FOMCは今週利下げを決定して、さらに年内追加利下げを示唆している。ドル/円はすぐに148円近くまで円安に戻している。
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは148.70円↓下値メドは146.85円トランプ関税:ある国の製品を「ボイコット」するかどうかは、代替品が入手可能かどうか、消費者がどの国で生産された製品を購入するかを知っているかどうかにも左右される
ドル:準備通貨としての地位を失えば、外国中央銀行は米債を保有する必要がなくなる
マクロ経済:消費者物価の大半は、生産後の国内付加価値が層をなしたものである
カナダ:カナダ年金ファンドがドルのエクスポージャーを縮小方向で見直し
NZドル:RBNZ「一段の利下げ余地ある」
前日の市況
米連邦公開市場委員会(FOMC)が今週利下げを決定したことを受けて、一時145円半ばまで急落したドル/円だが、早くも148円台に戻っている。
これは、FOMCの結果がマーケットを十分に満足させるほどハト派的ではなかったせいだ。新たに米連邦準備制度理事会(FRB)理事に就任したトランプ大統領側近のミラン理事を除き、0.25%を超える利下げへの賛成意見はなかった。今後の利下げについても、FRBは自動運転ではなく、従来同様「データ重視型」のアプローチで進めることを明らかにしている。
9月の決定はすでに完全に織り込み済だった上に、今後の利下げペースも加速していないことが確認された。ドットチャートに惑わされたところがあるが、よく見るとハト派サプライズはなかったことが分かる。
さらにこの日発表された9月フィラデルフィア連邦準備銀行製造業景気指数や新規失業保険申請件数がいずれも良好な内容で、大幅利下げが不要との見方を強める中で米長期金利が強含み、ドル買い戻しを強めた。
FOMCの利下げを受けてポジションをドル安方向に傾けたマーケット参加者にとってはとてもストレスのある相場だ。本日の会合で日本銀行が早期利上げに言及するならば、ドル安/円高が再開する可能性がある。あるいは来月の雇用統計まで146.50円から149.50円をまだしばらく続けることになるかもしれない。

9月18日(木曜)のドル/円相場の終値は、前日比0.99円「円安」の148.02円。1日のレンジ幅は1.50円だった。
2025年187営業日目は146.92円からスタート。
レジスタンス:
149.14円 09/03
148.78円 09/04
148.58円 09/08
148.17円 09/11
148.27円 09/18
サポート:
146.77円 09/18
145.48円 09/17
144.22円 07/07
144.18円 07/04
143.44円 07/03
主要指標 終値

今日の為替ウォーキング Time Is On My Side
今日の一言
人は誰でも足跡を残す。影のない人間はいない
Time Is On My Side
見た目以上に強気なパウエル議長FOMCは、9月16~17日に開催された会合において、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%幅引き下げると決めた。これにより、米国の政策金利は4.00~4.25%となる。利下げは昨年12月以来で、6会合ぶり。
今回の利下げは、米国の景気の減速感と雇用の鈍化が背景にある。月10万人程度の就業者が景気の分かれ目といわれる中で、8月雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)はわずか+2.2万人にとどまった。3カ月平均も+2.9万人と鈍化傾向が明らかになっている。
一方でインフレ率は依然としてFRBの目標を上回るものの、コア消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%と横ばいで落ち着いていることから、トランプ関税の影響はまだ限定的と判断した。
FOMC参加者による政策金利の見通し(中央値)によると、年内残り2回の会合で、計2回の追加利下げが見込まれている。さらに2026年、2027年もそれぞれ1回ずつの利下げが予想されている。

しかし、同日公表した同じFOMCメンバーによる先行き3年間の経済見通し(SEP)は、金利予想に反してはるかに強気の予想となっている。
経済成長率を見ると、今年は1.6%と見込んでいるが、来年度は1.6%から1.8%へ、2027年は1.8%から1.9%へ、それぞれ引き上げられた。失業率は今年末に4.5%まで上昇したあと、来年は4.4%、さらに4.3%へと低下する。コアインフレ率は、2025年3.1%、2026年2.6%、2027年2.1%と、徐々に低下を見込んでいるが、2年後もFRBの目標2.0%は達成できないようだ。
経済成長が加速し失業率は低下する一方で、インフレ率が下がらないとの予測をしながら、今年さらに2回利下げするというのは、政策と予想に矛盾があるように思える。
この点に関してパウエルFRB議長は記者会見で、大幅かつ急な金融緩和が必要なほど、経済が悪化しているわけではないが、労働市場が減速しており、FRBがそれ以上の減速を望まないから、マンデートの重点をインフレ(物価安定)から雇用寄りに移したと説明した。
とはいえ、インフレも問題であり、関税のコストを負担するのは輸出業者ではなく、米国の消費者になるだろうと懸念を持っている。

トランプ関税が物価上昇につながっている確かなサインがあるにもかかわらず、今回利下げに至ったのは、労働市場の減速が今後も続くリスクがある中で、「金融政策の引き締め幅を縮小する」ことが適切であるという判断によるものである。
パウエル議長は、金融政策を調整する、あるいはしないことが、FRBのマンデートのいずれかに対して簡単に悪影響を及ぼす可能性がある中で、今回の利下げは「リスクコントロール」のために行ったと説明した。つまり、雇用と物価のバランスをとるための調整だということだ。
確かに、ドットチャートではFOMCメンバーが米経済に対してかなり悲観的な見通しをもっている印象を与えるが、これは1名の理事が今年に合計1.5%の利下げ(0.5%×3回)を行うべきだと主張しているせいだ。この極端な意見を除けば、FRBは、中立金利か、それをわずかに上回る水準への回帰をガイダンスしているに過ぎない。
今回の利下げは、金融緩和の始まりではなく、やや高すぎる金利を調整するのが目的であるというのがパウエル議長のメッセージである。
(荒地 潤)