北越急行オリジナル車両のHK100形。大きな特徴はありませんが、魚沼や頸城の自然にマッチした好ましいスタイルです。
今回は「この秋乗ってみたい路線」としてほくほく線を取り上げます(写真:tarousite / PIXTA)

【参考】経常黒字1社、赤字39社 三セク鉄道の2021年度業績まとまる
→https://tetsudo-ch.com/12643281.html

先日紹介した三セク鉄道の近況に続き、今回はこの秋乗ってみたい三セク鉄道として、首都圏からの日帰り乗車も可能な新潟県の北越急行をご紹介します。

北越急行が運行するほくほく線は、六日町―犀潟間59.5キロを結ぶ鉄道路線。六日町でJR上越線、犀潟でJR信越線に接続します。開業は1997年3月で、2022年で25周年。国鉄北越北線として着工されましたが、国鉄改革で新潟県、沿線自治体、金融機関などが出資する北越急行に引き継がれました。

注目の三セク 北越急行ほくほく線をご紹介 25周年で記念列車も走ります【コラム】
ほくほく線路線図。
十日町でJR飯山線と接続するので、乗り継げば長野や新潟(市)方面への移動も可能です(画像:北鉄急行)

2015年3月の北陸新幹線金沢延伸開業まで、東京から北陸方面への鉄道での移動は、ほくほく線経由が一般的でした。上越新幹線越後湯沢で、在来線特急「はくたか」に乗り換えて北陸に向かう。開業から18年間、ほくほく線は首都圏と北陸をつなぐ主要ルートの一部でした。

しかし、北陸新幹線の金沢延伸開業でほくほく線は幹線から外れてローカル線に。従来以上に、地域密着や利用促進が求められるようになりました。

新幹線乗り継ぎで首都圏と上越市や十日町市を直結

注目の三セク 北越急行ほくほく線をご紹介 25周年で記念列車も走ります【コラム】
かつての名シーン、魚沼丘陵を行く681系「はくたか」。北越急行の特急用車両は北陸新幹線金沢開業でJR西日本所属になり、北陸・七尾線特急などで活躍します(画像:北越急行)

今、ほくほく線に特急や急行はありません。

越後湯沢と北陸方面を結んでいた特急「はくたか」は、北陸新幹線に役目を譲って姿を消しました。

しかし、都市間鉄道の機能を放棄したわけではありません。終点・犀潟のある人口約18万5千人の上越市は日本海側有数の基幹都市。ほくほく線内では、JR飯山線と接続する十日町市が人口約5万人の中核都市です。(※人口はいずれも2022年8月1日時点)

北越急行が東京から上越や十日町に向かうビジネスマン、観光客のために朝下り(犀潟、直江津方面)で設定するのが「超快速スノーラビット」。9時14分に越後湯沢を出て十日町、まつだいなどに停車して直江津へ。

直江津からは同じ三セクのえちごトキめき鉄道の妙高はねうまラインに入り、新井まで直通運転されます。

越後湯沢―六日町間はJR上越線、六日町―犀潟間は自社線、犀潟―直江津間はJR信越線、直江津間―新井間は妙高はねうまラインと、実に4線区をまたぐ列車です。

終電後に出発 夜のトンネル内を歩く

注目の三セク 北越急行ほくほく線をご紹介 25周年で記念列車も走ります【コラム】
鉄旅オブザイヤー2019グランプリのツアー「超低速スノータートル『ナイトタートル~夜のトンネル探検』」夜のトンネル探検』」のワンシーン(写真:北越急行)

次にほくほく線の魅力。ほくほく線に観光列車はありませんが、鉄道ファンや観光客を呼び込む知恵があります。〝観光・ほくほく線〟を知らしめたのが、2018年と2019年に催行されツアー「超低速スノータートル『ナイトタートル~夜のトンネル探検』」です。

時速5~10キロの超低速列車・スノータートルで、夜のトンネル探検に出発します。普段、列車内のトンネル内は真っ暗で何も見えません。

でも内部はどうなっているのか、ファンは興味津々です。

ツアーは、鉄道利用の魅力的な旅行商品を顕彰する「鉄旅オブザイヤー2019」で、最優秀賞のグランプリに選ばれました。

「開業25周年記念列車オールスター号」

そうした実績をもとに開業25周年の今年、送り出すツアーが「記念列車オールスター号」。六日町―犀潟間往復で、行きは「超快速スノーラビットゆめぞら」、帰りの犀潟~まつだい間は「超低速スノータートル」と、同じ車両ながら列車名と運転速度を変えます。

途中下車のまつだいでは、松代工務区を見学。ラストのまつだい~六日町間は、光や音でほくほく線を表現する「芸術祭列車」になります。

オールスター号は7~9月に3回運転。すでに申し込みを締め切っていますが、北越急行は今後もさまざまな列車を運行するそうなので、気になる方はぜひホームページをチェックしてみてください。

ほくほく線沿線には、松之山(十日町市)、ゆきだるま(上越市)といった温泉郷もあります。1泊2日の行程を組めば、沿線の魅力をより深く知ることができるでしょう。

記事:上里夏生