダの長距離バスにおいて乗客の男が隣にいた何の関係も恨みもない若い男性を刃物で刺し殺し、首を切断するという陰惨な事件が起きた。統合失調症が認められたその男について、9年の専門的治療を経て社会復帰が決まったことが大きく報じられている。
しかし男を受け入れることになる地元の人々、そして犠牲者の遺族の心境は非常に複雑であるようだ。

エドモントンからマニトバ州のウィニペグへ向かっていたグレイハウンド・バスの中で殺害された男性は、当時22歳であったティム・マクリーンさん。そして事件の犯人はウィニペグ出身のアジア系カナダ人で当時31歳。ヴィンス・リーという名が現在はウィル・ベイカーと改められている。事件の目撃者によればティムさんはいきなり数十回も胸部を刺され、34人の乗客と運転手は逃げ出したため無事。バスを外側から工具で閉鎖して警察の到着を待ったが、ヴィンスはその亡骸を食べていたという。

警察に「天から指示する声が聞こえる」と言うも服薬など一切していなかったヴィンスは、精神鑑定で統合失調症と判断されて刑事事件としての犯罪責任を負わないことになった。その後、精神保健福祉センターにて9年におよぶ専門的治療を受け、それと並行して裁判官、学者、医師、専門家、弁護士、および市民団体などによる改善状況の評価が毎年行われてきた。その結果、このほどマニトバ州刑法監視委員会は「一般市民にリスクをもたらす危険性はなくなった」と判断。法の定める監視を解かれ、当局職員との定期的な面接も終了し、ヴィンスは再び自由な人生を手に入れることになった。

当然ながらティムさんの遺族、事件現場に居合わせた人々、ヴィンスの地元の人々、そしてカナダ国民はこれに強い憤りを示し、「投獄が難しいのであれば、せめて一生にわたり身柄を拘束して市民の身の安全を守るべき」としている。特にティムさんの母親は犠牲者、被害者が味わった恐怖への配慮が欠けていると訴え、投薬を忘れた、やめたなどという時にまた何か深刻な事件を起こす危険性があると強調している。


カナダでは、ヴィンスのような状況で社会復帰した者が再び凶悪な犯罪を起こした確率は、1%未満とはいえ実際にあるとのこと。徹底した服薬も前提となるだけに、どのメディアも「ヴィンスを再び受け入れることになる地元、特に近隣住民の緊張は計り知れない」と伝えている。

最近は中国の陝西省からも悲惨な事件の話題が伝えられていた。レストランの外で1人で遊んでいた2歳の男の子を統合失調症の男が蹴り倒し、その上半身を激しく踏みつけ、ほうきで叩き続け、全身数か所の骨折と脳内出血を負わせた。ネット上でも「死刑を」との声が集まったが、中国では精神疾患を抱えていても重い刑罰が下されることが多いという。

出典:http://mytoba.ca
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)
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