※このインタビューは2019/08/30に公開した記事となります。
人気投資ブログ 『The Goal』 の管理人である、まつのすけさんは30代前半の若さで「億り人」まで上り詰めた、実力派の個人投資家の1人です。
まつのすけさんプロフィール
人気投資ブログ「The Goal」管理人。株投資歴約13年。資金数十万円からスタートし主に株式投資で億り人に到達。FX、先物取引も少々。対面証券でも取引を行い、多数のIPOを獲得。
ツイッターアカウント @matsunosuke_jp
まつのすけさんの投資ヒストリー
社会の出来事 年度 まつのすけさんの投資歴 郵政解散、小泉郵政選挙による株価の急騰 2005 社会人になった9月ごろ、小泉郵政解散の後の株価上昇で発生した投資ブームに乗って、全財産の40万円を元手に投資を始める ライブドア・ショック、村上ファンド・村上世彰の逮捕 2006 ライブドア・ショックで保有していた株がドカンと下落。株の怖さを実感 2007 勝ったり負けたり一進一退 リーマン・ショック 2008 機敏に売買を行う投資スタイルだったことから、リーマン・ショックのダメージは軽微(2008年も若干のプラスリターン) 旧ジャスダック、ヘラクレス、NEOの3市場を統合し新ジャスダックが発足。 2010 優待クロス取引を開始 東日本大震災、米信用格付引き下げ 2011 イベント投資、過去データの分析に注力した結果、パフォーマンスが安定し、年間で利益が出せるようになった 2012 RIZAPグループ購入、12月にはドル円の長期ロングポジション構築 アベノミクス相場開始 2013 市況の波に乗って主に日本株の売買で好パフォーマンス 消費税率を8%に引き上げ、アベノミクスピーク 2014 ブログ 「The Goal」 を現在のドメインで始める 2015 イギリスのEU離脱国民投票 2016 ファーストエスコ誤発注で痛恨の利益見逃し 2017 東証一部昇格狙い、統計に基づいた期待値が高い売買、各種イベント投資などによって好パフォーマンスを維持 2018 順張り&ロスカットの徹底で手堅くリターンを獲得 2019 退職し、ついに専業投資家へ!景気が悪くても安定した成績を残せる理由
──まつのすけさんは、「イベント投資」を実践するようになって成績が向上し、今や資産は1億円を超えているとのこと。年間だとどれくらい利益を出せるのですか?

その年によって違いますが、ここ最近は3,000万円くらいですね。2016年から3年連続で3,000万円を越えました。
──少し前までは兼業投資家だったわけですよね。会社勤めをしながらコンスタントに年間3,000万円も利益を挙げていたのですか?
はい、試行錯誤の末に投資スタイルを確立してからは、安定的に利益を出せるようになりました。ただ、私の周りにはそれ以上利益を出している人もいるので、常に努力するのが大事だと心がけています。
──でも、2018年はアベノミクス景気が陰りを見せ、マイナス収支を強いられた人も多かった年です。そんななかで過去2年の水準を維持したのはスゴイと思いますが。
それには理由があります。ひと口に「株式投資」といってもさまざまな手法があり、例えば割安な銘柄を狙って中長期間保有し、高くなったら売って利益を得るという方法を取っている人は、2018年はけっこう厳しかったと思います。相場が悪い中で利益を残すのは簡単ではないですから。でも、私が実践している「イベント投資」は、景気に左右されにくいんです。相場動向にあまり左右されないのが特徴です。
──イベント投資は景気の影響を受けないのですか?
はい、だから毎年、安定した利益を上げられるんです。
──そういう意味では中長期投資をメインにしているような人も検討してみるといいかもしれませんね。
はい、そう思います。やるやらないは別としても、知っておいて損はないと思います。
──「イベント投資」にマイナス面はないんですか?
うーん、どうでしょう。
──でも、ご自身は年間3,000万円以上、利益を出せていますよね。
それはいろんな取引を数多く実施しているからです。あるイベント投資で数十万円稼ぎ、べつのイベント投資で数十万円稼ぐ──。そうやって年間3,000万円以上の利益を出しているということです。機敏に売買する必要があり、またデータ分析・研究や発注の手間もかかるので、楽して簡単に利益が出るわけではありません。
──では、まずはそのなかの1つだけ試してみるのもアリかもしれないですね。
はい、自分にできそうなものから始めてみることを勧めたいですね。
5月から10月の半年間は株を保有しない
──ほとんどの人は「イベント投資」といってもピンとこないと思うので、具体的にどういうものなのかお話しいただけますか。

ひと言でいえば「ある出来事に対して値動きの法則を見出し、優位性の高いほうに投資する」という方法です。
──分かったような、分からないような(笑)。
実例で説明したほうが分かりやすいと思うので、一つ例を挙げます。米国のウォール街に「Sell in May, and go away; don't come back until St Leger day」という格言があります。日本語に訳すと「5月に売って去れ。そしてセント・レジャー・デーまで戻ってくるな」という意味です。「セント・レジャー・デー」というのは9月の第2土曜日に行われる競馬のレースのこと。つまり、「9月まで戻ってくるな」ということです。
──要するに5月から9月までは株を保有するなと?
おっしゃる通りです。たぶん誰かが1年のなかで5月から9月までは株式相場が冷え込むことが多いと気づいたんでしょう。だから、その間保有していると資産を減らすだけだと。
──実際、そうなのですか。
日本株について調べたところ、これに近い事実が確認できました。2000年から2017年の日経平均株価の季節変動をチェックしてみたら、11月から4月までは株価が上昇する傾向が強く、5月から10月までは下落する傾向が強かったんです。もちろん、毎年必ずというわけではありません。それに11月から4月でも1月はマイナスになることが多いし、5月から10月だと6月はプラスになることが多いので、例外もあります。でも、2000年から2017年に限れば、季節によっていい時期と悪い時期があったのは紛れもない事実です。
──だとするとどんなことがいえますか?
11月頭に日経平均株価に連動する投資信託やETF(上場投資信託)、先物などを買って4月まで保有する。5月頭にすべて売り、10月末まで何もせず休む。もし18年間、ずっとこれを続けていたら、トータルでは大きな利益を出せたということです。
──相場がよくなりがちな時期だけ保有しているのだから、当然、勝てるわけですね。
そういうことです。
──計算上だとどれくらい勝てますか?
1999年末に日経平均株価連動の投資信託などを買い、2017年末まで保有していたとします。その場合、資産は1.2倍にしかなっていません。
──なるほど、面白いですね。
これはあくまでも過去18年間のデータにもとづく試算であって、今後も同じような傾向が続くかどうかはわかりません。でも、18年続いたんだから、これからも続いてもおかしくはない。だったら、その規則性にのっとって投資したり、ポジション量を調整するのもアリではないかというのが私の考えです。
──つまり、これからも11月頭に買って4月に売ればそれなりの結果を出せるのではないかと。
はい、そういうことです。特に2~4月に株価が上昇するパターンはよくあるので、年明けから春にかけて基本スタンスとしては強気目線で相場に向き合っています。
株式投資に慣れている人は「空売り」を活用しよう
──まつのすけさんはいろいろなイベント投資をやっているわけですよね。それら1つ1つについては追ってお伺いしますが、日経平均株価の季節変動を利用した投資法について、もう少しお聞かせください。
はい、もちろんです。たぶん日経平均株価に連動する投資信託などを持っている方の多くは、長期保有を前提としていると思います。でも、資産の一部については、半年ごとに買ったり売ったりするのも1つの方法ではないかと。

「今も複数の仮説を検証中です」
──そうしたほうが絶対にトクですか?
いえ、絶対とは言えません。先ほども言ったように、過去18年間では2.75倍に増えましたが、これからも同じように増えるとは限りません。というのも、11月から4月は相場がいいと言っても、論理的根拠があるわけではないんです。なぜなのかは誰も説明することができない。この18年間に限って、たまたまそういう年が多かっただけかもしれません。だから、例えば全資産をこれに充てたりするのはリスクが大きい。でも、何分の1かならやってみる価値があると思います。
──でも、考えてみたら、もしこの投資法が「絶対」なら日本中の投資家がマネをしますよね。誰もが11月に買って4月に売るようになる(笑)。そうなったらこの投資法自体、成り立たないわけで、そういう意味では「絶対」でないからこそ、価値があると言えるんでしょうね。
おっしゃる通りです。みんな根拠がはっきりしないことはやりたがらないものなんです。いくら過去のデータが示していても確信が得られないと躊躇してしまう。そういう人が抱きがちな心理的抵抗を乗り越えて稼ごうというのがイベント投資です。
──そういえば相場の悪い5月から10月はじっとしていたほうがよいとのことですが、この間、空売り(信用取引などを利用し、保有していない株を借りて売ること。株価が下がると予想できるときに「空売り」し、実際に株価が下落したところで買い戻すと利益を得られる)にトライするのもアリなのでは?
季節特性ではその間日経平均は下がる傾向にあるので、空売りで利益を狙うという選択肢もあります。具体的には信用取引でETF(上場投資信託)などを信用売りする、先物取引でショートポジションを構築してロールオーバーするといった方法があります。ただし、金融政策、選挙、世界経済などで好材料が出た場合は季節特性を打ち破るので、リスク管理は重要です。また、保有株に対してヘッジをかける趣旨でショートを活用することもできます。インデックスに対して優位性がある売買手法を確立させれば、 ロング・ショート によって相場動向に左右されずにリターンを得られるようになります。
──11月から4月までは保有し、5月から10月までは空売りをしたらかなり増やすことができそうですね。
これも過去18年間で試算してみたのですが、なんと4.5倍に増えるという結果になりました。注意点としては、年によってバラつきがあり、11月~4月が軟調な年、5月~10月が堅調な年もある点です。したがって、必ず勝つというわけではありません。季節特性と同じパターンの値動きをしている年は強気になって投資金額を増やすといったポジション調整に使うのもいいでしょう。信用取引となるとビギナーの方にはちょっとハードルが高いかもしれませんが、ロング・ショートはいろんな場面で使えるので、いずれ経験を積んだらトライも検討してほしいですね。
──では、次回はこれ以外のイベント投資について伺います。
中編 ピーター・リンチ流の中長期投資。大化け株のヒントは? を読む>>
後編:「10%」が損切りのルール! を読む>>
(トウシル編集チーム)