今週の株式市場は強気ムードですが、株価上昇は一部の銘柄に依存し、中東情勢の緊迫化に伴うリスクを回避した資金が集中している格好です。もっとも事態の長期化懸念と共に短期の収束期待も存在し、ここ数週間がヤマ場と思われます。

来週には米主要企業の決算発表も控えており、重要な局面を迎えそうです。


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最高値更新も、株価指数の動きにはバラツキ

 今週の株式市場ですが、22日(水)の取引で日経平均が最高値を更新したほか、米国株市場でも、S&P500やナスダック総合が最高値を更新するなど、「最高値」をキーワードに強い動きを見せている印象となっています。日経平均に至っては、翌23日(木)の取引開始直後に6万円の大台に乗せる場面もありました。


 とはいえ、国内外の株価指数を比較して眺めるとバラツキも見られ、必ずしも、最高値の更新が「新たな相場局面入り」を感じさせるものにはなっていないようです。


<図1>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年4月23日時点)※欧米市場は2026年4月22日時点
中東情勢への株式市場の楽観は正しいのか?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを元に作成

 図1は、当レポートでお馴染みになっている、2025年末を100とした国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較ですが、TOPIXや香港ハンセン指数のように足元で軟調となっているものや、上昇してはいるものの、日経平均やナスダック総合ほどの勢いがないものなどが確認できます。


 4月17日のレポート「相場の強気はいつまで大丈夫?カギは「米IT決算」と「リスクの再点検」」や、4月20日のレポート「日経平均6万円台の可能性は?上昇継続のカギを握る銘柄と注意点」でも指摘していたように、足元の株価上昇は、旺盛なAI需要を背景とした、AI・半導体関連(データセンター関連含む)などの一部の銘柄によって牽引されている面が強く、その影響を受けやすい日経平均やナスダック総合の上昇が目立っている格好です。


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2026年4月17日: 相場の強気はいつまで大丈夫?カギは「米IT決算」と「リスクの再点検」(土信田雅之)
2026年4月20日: 日経平均6万円台の可能性は?上昇継続のカギを握る銘柄と注意点


中東情勢とAI・半導体関連銘柄の強さの関係

 一部の銘柄に偏った株価上昇については、「ぶっちゃけ、どうなのよ?」というネガティブな見方があり、相場上昇の危うさをイメージさせますが、反対に、「買える銘柄の存在が株式市場を支えている」といったポジティブな見方もできます。


 実際に、中東情勢の影響で、多くの企業がコスト増や需要減、供給のリスクにさらされている一方、足元の市場を牽引しているAI・半導体関連については、「中東情勢は無関係ではいられないものの、活発なAI投資を背景にした需要がリスクをカバーする」として、消去法的に資金が集中している構図が読み取れます。


 実際に、22日(水)時点の米国株市場においても、半導体関連銘柄で構成される株価指数(SOX指数)が15日連続で上昇しており、その流れが日本株市場にも波及し、関連銘柄の株価を押し上げてきました。


<図2>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年を100)(2026年4月22日時点)
中東情勢への株式市場の楽観は正しいのか?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを元に作成

 図2は米主要株価指数のパフォーマンスを比較したものですが、SOX指数の強さが際立っていることが分かります。


 ただ、こうしたAI・半導体関連株の上昇も、「米国とイランが早期の終結に向けて動いている」という期待を前提にしている点には注意が必要です。


中東情勢に対する株式市場の楽観は正しいのか?

 債券市場では米10年債利回りが4.3%水準で推移しているほか、米原油先物市場でWTIなどの価格を見ても、米国とイランの戦闘開始前の水準と比べてもまだ高く、現在も少なからず中東情勢への不安や警戒感が反映されています。


 それと比べると、株式市場については、一部の株価指数が最高値を更新するなど、楽観ムードが強い印象です。


 4月17日のレポートでは、歴史的に見た戦争から和平へのプロセスから、今回の米国とイランの和平のハードルが意外と高い可能性について指摘しました。


 軍事衝突を経て優劣が決した状態で臨む交渉では、戦勝国が有利な条件を敗戦国にのませて合意に達することが可能ですが、明確な優劣が出ていない場合の和平交渉では、基本的に双方が譲歩し、「痛み分け」で折り合えるかどうかが焦点になります。


 今回の米国とイランの交渉については、お互いの主張がぶつかりあっている状況が続き、停戦期間が延長されているものの、現時点で次の協議の段取りが決まっていません。


 少しでも有利な条件を受け入れさせるため、米国によるホルムズ海峡の逆封鎖や、イラン側のタンカー襲撃などが発生しており、最悪の場合、再び本格的な戦闘や軍事作戦が始まってしまうことも考えられます。


 こうした歴史的な視点では、足元の株式市場が見ているほど事態は甘くないと言えますが、それでも、株式市場が事態を楽観的に捉えている背景には、「早期の終結」シナリオも考えられるからだと思われます。


 確かに、「TACO(Trump Always Chickens Out = トランプはいつもビビッて退く)」という思惑だけでは根拠が乏しいですが、それ以外にも、米国・イラン双方で「長期化を避けるために、早い段階で譲歩・妥協する可能性が意外と高いのでは?」という見方があります。


米国もイランも「長期戦」は難しいというシナリオ

 まず、米国側から見ると、来月(5月)半ばにはトランプ米大統領が中国を訪問し、習近平主席と会談する予定です。


 中国は世界最大の原油輸入国であり、中東の不安定化による価格高騰が経済に与える影響が深刻となるため、トランプ米大統領としては、中東情勢を収束させることで中国にエネルギー安全保障の「貸し」を作ることが可能になります。


 また、国内政治の面でも7月4日の独立記念日や11月の中間選挙が控える中、ガソリン価格をはじめ、米国内の物価を安定させる必要があることや、支持率アップのための政策を行う時間や余力の確保を考えると、事態の長期化は避けたいところです。


 一方のイラン側についても、あまり時間を掛けられない可能性があります。


 その理由が「原油の貯蔵能力」です。イランの原油貯蔵タンクはすでに満杯に近い状態にあると報じられており、ホルムズ海峡の封鎖状態が続けば、輸出できない原油があふれ、物理的に生産を止めざるを得なくなります。原油貯蔵タンクが満杯になるのが数週間以内という予測もあるようです。


 イランの主要油田は、アハワズ、マアルンなど、発見から数十年が経過した「成熟油田」が多く、いったん生産を停止してしまうと、地下の油層圧力が低下し、再び原油を汲み上げるためにガス圧注入などの高度な作業が必要になります。


 さらに、長年の制裁によって最新の採掘や維持管理の技術や交換部品が不足しており、生産を止めてしまうと、簡単に元に戻せなくなってしまう可能性があります。


 そのため、米国もイランも長期戦を避けたいと思われますが、とりわけ、原油生産の停止を回避したいイランが譲歩してくるというのが、「早期の終結」シナリオとなります。


 そのため、中東情勢はここ数週間の動きが、事態の早期終結か長期化のヤマ場になると思われ、双方の動きが活発になってくることが予想されます。


来週の米企業決算がカギ

 実際のところ、ホルムズ海峡の封鎖が完全に解けていない現状を踏まえると、事態の長期化に伴って、資源価格や供給網(サプライチェーン)への悪影響が深刻化する懸念がくすぶっていることに警戒する必要がある中、来週からは足元の株高を牽引してきた、関連企業の決算発表も相次ぎます。


<図3>来週の主な米国企業の決算予定(2026年4月22日時点)
中東情勢への株式市場の楽観は正しいのか?(土信田雅之)
出所:Bloombergデータを元に作成

 とりわけ、米国ではM7(マグニフィセントセブン)のうち、 マイクロソフト(MSFT) や アマゾン・ドット・コム(AMZN) 、 メタ・プラットフォームズ(META) 、 アルファベット(GOOG) 、 アップル(AAPL) が決算を発表するほか、半導体メモリ・ストレージ関連の シーゲイト・テクノロジー(STX) や サンディスク(SNDK) 、 ウエスタン・デジタル(WDC) 、そして、プライベートクレジット(PC)問題で注目された アレス・マネジメント(ARES) の決算も控えています。


 決算内容によっては、強気の見通しで株価の一段高もあり得る一方、「材料出尽くしの売り」や、国内大型連休を控えた、「いったんの手仕舞い売り」が出てくることも考えられます。


 そのため、先週に続き、「株価が上昇しても、必ずしも相場が強いとは限らない」という意識は持っておく必要がありそうです。


(土信田 雅之)

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