株式市場では連日、「暴落」が相次ぎ、大荒れの展開となっています。


 週明け5日(月)の東京株式市場の日経平均株価(225種)終値は前週末から4,451円安となる3万1,458円まで急落しました。


 下落幅は1987年10月20日の「ブラックマンデー」の翌日(3,836円安)を越えて、過去最大となりました。連日の大幅な下落で、日経平均は7月11日に付けた史上最高値4万2,224円から1カ月も経たないうちに1万円以上下落しました。


 株価暴落の最大要因は急速な円高と米国の景気後退懸念です。


 5日の東京外国為替市場で一時1ドル=141円台後半を付け、7カ月ぶりの円高水準となりました。7月3日に1ドル=161円台後半を付けてから、約20円円高となっています。


 円高の要因となったのは、日本銀行が先週31日(水)終了の金融政策決定会合で、大方の予想を裏切り、政策金利を0.25%程度に引き上げる利上げを決定したことです。


 取引時間終了後に記者会見した植田和男総裁が政策金利について「0.5%を壁として意識していない」「(利上げしても)景気に強いブレーキがかかるとは考えていない」と、予想以上に金融引き締めに積極的なタカ派的発言を行うと、市場の雰囲気が一変しました。


 米国では1日に発表された週間の失業保険申請件数が11カ月ぶりの高水準となり、ISM(全米供給管理協会)の7月製造業景況指数も8カ月ぶりの低水準になると、米国経済がソフトランディング(軟着陸)ではなくハードランディング(景気後退)に陥るのではないかという不安が急速に台頭。


 2日(金)には米国の7月雇用統計が発表され、非農業部門新規雇用者数は予想を大幅に下回る11.4万人増に伸びが鈍化。失業率は約3年ぶりとなる4.3%まで上昇しました。


 米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が高金利政策の根拠としてきた旺盛な労働市場という大前提がもろくも崩れ、米国株も急落しました。


 機関投資家が運用指針にする2日のS&P500種指数は前週末比2.06%安。


 ハイテク株主体のナスダック総合指数はAI(人工知能)バブルに対する幻想がはげ落ちてきたこともあり3.35%安。最高値から10%以上下落したことで調整局面入りしています。


 今週、果たして株価は下げ止まるのでしょうか?


 一番は円高が落ち着くこと。


 さらに米国で5日(月)に発表される7月のISM非製造業景況指数が予想以上に好調で米国の景気後退不安が一服すれば、株価も下げ止まるかもしれません。


 ただ相場が急落しているときは、以前より安く買えるからといって安易に株を買うのは禁物です。


 新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠で買った株は長期投資が大前提といえるので、急落で怖くなって売るのは得策ではないでしょう。


 ただ上場来高値を更新するほど急上昇していた株は、今回の急落を乗り越えて株価が再び高値を突破するには時間がかかりそうです。


 信用取引などを使ったリスクの高い売買の場合は損切りして、新たなチャンス到来を待つ姿勢も大切です。


先週:日銀利上げ、円高、米国の雇用悪化、インテル悪決算などショック連発で歴史的急落!

 先週の歴史に残る株価の暴落は、日本国内では、日銀が予想に反して利上げした日銀ショック、それにともなう急速な円高ショックが大きな原因です。


 2日(金)発表の米国7月雇用統計で失業率が4.3%まで上昇したこともあり、米国では来たる9月18日(水)終了のFOMC(連邦公開市場委員会)で通常の倍となる0.5%の利下げがあるのではないかという見通しも台頭しています。


 FRBが大幅利下げに踏み切ると日米金利差の縮小でさらに円高が加速する恐れもあることが、今週以降も日本株の大きな下げ要因になりそうです。


 円高は海外で収益を上げる外需企業だけでなく、インバウンド(訪日外国人)の旺盛な消費が落ち込むことにもつながるため、これまで株価が急上昇してきた百貨店や都市型家電量販店などの株価にも打撃です。


 また先週は本来、利上げが収益の追い風になるはずの銀行株も売られ、内需株や大型株の影響力が強いTOPIX(東証株価指数)は前週末比6.0%安。

半導体株などの影響力が強い日経平均の下落率4.7%を下回りました。


 円安トレンドに乗って大量の資金を投入してきた外国人投資家が、流動性の高い大型株を投げ売りしている状況といえるでしょう。


 米国の利下げ期待から一時、期待された中小型の成長株も、先週は東証グロース市場250指数が10.4%安になるなど急落。


 日銀の利上げで新興市場に流れ込む投資資金が先細る懸念が直撃し、全面安の展開でした。


 一方、電炉メーカーの 東京製鉄(5423) は7月26日(金)に今期2025年3月期の通期営業利益予想を上方修正し、大規模な自社株買いを発表したことが好材料となり、前週末比25.4%上昇しました。


 鉄鋼業や海運業など、業績に比べて株価が非常に割安な重厚長大株の中には逆行高する銘柄もありました。


 先週発表になった メタ・プラットフォームズ(META) 、 アップル(AAPL) など「マグニフィセント7」と呼ばれる巨大IT企業の決算では、AI技術の普及がいまだ巨大IT企業の収益に貢献していない現実が浮き彫りになりました。


 さらに8月1日(木)には米半導体メーカー大手の インテル(INTC) が発表した2024年7-9月期の売上見通しが予想を大幅に下回り、配当停止や人員解雇を発表した「インテルショック」も発生。


 AIバブルの崩壊は避けられそうにありません。


 ただ、半導体株でも2024年4-6月期の営業利益が前期比2.2倍に拡大した アドバンテスト(6857) は週間で14.7%高とリバウンド上昇。


 30日(火)に米半導体メーカーの アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD) が 2024年4-6月期の純利益が前期比9.8倍に躍進した好決算を発表。翌31日(水)に前日比4.36%上昇(週間では5.35%の下落)しているように、AIデータセンター向けの半導体需要は高止まりしています。


 一部の半導体株は相場が落ち着けば見直し買いされるかもしれません。


 業種別週間騰落率ランキングでは電気・ガス業、小売業、医薬品、陸運業、サービス業などの下落率が比較的穏やかになっています。


 急速な円高ドル安が進行する状況では、インバウンドとは関係のない内需株が今後も資金の逃避先としては無難といえそうです。


今週:米国の景気・雇用指標が反転上昇の鍵!中東情勢も心配!下げ相場で株を買う方法

 今週は5日(月)夜発表の米国ISM非製造業景況指数に注目が集まりそうです。


 同指数は6月に大幅低下しているだけに、今回7月の数値が好不調の境目である50を超えてこないと、今週前半も株価下落が続く可能性が高そうです。


 8日(木)の米国の週間新規失業保険申請件数にも大きな注目が集まるでしょう。


 毎週木曜日に発表される米国の前週分の新規失業保険申請件数は4月後半以降、これまでの20万~21万件から23万~24万件に上昇しています。


 失業保険の申請件数が新たに増えるということは失業者が増加し、雇用市場が軟化していることを示します。


 今週は日本企業の2024年4-6月期決算もビークを迎えます。


 7日(水)には国際優良企業の ソニーグループ(6758) やAI関連株で先週株価が14.2%も急落した ソフトバンクグループ(9984) 。


 8日(木)には半導体関連の主力株で先週の下落率は2.1%と小幅だった 東京エレクトロン(8035) 。


 9日(金)にはインバウンド関連で先週は週間で15.7%も下落した百貨店の 三越伊勢丹ホールディングス(3099) などが決算発表を予定しています。


 先週7月31日(水)には、パレスチナのイスラム組織ハマスの最高幹部がイラン滞在中に何者かに殺害される事件が発生。イランとイスラエルの武力衝突が懸念されるなど、中東情勢の緊迫化も新たな不安材料になりそうです。


 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる バークシャー・ハサウェイ(BRK.B) が保有するアップル(AAPL)株の約半分を売却したことが判明し、現金持ち高が過去最高水準に達しているのも株価がまだまだ下落するシグナルといえるかもしれません。


 ある意味、下げ相場は株を割安な価格で仕込むチャンスです。ただ、今週はまだまだ混乱が収まりそうにありません。


 株主優待取得や新NISA口座での長期保有目的で買いたい株があっても、すぐに買わない方がいいでしょう。


 過去の値動きを示した長めの株価チャートを見て、株価がまだ高値圏にあって下落余地がありそうか、株価が下げ止まりそうな過去の安値などの節目はどこか、といった点をチェックしましょう。


 その上で、現状よりかなり下値に指値注文を入れて、じっくり待つのが賢明と言えるでしょう。


(トウシル編集チーム)

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