映画『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督は、潜水艇「タイタン」が消息を絶ったと知った時、すでに大惨事が起こったことを直感したと明かした。監督は、通信と航行が途絶えることは大災害以外ではありえないと主張し、「圧壊」という言葉が真っ先に思い浮かんだという。さらに酸素の残り時間や叩く音が聞こえたという報道が続いたことについて、「悪夢のような茶番劇だと感じた」と語っている。キャメロン監督は過去に30回以上、沈没したタイタニック号を探索した経験がある。

米湾岸警備隊は現地時間22日、沈没船タイタニック号の残骸を見るツアー中に行方不明になった潜水艇「タイタン」の破片を発見したと発表した。発見された破片は「壊滅的な圧壊が起こった場合と一致する」と述べ、タイタンに乗船していた5人に生存の見込みはないとして家族へ哀悼の意を表した

今回の悲報を受け、映画『タイタニック』(1997年公開)のジェームズ・キャメロン監督は、数日前にタイタンが圧壊したことを予感していたと明かした。キャメロン監督は過去に33回も潜水艇に乗り、沈没したタイタニック号の探索に訪れている。

現地時間23日放送の英・情報番組『BBC Breakfast』にリモート出演したキャメロン監督は、オーシャンゲート社が運航する「タイタン」が航行と通信の両方を同時に失ったことを知った時、すぐに大惨事を疑ったとしてこのように話した。

「何が起こったのか、骨身に沁みて感じました。潜水艇の電子機器や通信システムが故障し、追跡トランスポンダ(応答装置)が同時に故障した。潜水艇はもうそこにはないと直感したのです。」

監督は、急いで深海潜水艇関係者に電話で問い合わせたそうだ。すると1時間も経たないうちに、タイタンは3800メートル地点にある海底に向けて降下中だったが、海底3500メートル地点で消息を絶ったと知らされたという。

「通信が途絶え、航行も途絶えた。私は即座に、極端な大災害がなければ通信と航行を一緒に途絶えさせることはできないと言いました。そして真っ先に思い浮かんだのは、“implosion(圧壊)”だったのです。」

現地時間22日に米海軍の関係者は米テレビネットワーク『CBS』の取材に対し、タイタンが地上との連絡が途絶えた直後、海軍は「圧壊と一致する音響異常を検知した」と語っていた。

「タイタン」が18日に消息を絶って以来、世界中のメディアは潜水艇内の酸素の残り時間や30分ごとに叩く音が聞こえたなどと報じており、人々は5人の乗船者全員が無事救出されることを願っていた。

このような報道に対し、キャメロン監督は「ここ数日は、悪夢のような茶番劇が続いたように感じていた。人々は慌ただしく駆け回り、酸素や叩く音や、その他もろもろの話をしていたんだ」と苦言を呈した。

そして「私は、潜水艇が最後に確認された深度と位置の真下に沈んでいることは分かっていた。発見されたのは、まさにその場所だったのです」と加えた。

キャメロン監督は、1912年に沈没したタイタニック号と今回のタイタンの悲劇の共通点について、次のように指摘している。

「ひどい皮肉です。残念ながら警告に耳を貸さなかったという同じ原則に基づき、もう一つの難破船を生み出してしまった。オーシャンゲートは警告を受けていたのです。」

タイタニック号の事故は、船長が船の前方に氷があることを何度も警告されていたにもかかわらず、月のない夜に全速力で氷原に突っ込んだ。その結果、多くの人々の命が奪われた。

米紙『New York Times』によると、オーシャンゲート社は2018年3月、海洋技術協会(MTS)から「オーシャンゲートが採用する現在の“実験的”アプローチは(軽微なものから破滅的なものまで)ネガティブな結果をもたらす可能性がある」と記した書簡を受け取っていたという。



画像2枚目は『BBC Breakfast 2023年6月23日付Twitter「Titanic film director James Cameron has told the BBC he felt the loss of the Titan submersible “in my bones”.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)