コロナ禍を契機にリモートワークが浸透する中、新たな働き方を模索する方もいます。
会社員のみならず、フリーランスとしての働き方に興味を持つ方もいるかもしれませんね。
株式会社Hajimariが行ったアンケート「フリーランスの年収に関する調査」によると、現在のフリーランスとしての年収は800万~1000万がボリュームゾーンだということがわかりました(2022年9月5日公表)。
フリーランスとしての業務時間で最も多かったのは「40時間前後」の49.1%で、正社員の勤務時間(残業なし)と変わりません。
つまり、時給換算で比較しても高い収入を実現する人が多いのです。
一方で、多くのフリーランスを悩ませるのが「国民健康保険料の支払い」ではないでしょうか。会社員の健康保険料とは大きく異なる扱いに、戸惑うフリーランスも少なくありません。
国民健康保険料の水準や軽減対策を見ていきましょう。
■フリーランス等が加入する国民健康保険とは
会社員も加入する健康保険には、実はさまざまな種類があります。
日本は国民皆保険制度をとっているため、誰もが何らかの公的保険に加入します。
- 協会けんぽ…中小企業で働く従業員
- 組合管掌健康保険…大企業で働く従業員
- 共済組合…公務員や私立教職員
- 船員保険…船員
- 後期高齢者医療制度…75歳以上(一定の障害がある方は65歳以上)のすべての人
- 国民健康保険…上記以外の自営業やフリーランスの方など
つまり、国民健康保険には会社等に勤めていない方が加入します。
■2022年、国民健康保険料の上限が引き上げられた
国民健康保険料は「医療分」「支援金分」「介護分」を合算した金額で決まり、それぞれに「所得割」「均等割」「平等割」があります。
2022年度は制度改正により上限額が引き上げられました。
今回の改正で上限引き上げの影響を受けたのは、単身世帯なら年収1140万円程度が目安の方です。
厚生労働省の試算では、対象となる人の割合は約1.58%。該当する方は3万円(基礎賦課分2万円、後期高齢者支援金等賦課分1万円)の引き上げとなっています。
影響を受けた方は少ないものの、国民健康保険の運営は困難を極めているのも事実です。というのも、比較的元気な現役世代が多く加入する他の社会保険に比べて、国民健康保険にはリタイヤした人も加入しているからです。
急速に進む高齢化により医療費が高まり、保険料の負担増加は続いています。
こうした現象は改善されず、今後も続く可能性が高いです。
■年収600万円世帯の保険料を「国民健康保険」「社会保険」で比較
年収600万円の場合、保険料はいくらになるのでしょうか。
居住地や年齢でも異なるため、条件をあわせて「国民健康保険」「協会けんぽ」で比較してみます。
■試算条件
- 東京都渋谷区在住
- 年収:600万円
- 給与所得:436万円
- 世帯構成:一人暮らし
- 年齢:45歳
■国民健康保険料の試算結果
出所:渋谷区「保険料試算」
世帯合計の保険料:53万531円
(1ヵ月あたりの保険料:4万4211円)
■協会けんぽの保険料の試算結果
年収600万円の方を、月給43万円、賞与84万円と仮定します。
- 毎月の保険料:2万5190円
- 賞与からの保険料:4万8090円
- 年間合計:35万370円
国民健康保険料よりも安い結果となりました。会社員の場合、健康保険料は事業主と折半して支払います。
■国民健康保険の負担を減らすには
国民健康保険の保険料は、前年中の所得や世帯状況にあわせ、根拠に基づいて公平に決定されます。そのため、「支払いがきついから安くしてほしい」というのは基本的に認められません。
ただし、利用できる制度があるのに知らないとなれば、損している可能性もあります。見逃している制度がないかどうか、一度確認してみましょう。
■国民健康保険組合に加入する
業種によっては国民健康保険組合に加入できる可能性があります。
一般社団法人「全国国民健康保険組合協会」のサイトから、あてはまる業種がないか確認してみましょう。
■住民税申告をする
法令により定められた所得基準を下回る世帯については、被保険者応益割(均等割・平等割)額の7割、5割又は2割を減額する制度があります。
出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
「所得がないから」と申告をしないでいると、適切な軽減が受けられていないかもしれません。
■国民健康保険料が安い市区町村へ引っ越しする
市町村によって保険料に差があるので、料率が安い地域に引っ越しすることも有効な手段です。
居住地を選べる方などは、参考にしてみましょう。
■国民健康保険料の減免制度を利用する
新型コロナウイルス感染症の影響により、主な生計維持者の事業収入・給与収入等が一定程度減少した場合、国民健康保険料の減免が認められるケースがあります。
さらに会社都合で退職した場合は、国民健康保険料の軽減制度があります。申請制なので、手続きで漏れている可能性もあります。念のため確認しておきましょう。
■おわりに
年収600万円の世帯が負担する健康保険料を見ていきました。株式会社Hajimariの調査によると、フリーランスとして働く方の年収は800万~1000万がボリュームゾーンとのことなので、さらに負担が高まるでしょう。
公的な制度は、本来国民の生活を支えてくれるものです。健康保険がなければ適切な医療が受けられない可能性もあります。
メリットを享受するためとはいえ、決して安くないのが国民健康保険料です。働き方を考えるときには、さまざまな制度や「負担を軽減する方法」を知っておきましょう。
■参考資料
- 株式会社Hajimari「【ITプロパートナーズ独自調査】フリーランスの年収は?意外な調査結果を公開中!」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000112.000031819.html )
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」( https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000847315.pdf )
- 全国健康保険協会「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」( https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r4/ippan/r40213tokyo.pdf )
- 渋谷区「保険料試算」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」