素晴らしい大会だった「楽天ジャパンオープン」
観戦して気になったことを紹介

3年ぶりの開催となった「楽天ジャパンオープン」。日本にいながらトッププロのプレーが見られるということで、連日多くの観客が集まった。
今回はノルウェーのキャスパー・ルード(世界ランキング3位)やオーストラリアのニック・キリオス(同21位)、アメリカのテイラー・フリッツ(同8位)など人気の選手が来日。日本からは残念ながら錦織圭(ユニクロ/同759位)は不参加となったものの、前週に行われた「ユージン韓国オープン」(韓国・ソウル/ATP250)で優勝したばかりの西岡良仁(ミキハウス/同41位)や内山靖崇(積水化学工業/同319位)、車いす部門では世界ランク2位の国枝慎吾(ユニクロ)や16歳の小田凱人(東海理化/同5位)らが参戦した。

【SNS】ポケモンセンタートウキョーDXを訪れたことを投稿しているキリオス

気温差10度以上!! 開催期間中の大きな気温の変化

大会期間中ある日は28度、ある日は12度と大きな気温の変化に見舞われた今大会。選手にとってもなかなか調節が難しかったことだろう。一気に気温が下がった日はまだ半袖・半ズボンという服装の観客もおり、現地でフーディーを調達している人を見かけた。

日本における気温の変化は、アメリカのフロリダやスペインなど気候のいい地域でトレーニングを積んできた選手たちにとって調整が難しかったことだろう。


ジュニア時代に日本の大会に出場したトップ選手たちが来日

ルードやフリッツ、キリオスらはジュニア時代に大阪で行われるジュニアの国際大会「世界スーパージュニア」に参戦した経験がある。キリオスは2012年に、今大会にも出場した内田海智(富士薬品/同163位)との決勝戦に勝って、優勝した。また、フリッツは2014年大会で、ルードは2015年大会で優勝している。

ちなみに今年の「世界スーパージュニア」の本戦は、「楽天ジャパンオープン」決勝の翌日である10月10日から開催されている。今回も未来のスターたちが素晴らしい試合を見せてくれることだろう。

一番人気はやっぱりあの選手!? 彼女にも写真撮影の列が!

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント


今大会の前週に行われた「ユージン韓国オープン」で優勝した西岡の試合は、大変盛り上がっていた。
セットカウント1-1となった第3セット、1-5と相手に大きくリードされてしまった場面においても、西岡は積極的に前に出るプレーで観客を沸かせた。西岡はYouTuberとしても活躍しており、トッププレーヤーとしてテニスのエンターテイメント的な要素についても認識しているようだ。

また、なんといっても会場が盛り上がるのがキリオスの試合。キリオスがイライラして叫ぶと会場がより盛り上がる、という構図は非常に興味深い。試合中、キリオスに対して「アイ・ラブ・ユー!」と叫ぶファンもおり、ほかの選手の試合では見られないような雰囲気をつくり上げていた。

キリオスと共に世界中のトーナメントに同行しているガールフレンドもすでに超有名人なようで、試合前には彼女の横に一緒に写真を撮るための列ができていた。


〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント

下のブロックの上から2列目に座る黒髪の女性がキリオスの彼女

キリオスのほかにも、デニス・シャポバロフ(カナダ/同20位)の試合では、試合前のウォーミングアップの時からシャポバロフの写真を近くで撮影しようとする観客が多く集まっていた。また、ダニエル・エバンズ(イギリス/同25位)の試合では、「レッツ・ゴー・ダニエル・レッツゴー」と定番の応援コールがかかり、選手の士気を高めていた。

雨でコート変更…インドアコートは無観客

雨に見舞われた数日間、アウトドアコートである楽天モバイルアリーナで予定されていた試合は室内コートでの開催となった。また、車いすの試合は10月6日まですべて室内コートにスケジュールされており、筆者のように小田の試合を目当てにチケットを購入した場合、少々残念な事態となった。

とはいえ、有明コロシアムでは雨の影響を受けずにスムーズに試合が進んだ。試合と試合の間隔も非常によく管理されている印象で、観客が長い間待たずに済むよう十分に計画されていると感じた。


解説者兼インタビュワーとして松岡修造氏も有明コロシアムを訪れ、大会を大いに盛り上げていた。

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント

エバンズとの素晴らしい試合に勝利したミオミール・ケツマノビッチ(セルビア/同32位)にインタビューする松岡修造氏(写真右)

暑い日はビールとステーキが大売れ! 食べ物レポ

天気の変化が激しかった今大会だが、暑い日にはビールを飲んでいる人が多く見られた。また、ランチやディナーとして、ワゴン車で販売されていたステーキや牛タンに長い行列ができていた。

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント
大人気で行列ができていたステーキ屋

大人気で行列ができていたステーキ屋

ほかにもレモンスカッシュや実際に凍らせたイチゴを砕いたかき氷なども販売されていた。ホットドックやフライドポテトも人気だった。訪れたテニス愛好家たちは、日本における唯一のATP大会を存分に楽しめたことだろう。


雨の日には外に出ないで済むようコロシアム内にもフードコートが設置されていた。中でも、“まい泉”のお弁当はおにぎりも入っていて小腹を満たすのに最適だった。また、伊達公子氏がプロデュースする“フラウクルム”のパンも販売されていた。

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント

“まい泉”のお弁当はこんな感じ

大会を訪れる楽しみの一つ! 大会限定グッズ

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント

大会限定グッズ。値段はTシャツが4,000円、フーディーが9,000円だった

大会を訪れる楽しみの一つが限定グッズだ。四大大会ともなると巨大なスペースに様々な限定グッズが並べられる。
今大会でも限定グッズが販売されており、Tシャツやフーディー、タオルなどが用意されていた。スヌーピーとのコラボタオルもあり、大会を訪れた子どもたちにとっては非常に魅力的に映ったようだ。

車いすテニスの決勝戦に涙…世界2位が試合を通じて次世代の選手に伝えたもの

世界中のトッププレーヤーが一緒に写真を撮りに来ると言われる国枝。そんな国枝が「いつか負ける日が来るだろうと思っている」と語るのが、今回決勝戦の相手となった16歳の小田だ。

攻撃的で精度の高いプレーを見せる小田に対し国枝が苦戦する場面も多く見られ、試合はフルセットの激戦に。どちらが勝ってもおかしくない状況の中、最後は経験で勝る国枝が勝利した。多くの困難を乗り越えてきた選手同士が世代を超えて互いを認め合う姿に、多くの観客が励まされ、涙した。

海外の大会との違いや気づいたこと

これまで「ブリスベン国際」(オーストラリア・ブリスベン/ATP250 ※現在はATPカップに変更)や「上海オープン」(中国・上海/ATPマスターズ1000)、グランドスラムの「全仏オープン」(フランス・パリ)と様々な大会においてテニスを観戦してきた筆者が感じたことを紹介したい。

●海外からはチケットが買えない!
今大会のチケットは楽天チケットで受け取らなければならなかったのだが、スペインからはダウンロードすることができなかった(※筆者は一時的にスペインに滞在)。また、購入に際してクレジットカードでの決済ができなかったため、コンビニエンスストアでの受け取りとしたのだが、開催直前になるとクレジットカードでの決済しか受け付けないように変更されており、日本に帰国してから追加のチケットを購入した。

今年の全仏オープンを観戦した際は日本からチケットを購入した。今回は感染対策の入国制限のため外国からやってきて観戦する人はほぼいなかったと考えられるが、今後は海外からもチケットが買いやすくなることを願いたい。

●お土産にもっとバリエーションがあるといい
Tシャツやタオルなどのグッズは販売されていたが、日本唯一のATPの大会なのでもう少し限定グッズがあれば、お土産としても喜ばれたに違いない。キリオスがポケットモンスター好きとして知られているが、ポケモンとのコラボグッズなどがあると外国人に喜ばれることだろう。

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント


●会場内を移動している選手をもっと見たい!
コロナ禍の影響もあるだろうが、今大会では会場内において一度も選手を見かけることがなかった。タクシーの中から一瞬だけフランシス・ティアフォー(アメリカ/同17位)が会場からホテルに向かっている姿を見かけたのみ。

これまでに行った海外での大会では、会場内を移動する選手に写真やサインをお願いすることができた。混雑や接触を防ぐために今回は配慮されたと思われるが、来年以降はもっと選手を近くで見る機会があると訪れる価値がより高まりそうだ。

素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント

〈楽天ジャパンオープン2022観戦記〉キリオスに「アイ・ラブ・ユー」の声も! 素晴らしかった日本における唯一のATPトーナメント


今大会、決勝では第3シードのフリッツが、全米オープンでも好調だった同胞ティアフォーを破り、優勝した。初戦でトップシードのルードが敗れ、キリオスもケガによりリタイアするなど波乱も見られたが、フリッツにとっては優勝だけでなく自身初の世界ランクトップ10に入ったこともあり(※大会終了後に更新されたランキングで8位となった)、素晴らしい大会となったことだろう。

通常ヨーロッパやアメリカで大会に参戦することの多い選手たちが遠い日本まで試合をしに来てくれるのは、日本人として純粋に誇らしいものだ。非常によく管理された今大会は、観客のみならず、来日した選手たちにとっても素晴らしいものであったことだろう。今後も同大会が選手や観客に長く愛されるものとなることを願わずにはいられない。