9月16~17日にかけて行われた米FOMCで、0.25%の利下げが決定しました。短期的には出尽くし感も警戒され、米国株、日本株ともハイテク株を中心に、いったんの調整を想定する必要性が高いと感じます。
アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15
コード 銘柄名 現在値 配当利回り コンセンサス
レーティング 移動平均線
乖離率 月間
騰落率 6481 THK 4050.0 6.14 3.8 1.10 ▲0.15 3002 グンゼ 3845.0 5.62 3.8 3.46 1.18 7148 FPG 2460.0 5.30 4.0 3.52 2.89 1890 東洋建設 1746.0 5.15 4.0 7.07 0.17 7283 愛三工業 1943.0 3.86 4.0 6.52 0.57 8130 サンゲツ 3140.0 4.94 4.0 3.84 4.15 4521 科研製薬 3899.0 4.87 3.5 0.80 1.01 5021 コスモエネルギーホールディングス 7192.0 4.82 3.9 6.71 1.44 2154 オープンアップグループ 1802.0 4.81 4.0 0.85 ▲3.64 7202 いすゞ自動車 1975.5 4.70 3.6 2.62 1.91 4503 アステラス製薬 1690.5 4.66 3.5 9.58 1.17 4631 DIC 3662.0 5.46 3.7 15.56 9.15 8725 MS&ADインシュアランスホールディングス 3492.0 4.61 3.6 4.98 ▲2.97 9076 セイノーホールディングス 2281.0 4.58 3.5 0.04 ▲3.16 4208 UBE 2411.5 4.56 3.5 3.91 2.60 ※データは2025年9月12日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。
※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。
※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。
上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。
9月12日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。
なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。
米国利下げ期待や石破首相退陣で日経平均は最高値を再度奪回
8月15日終値~9月12日終値までの日経平均株価(225種)は3.2%の上昇となりました。
8月後半から9月初めにかけては調整となり、一時25日移動平均線を下回る状況となりましたが、4万2,000円割れ水準では押し目買いが優勢となり、その後切り返す展開になりました。8月19日につけた史上最高値4万3,876.42円を更新し、期間中最終日には高値4万4,888.02円まで上値を伸ばしています。
9月前半までの調整場面においては、高値圏での利益確定売り圧力が強まったもようです。ジャクソンホール会合で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が9月の利下げを示唆したほか、米エヌビディアが好決算を発表したものの、市場のポジティブ反応は限定的でした。
一方、9月前半から中旬にかけては、いくつかの好材料が株価を押し上げました。石破茂首相の退陣表明により、政局不透明感が後退したほか、財政拡張派の新首相誕生への期待が高まる展開になりました。また、雇用統計など経済指標の悪化、インフレ指標の落ち着きなどから、米国の継続利下げや大幅利下げ期待も高まったものとみられます。
こうした中、ランキングTOP15は11銘柄が上昇して、4銘柄が下落となりました。
最も高い上昇率となったのは DIC(4631) で、業績・配当予想の上方修正が引き続き評価される展開になりました。また、約20%の株式を保有して筆頭株主となっている 太陽ホールディングス(4626) の株価上昇も刺激になったとみられています。ほか、 サンゲツ(8130) などの上昇も目立ちましたが、堅調な決算内容に対する見直しの動きが強まったもようです。
半面、 オープンアップグループ(2154) が軟調でした。
大幅増配発表のDICなどが新規にランクイン
今回、新規にランクインしたのは、オープンアップグループ(2154)、DIC(4631)、MS&AD HD(8725)、 セイノーホールディングス(9076) の4銘柄です。一方、除外となったのは、 LIXIL(5938) 、 ノーリツ鋼機(7744) 、 王子ホールディングス(3861) 、 AGC(5201) となっています。
除外銘柄のうち、LIXILはコンセンサスレーティングが基準未達となっています。そのほかは、ノーリツ鋼機が10%以上の上昇となるなど、株高によって配当利回りが相対的に低下する形となりました。
新規ランクイン銘柄では、DICは8月8日に2025年12月期の大幅増配(100円→200円)を発表していますが、これがアナリスト予想に反映されたものとみられます。
MS&ADやセイノーHDは株価下落により、相対的に利回り水準が上昇しました。オープンアップは株価の下落に加えて、2026年6月期の増配計画(75円→85円)も配当コンセンサスの切り上がりにつながったと考えられます。
アナリストコンセンサスと会社計画の配当予想で乖離が大きいのは、 東洋建設(1890) 、 愛三工業(7283) 、DIC(4631)となります。
東洋建設に関しては現在、大成建設が完全子会社化を目指して株式公開買い付け(TOB)を実施中です。TOB期間は9月24日までであり、TOBが成立した場合は上場廃止となりますので、当然配当金は無配になります。
愛三工業に関しては、会社計画ベースの配当利回りは3.86%の水準にとどまっています。
逆に、DICは会社計画ベースで5.46%の水準となります。2026年12月期に年間200円という高水準の配当が継続される可能性は低そうですが、あくまで2025年12月期をベースとした場合は、会社計画の利回り水準で見ることが妥当となります。
FOMC後は自民党総裁選が最大イベントに
9月16日から17日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、0.25%の利下げが決定しました。また、参加者による政策金利の見通しは年内2回の追加利下げを見込み、前回見通しよりも利下げのペースが上がっています。
ただし、パウエルFRB議長では、今回の決定を「リスクを管理するための利下げ」と総括したほか、0.5%の大幅利下げについて「広範な支持はなかった」と発言、タカ派的な側面も見受けられています。これを受けて米国市場ではナスダック指数が下落するなど、ハイテク株は売り先行の展開にもなりました。今後も出尽くし感は広がる余地があり、目先的には、米国ハイテク株安を通して、日本株もいったんの調整を想定する必要性が高いと感じます。
また、10月4日には自民党総裁選の投開票が行われます。5人の立候補が想定されていますが、現状では小泉進次郎氏、高市早苗氏の一騎打ちとの見方が優勢になっています。ここまで石破首相の退陣自体が株高材料とされましたが、積極財政派とされる高市首相が誕生すれば、一段の株価上昇も想定されることになります。総裁選は米FOMC後の最大のイベントと言えそうです。
(佐藤 勝己)