今年1月下旬をピークに、プラチナ価格が上昇しなくなっている、と述べる市場関係者と雑談をする機会がありました。短期的にはそのような傾向はあるかもしれませんが、長期資産形成に資する長期視点では、決してそのようなことはないと、筆者は考えています。
プラチナはこの1年で2倍以上に
図1は、今年(2026年)4月1日と、4月24日の終値を比較した、短期視点の騰落率です。イラン戦争が勃発した2月28日からおおむね1カ月が経過したタイミングから、足元までの動きを示しています。
図1:主要銘柄の騰落率(短期)(2026年4月1日と4月24日の終値を比較)
同戦争の激化をきっかけとして高まった需給ひっ迫感により高騰した原油価格や、高騰した原油価格を見て高まったインフレ懸念・米国の利下げの温度感低下を受けて上昇したドル指数が、それぞれ反落しました。
一方、主要な株価指数が大きく上昇しました。日経平均株価が6万円到達したり、S&P500種指数が7,000ポイントに到達したり、ダウ工業株30種平均が5万ドルに回復するなど、日米の株価指数の上昇が目立ちました。こうした株価指数の上昇が生んだ景況感の改善期待が需要増加観測を大きくし、銅価格も上昇しました。
貴金属相場は、明暗を分けました。大きく上昇した株価指数との対比で下落圧力がかかった金(ゴールド)の価格は、戦争(有事ムード)が継続していたり、ドル指数が反落していたりしていても、下落しました。
プラチナと銀の価格は、上昇しました。産業用の需要が多いこれらの貴金属(後述します)は、銅と同様、株価指数の上昇が生んだ景況感の改善期待が需要増加観測を大きくしたと、考えられます。
4月1日からここまでのおよそ1カ月間は、原油高・株価指数安となった同戦争勃発直後の1カ月とは大きく異なる展開だったと言えます。
図2は、昨年(2025年)4月1日と、今年(2026年)4月24日の終値を比較した、中期視点の騰落率です。
図2:主要銘柄の騰落率(中期)(2025年4月1日と4月24日の終値を比較)
本レポートのテーマであるプラチナについては、短期視点でも中期視点でも上昇しています。株価指数が上昇しているときにプラチナの価格は上昇しやすい、なおかつ、同時に金(ゴールド)価格が上昇している時は、上昇の規模はより大きくなる、という傾向が見て取れます。
プラチナ価格は長期上昇の途中
図3は、長期視点の金(ゴールド)とプラチナの価格推移を示しています。2025年4月ごろから、プラチナの価格上昇が目立ち始めました。
トランプ氏が米大統領に就任したことを機にトランプ関税の導入などで有事のムードが生じたこと、同大統領が米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)に対して利下げを要求したことを受けてドル安ムードが強まったことなどにより、金(ゴールド)価格の上昇トレンドがより鮮明になりました。
貴金属のメインの銘柄である金(ゴールド)の価格上昇は、プラチナの価格上昇の一因になったと言えます。さらには、上昇に拍車がかかった金(ゴールド)価格に対する割安感が意識されたことも、価格上昇の一因になったと言えます。
図3:ドル建てプラチナ、金(ゴールド)価格推移(月次平均) 単位:ドル/トロイオンス
プラチナ固有の価格上昇要因もありました。短中期視点の上昇要因に、トランプ米大統領がFRBに対して「予防的利下げ」を要求したことを受けて株価指数が反発し、産業用需要の増加観測が浮上したことや、トランプ関税導入によりプラチナの物流への懸念が生じたことなどが挙げられます。
中長期視点の上昇要因に、トランプ米大統領が化石燃料の使用を推奨するムードを強めたことを受けて内燃機関(エンジン)を搭載した自動車向けのプラチナ需要(後述します)がさらに増加する可能性が生じたこと、フォルクスワーゲン問題の発覚(2015年9月)以降、急減するといわれた自動車排ガス浄化装置向け需要が回復しつつあり、複数の機関が今後も回復する見通しを示したこと、電気自動車(EV)一辺倒だった欧州で化石燃料を使用する自動車を容認する動きが出始めたことなどが挙げられます。
超長期視点の上昇要因に、トランプ氏の米大統領就任により世界分断に拍車がかかり、資源の武器利用が横行する懸念が強まったことなどが挙げられます。
振り返ってみれば、2025年4月ごろから、金(ゴールド)価格の上昇がさらに目立ち始め、同時に短中期・中長期・超長期のプラチナ固有の価格上昇要因が大きくなり始めました。図4はこうしたプラチナを取り巻く環境のイメージ図です。
図4:ドル建てプラチナ価格の変動イメージ(2026年4月時点)
プラチナの希少性と用途に注目
図5は、主要な四つの金属の鉱山生産量を示しています(プラチナの生産量を1として比較)。ベースメタルと呼ばれる汎用性が高い銅の鉱山生産量は大変に多い一方、貴金属と呼ばれる金(ゴールド)、銀、プラチナの同生産量は大変に少ないことが分かります。
図5:主要四金属の鉱山生産量比較(2025年)(プラチナの生産量を1として比較)
貴金属の中でも、特にプラチナの鉱山生産量が少ないことも分かります。この点が、しばしば「プラチナは特に希少性が高い」といわれるゆえんです。
こうした金属の需要の内訳を確認します。図6のとおり、金(ゴールド)以外は産業用の需要の割合が大きいことが分かります。プラチナについては、需要全体の40%以上が自動車の排ガス浄化装置に用いられています(2025年)。
同需要の動向については、先ほど述べた2025年4月ごろから目立ち始めた上昇要因の内、短中期視点の予防的利下げ要求→株価指数反発→産業用需要の増加観測、中長期視点の化石燃料の使用を推奨→エンジンを搭載した自動車の需要増、フォルクスワーゲン問題の発覚により急減するといわれた自動車排ガス浄化装置向けの需要回復→複数の機関がさらなる回復見通しを示す、EV一辺倒だった欧州で化石燃料を使用する自動車を容認する動きが出始めた、などの動きに関わっています。
図6:主要四金属の需要内訳(2025年、銅は2024年)
産業用の需要の割合が大きいことは、景気動向やそれとともに動く傾向がある主要な株価指数の動向に連動しやすいことを示唆しています。この点が、冒頭の図1、および図2で主要な株価指数とプラチナの価格が同時に上昇していることの根底にある要素です。
金(ゴールド)価格も長期上昇か
図7は、短中期・中長期・超長期、いずれの時間軸でも、プラチナ価格の動向に影響を与え得る金(ゴールド)価格の変動イメージです。株価指数の動向に追随する傾向があると同時に、同じ貴金属に分類され、その分野の最主力銘柄である金(ゴールド)の価格動向もまた、プラチナの価格動向に影響を与えることがあります。
図7:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ(2026年4月)
その金(ゴールド)の価格変動に影響を及ぼし得るテーマにおいても、プラチナと同様、短中期・中長期・超長期、三つの時間軸に分けることができます。
短中期は、伝統的な有事(有事の金(ゴールド)買い)、代替資産(株と逆相関)、代替通貨(ドルと逆相関)の三つです。過去半世紀の主に前半で生まれた「有事の金(ゴールド)」や「逆相関」は、現在は短中期的なテーマに収まっていると言えます。
中長期は、宝飾需要、鉱山会社、中央銀行の三つです。近年は特に中央銀行の動向が、金(ゴールド)価格の長期視点の上昇トレンドを支えていると考えられます。
中央銀行による金(ゴールド)の買い越しが2010年以降、長期視点で継続していること、リーマンショック後(2010年ごろから顕著に)、主要な中央銀行が通貨の供給量を急増させたことなどが、中央銀行がもたらす金(ゴールド)価格の長期視点の上昇トレンドを支える要因になっています。
2010年は、図8のとおり、世界の自由度・民主度が急低下し始めたタイミングでした。自由民主主義指数は、V-Dem研究所(スウェーデン)が、法の支配、選挙・裁判の仕組み、言論の自由など、自由度・民主度を測る上で欠かせない多数の要素を用いて算出した指数です。
図8:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
以前の「新社会人のみなさんが獲得すべき、インフレ・カオスの世界を生きるコツ」で述べたとおり、2010年ごろは、SNSやAI、ドローンなどのハイテクのマイナス面と人気取りを意味するポピュリズムによって、思惑(期待・懸念)が重視される世界が形成され始めたタイミングです。
▼以前のレポート
新社会人のみなさんが獲得すべき、インフレ・カオスの世界を生きるコツ
実態よりも思惑が重視される世界では、世界全体として民主主義が後退したり、分断が深化したりします。そして、それによって資源武器利用が横行したり、長期インフレが継続したり、通貨の不確実性が高まったり、株高への不安が大きくなったりします。
こうした、2010年ごろ以降に目立ち始めた新しいタイプの有事は「非伝統的な有事」だと言えます。
2010年ごろから目立ち始めた非伝統的な有事は、金(ゴールド)価格を長期視点で支える「土台」のような存在であると言えます。
思惑(期待・懸念)が重視される世界がなくならない限り、この土台は存在し続けると筆者は考えています。それはつまり、同じ貴金属に分類されるプラチナの価格も、長期視点で支えられる可能性があることを意味します。
プラチナ固有の材料にも長期上昇の芽
図9は、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移を示しています。先ほど述べたとおり、同需要の動向については、2025年4月ごろから目立ち始めた複数の短中期・中長期視点の上昇要因に関わっています。
図9:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス
フォルクスワーゲン問題が発覚し、多くの市場関係者は同需要が急減すると述べましたが、統計では急減は確認できませんでした。新型コロナショック(2020年)に一時的に大きく減少したものの、その後は北米、中国、インドなどの需要が増加し、全体としては同問題発覚当時とほぼ同等の水準に達しています。
同需要が減少する過程で、同問題によってフォルクスワーゲン社の主力車種であるディーゼル車否定→自動車排ガス浄化装置向けのプラチナ需要減少、環境・社会・企業統治(ESG)推進によるエンジン搭載車否定→自動車排ガス浄化装置向けのプラチナ需要減少というシナリオが述べられていました。
近年の同需要の回復の背景には、ESGよりも短期視点の経済発展を優先する新興国における需要増加や、トランプ米大統領が化石燃料の使用を推奨するムードを強めたこと、EV一辺倒だった欧州で化石燃料を使用する自動車を容認する動きが出始めたことなどが挙げられます。
今後、こうした動きが加速すれば、同需要は2015年の水準を超えて、大きく増加する可能性があります。
また図10のとおり、プラチナの鉱山生産量は2010年ごろ以降、減少傾向にあります。SNSやAI、ドローンなどのハイテクのマイナス面とポピュリズムによって、思惑(期待・懸念)が重視される世界が形成され始め、「非伝統的な有事」が拡大しはじめたタイミングとほぼ同じです。
非伝統的な有事の拡大は、資源の武器利用を加速させる要因になり得ます。プラチナの鉱山生産量が減少していることと、世界全体として同有事が拡大していることは、無関係ではないと筆者はみています(トランプ米大統領は、こうした流れに拍車をかけていると考えられます)。
図10:プラチナの国別鉱山生産量(5年間の平均) 単位:千オンス
長期視点の需要増加要因・供給減少要因を併せ持つプラチナは、長期視点の金(ゴールド)価格の上昇トレンドに追随する形で、上昇する可能性があると筆者は考えています。短期視点の値動きやテーマに関心が移りやすい中でも、しっかりと、長期視点の値動きやテーマに注目し続けるとよいと思います。
[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例
純金積立
純金積立・スポット購入
投資信託
三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)
中期:
関連ETF
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GX ゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
短期:
商品先物
国内商品先物
海外商品先物
CFD
金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム
(吉田 哲)

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