読者の方から「(株の)売買タイミングが分からない。買ったら下がるし、売ったら上がる…」というお悩みが寄せられました。
私からのアドバイスを実践することで、売買タイミングの改善が期待できると思います。
【1】「かぶミニ®」を使って5回に分けて買う、5回に分けて売る
【2】損切りは早く、益出しは遅く
2025年も残すところわずかとなり、年末に向けて進んでいきます。これまでに実現益が出ているならば、「良い損切り」を検討する時期を迎えています。
個人投資家は「売り」が苦手?
個人投資家は「売り」が苦手といわれることがあります。実際、東京証券取引所(東証)が発表している「主体別売買動向」を見ると、「買い」は比較的うまくいっていますが、「売り」を苦手としている傾向が見られます。
トランプ関税ショック前後の売買を見ても、そのような傾向が確認できます。
<日経平均と個人投資家の日本株売買動向(株式現物と先物の合計、売越・買越):2025年3月24日~9月17日(個人投資家売買動向は9月5日まで)>

心理的「呪縛」が原因か
個人投資家の多くが売りを苦手とする理由の一つに、心理的な要因があります。それは、「利益確定はするが損切りはしない」という考え方です。その背景に、「利益確定売りは利益を確定させるから良いが、損切りは損失を確定させるから良くない」という、誤解があるようです。
そのため、少し値上がりした銘柄をすぐに売却してしまい、その後の大きな値上がりを取り損なうことがあります。また、保有株が「半値八掛け二割引」(株価が7割くらい下がる暴落を表す証券用語)になる間、ずっと持ち続けてしまう状況も見られます。
保有している株が下落した場合、売っても売らなくても、その時点において損失はすでに発生しています。実現損(売却損)であっても、評価損(保有株の含み損)であっても、どちらも損失であることに変わりありません。
私には25年の日本株ファンドマネージャー経験があります。20代で1,000億円、40代からは2,000億円以上の日本株ファンドを運用し、ベンチマーク(比較対象)である配当込み東証株価指数(TOPIX)を上回るパフォーマンスを上げてきました。
ファンドマネージャー時代の私はいつも、総合損益で評価されていました。つまり保有株が値下がりしたら、それを売却してもしなくても、その時点でパフォーマンス上は、マイナス影響がすでに発生していました。
私が運用していた年金ファンドも投資信託も、総合損益で評価されていました。保有株が値下がりすれば、売っても売らなくても毎日計算される基準価額において、マイナス影響が出るのは同じでした。
ファンドマネージャー時代に何万回というトレードをしてきましたが、私が株を売るとき、それが「利益確定」であるか「損切り」であるか、ほとんど意識することはありませんでした。
いつも「良くない銘柄を売って良い銘柄を買う」ことしか考えていませんでした。何を売るかより、何を残すかが重要だと考えていました。ポートフォリオから悪材料の出た銘柄を外し、良い銘柄に入れ替えることを、毎日考え、続けてきました。
個人投資家の方には、買った銘柄が値下がりしたら、売り判断ができなくなる人が非常にたくさんいらっしゃいます。
売買が上達するための二つのアドバイス
それでは、私から、日本株の売買上達に役立つ二つのアドバイスを具体的に解説します。
【1】5回に分けて売る、5回に分けて買う(「かぶミニ®」を使う)
【2】悪い銘柄は早く売る、良い銘柄は簡単に売らない(損切りは早く、益出しは遅く)。年末には税金対策で損切り検討
最初のアドバイス【1】は特に重要です。個人投資家は、逆張り売買(下がってきた銘柄を買う、あるいは、上がってきた銘柄を売る)が多いからです。
逆張り売買で、一発で全て売買するのはリスクがあります。買った後さらに大きく下がったり、売った後さらに大きく上がったりする可能性があります。そうなってもいいように、複数回に時間分散しながら買いまたは売りを行うように努めましょう。
5回というのは目安で、2~3回でも良いと思います。時間分散しながら売買するだけで、売買タイミングはかなり改善が期待できます。
楽天証券の「かぶミニ®」を使えば、日本株を1株から売買できるので、「5回に分けて買う、5回に分けて売る」が手軽に行えます。これまで、買うときも売るときも100株単位でやっていた方は、これからは「かぶミニ®」を使って1株単位で売買する習慣を身につけることをおすすめします。
かつて日本株は100株からしか買えませんでした。そのため株価1,000円で買える銘柄ならば最低でも10万円(1,000円×100株)ないと投資できませんでした。100株買うだけでかなりの金額なので、「5回に分けて買う、5回に分けて売る」が困難でした。
「かぶミニ®」ならば1株1,000円から売買が可能です。1株保有しているだけでも、株数に応じて配当金を受け取ることもできます。いろいろな高配当利回り株に分散投資することが可能です。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で投資することもできます。
私がファンドマネージャー時代、新しく銘柄を買い始めるとき、一度に全て買ってしまうことは絶対にありませんでした。もし、ファンドで1%買おうと思っているならば、まず0.3%くらい買います。その後、少しずつ買い増ししながら1%に近づけていきました。
そうする間に株価も変動しますし新しい情報も入ってきます。株価が下がり続ける場合は、安いところで買い増しできます。
アドバイス【2】も重要です。以下、年末の「良い損切り」について説明します。
年末が近づいたときに確認いただきたいこと
2025年ももう9月となりました。年末が近づくときに、確認いただきたい数字があります。今年、特別口座などの課税口座で、実現益がどのくらい出ているかチェックしてください。累計で実現益が多いですか、あるいは実現損の方が多いですか?
日本株も米国株も上昇しているので、課税口座で保有株の売却をした方は、今年は実現益が出ている方もいるのではないでしょうか。そういう方に、今一度、保有株のチェックをお勧めします。我慢して保有している含み損の銘柄はありませんか? そういう銘柄は「良い損切り」を検討することをお勧めします。
今、日本株または米国株で、20%以上の含み損をかかえた銘柄を保有していませんか? 日経平均株価も米S&P500種指数(S&P500)も史上最高値圏にある中で、20%以上の含み損のある保有銘柄は、継続保有が適切でない銘柄である可能性も考えられます。これまでに実現益が出ているならば、その範囲で、そのような銘柄の損切りを検討されることを推奨します。
良い損切りとは
改めて、お伺いします。今年、皆さまの課税口座での株の売買損益、利息・配当金などを通算して、実現益が出ていますか? 実現益が出ている場合に、年末にかけて損切り売りをすることに、二つのメリットが期待できます。
【1】継続して保有すべきでない銘柄を売却できる。
【2】実現益を減らせる可能性がある。
今年、日本株の売買で累計30万円の実現益を得ているとしましょう。課税口座で分離課税を選択していると、約20%(復興所得税を入れると20.315%)の源泉所得税が差し引かれています。つまり、約6万円の源泉所得税が差し引かれています。
ここで、30万円の含み損のある銘柄を保有しているとしましょう。これを売って、実現損30万円を出すと、今年の累計損益を、ほぼゼロにすることができます。そのまま年末を迎えれば、源泉所得税で差し引かれていた6万円を取り戻せる可能性があります。
問題を抱える銘柄の保有を解消することに加え、損益通算のメリットも享受できます。
なお、注意してほしい点として、NISA口座で損切り売却をしても、損益通算はできません。特別口座などの課税口座で損切りしたときだけ、損益通算の対象となります。以上は、極めて簡略化した説明である点に注意してください。
2000億円超を運用した伝説のファンドマネージャーの株トレ
最後に、テクニカル分析を基礎から書籍で勉強したい方に、私がダイヤモンド社から出版した「株トレ」をご紹介します。
「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ」

私が25年の日本株ファンドマネージャー時代に得たテクニカル分析のノウハウを初心者にも分かりやすく解説しています。クイズ60問を解いて、トレーニングする形式です。株価チャートの見方が分からなくて困っている方にぜひお読みいただきたい内容です。
(窪田 真之)