元世界2位マルティネスが明かす、19歳アンドレーワを頂点へ導いた成長の軌跡


今年2つ目のグランドスラムとなった「全仏オープン」女子シングルスは、第8シードのミラ・アンドレーワ(世界ランク8位)が予選勝者のマヤ・フワリンスカ(ポーランド/同114位)を6-3, 6-2で下して、1992年のモニカ・セレシュ以来の最年少で大会を制した。この歴史的勝利の直後、アンドレーワのコーチを務める1994年ウィンブルドン女王で元世界ランキング2位のコンチタ・マルティネスが記者会見に臨んだ。
2024年4月から指導を開始し、精神面の課題と向き合いながら愛弟子を頂点へと導いた名将が、歓喜の舞台裏と19歳のポテンシャルについて語った。

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マルティネスは開口一番、「本当に誇りに思う。隠すつもりはない」と喜びを露わにした。これまで多くの浮き沈みを経験してきたアンドレーワだが、今大会で見せた最大の進化はその「精神面」にあったという。

「彼女はまだ19歳で、学び、経験を積んでいる最中。しかし、この全仏オープンでの彼女は非常に集中しており、コート上での振る舞いも素晴らしく、終始冷静さを保っていた。グランドスラムを制するために必要なことすべてに耳を傾け、実行に移す姿勢を見せてくれた」

過去にはコート上で感情を爆発させ、フラストレーションを露わにする場面も少なくなかったアンドレーワ。マルティネス自身も「何かを変えなければ、自ら状況を難しくすることになると、時に疑念を抱くこともあった」と明かす。しかし、今大会を通じてアンドレーワは感情をコントロールし続け、4回戦以降で落としたゲーム数はわずか17。これは1988年のシュテフィ・グラフ、2020年・2024年のイガ・シフィオンテクに次ぐ、歴史的な圧倒劇となった。

決勝の相手は、今大会4人のシード勢を破り、予選から計9試合を勝ち上がってきた世界114位のフワリンスカ。対戦経験やデータが限られていた相手に対し、マルティネスは徹底的なスカウティングで対抗した。


「多くのビデオや試合、スタッツを分析した。彼女が非常にトリッキーな選手であることは全員が知っていたし、他の選手たちも苦戦していた。対策としては、攻撃性と忍耐強さのバランスを持たせることだった。決勝前日の練習では、ミラが情報量に少し圧倒されているようにも見えたが、当日のウォームアップを終えた時には完全に準備が整っていた。第4、第5ゲーム以降は、ミラがより相手のテニスを読み、アグレッシブにプレーできていた」

試合は序盤こそ風と緊張から互いにブレークが続く展開となったが、アンドレーワが第1セット中盤から4ゲームを連取して主導権を握ると、第2セットも5-0と猛ラッシュをかけ、1時間22分で決着をつけた。

アンドレーワの劇的な精神的成長の背景には、マルティネスが主導したチーム体制の確立がある。アンドレーワは会見で「約1年半前から心理カウンセラーのサポートを受けている」と明かしていたが、マルティネスはその意図をこう説明した。

「フィットネスコーチも含め、彼女の周囲に非常に優れた専門家チームを構築できた。テニスの指導はできても、私は心理学者ではない。2024年のウィンブルドン後に話し合い、2025年の全豪オープン直前からカウンセラーを導入した。これは非常に良い決断だった」

また、春のハードコート・シーズン(ドーハ、ドバイ、インディアンウェルズ、マイアミ)で思うような結果が出なかった後、マルティネスがあえて帯同せず、アンドレーワを一人でクレーコート・シーズン初戦のWTA500リンツに向かわせたことも大きな転換期となったという。

「現地には帯同しなかったが、電話で密に連絡を取りながら戦術面をサポートしていたが、現地に誰も頼る人がいない環境で、自ら考えてプレーさせることが必要だった。
結果としてあの週が、この素晴らしいクレーシーズンの始まりとなった」

今回の優勝により、アンドレーワは月曜日に発表される世界ランキングで6位に浮上、最終戦レースではトップに躍り出る。記者からは「純粋なテニスの質では世界最高ではないか」との声も投げかけられたが、、マルティネスは教え子の未来を冷静に見据えている。

「まだあらゆるところで改善の余地が大きく残されている。それが何よりの良いニュース。私たちは地に足をつけ、謙虚であり続けなければならない。毎日が向上するための機会であり、正しく仕事を続ければランキングや結果は自ずとついてくる。彼女がハードワークを続け、耳を傾けるとき、そのポテンシャルに限界はない。可能性は無限だ」

会見の最後には、アンドレーワ本人が記者席から「ミラ・アンドレーワと働く上での一番のメリットは?」とユーモアを交えて逆質問。マルティネスが「(カードゲームの)UNOを一緒にプレーできて、しかも私がいつも勝てること!」と笑顔で返し、会場は温かい笑いに包まれた。確かな信頼関係を築き上げた師弟コンビの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
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