ゴールデンウイーク間に日本政府による為替介入が実施、さらに訪日したベッセント米財務長官の介入容認によるやや円高進行となっています。しかし、イラン情勢や原油高など先行きが不透明な中、上値が重い状況が続いています。

まだしばらくは様子見相場が続きそうです。


ベッセント米財務長官の訪日と為替介入で円高進行。まだまだ様子...の画像はこちら >>

ベッセント米財務長官の訪日。為替介入と日米財務相会談の影響は

 日本のゴールデンウイークの間に日本政府は為替介入(ドル売り・円買い介入)を数回実施したようです。4月30日の5兆円規模とみられる円買い介入によって、ドル円は160円台から155円台の円高に行きました。その後5月1~6日の間に、158円に近づくと数回の円買い介入が見られたようで、規模は5兆円弱といわれています。


 4月30日の介入の後には、米財務省報道官が「日本の財務省と緊密に連絡を取り合っている」とコメントしたこともあって、イラン情勢が不透明な中、ドル円は158円と重い状況が続いています。


 先週8日(金)に発表された米4月雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が+11.5万人と予想(+6.2万人)を大きく上回りました。しかし、平均時給(前月比)が+0.2%と予想(+0.3%)を下回ったことから米金利が低下し、ややドル売りとなりましたが、総じて強弱まちまちの内容だったため、市場の反応は限定的でした。


 ドル高となったのは、米雇用統計よりもイラン情勢でした。週末にイランが米国の和平提案への回答をパキスタンを通じて提出しましたが、トランプ米大統領がイランの回答を「全く受け入れられない」とSNSに投稿したことから、週明けに原油は上昇し、ドル高となりました。


 ドル円は157円台に乗せましたが、157円台は介入警戒感が強まっていることやベッセント米財務長官の訪日を控えていたこともあり、やはり上値は重たい状態でした。


 訪日したベッセント米財務長官から、実施した介入についての評価や日本銀行の利上げなど、為替相場に関してどのような内容が言及されるのか、市場は警戒していますが、従来と同じ内容の場合は、逆に円売りに反応する可能性もあるとの見方もありました。


 12日、ベッセント米財務長官は片山さつき財務相と会談しました。片山財務相は会談後の記者会見で「足元の為替動向について、日米でよく連携できていることを確認した」と述べ、「共同声明に沿ってしっかり連携していくことを確認し、全面的に理解を得た」と強調しました。


 共同声明とは、日米が昨年9月、為替レートが過度に変動したり、無秩序な動きをしたりした場合は、為替介入も可能との見解を取りまとめた声明です。


 そしてベッセント米財務長官は、日本の為替介入に対して記者団から聞かれ、「過度な為替の変動は望ましくないという点で日本と認識を共有している」と答え、日本の為替介入を容認する姿勢を見せました。また、「財務省と緊密な対話を継続していく。日本経済のファンダメンタルズは強固で、それが為替レートに適切に反映されていくと考えている」とも述べました。


 また、日銀の金融政策については、片山財務相は、会談で金融政策が議論になったかと聞かれると「日銀との関係があるので申し上げられない」と明言を避けました。ベッセント米財務長官は「植田和男総裁が適切な金融政策運営へ導くと全面的に信頼している」と語りました。そして日本の金融政策について高市早苗首相に何かしら要望したか問われると、「No」と否定しました。


 今回の日米両財務相の発言から、日米は現在の市場状況を認識しており、共同声明に沿って米国は為替介入を容認していることが伝わりました。市場を失望させる内容ではなかったと思われます。


 むしろ、日米が連携して動いているという姿勢を示し、市場に安心感を与える内容だったと考えられます。

これで円安がすぐに是正されるということではないと思われますが、少なくとも円安に対する抑制効果は高まったとみられます。


米国の介入容認で円高でも様子見相場が続きそう

 過去の米政権は為替介入に慎重な姿勢を示すことが多かったのですが、この1、2年は米長期金利の上昇や米国債離れを避けたい米国にとっては、円安は米国にとって不利益であるとの認識があるようです。


 つまり、円安による物価上昇は日銀の利上げを織り込む形で長期金利を上昇させる構図となっているため、日本の長期金利上昇による米長期金利の上昇への影響を避けたいとの思惑から円安抑制には理解を示しているものと思われます。


 現在のところ、日米株価は最高値を更新しており、ドル高となっています。また、イラン情勢による原油高の影響で、インフレ懸念から米長期金利は上昇していますが、トリプル安(米国売り)とはなっておらず、このような相場環境の中でも為替介入を容認した意味は大きいと思われます。


 ただ、日銀の金融政策の議論については、片山財務相は明言を避け、これまで日銀に対して後手にならないよう金融政策の正常化を要請していたベッセント米財務長官も「植田総裁を信頼している」との発言にとどめたのは気になるところです。既に要請していたため「信頼している」と圧力をかけたのかもしれません。


 12日に公表された4月27~28日開催の日銀の「金融政策決定会合における主な意見」では、「中東情勢の影響は見通し難く、今回は様子見せざるを得ない」との意見があった一方で、「中東情勢が不透明な状況が続いたとしても、次回以降での利上げの判断は十分にあり得る」との意見が確認されました。


 植田総裁も会合後の記者会見で、ホルムズ海峡が封鎖されたままでも「利上げ判断はあり得る」と述べています。市場の6月利上げ観測はまだ高まっていませんが、6月に入ってくると高まってくるかもしれません。


 一方、米国は12日に公表された米4月CPIが前年比で+3.8%とコアCPIも含め、前月も予想も上回ったため、年内の米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げは困難との見方が強まっており、FedWatchでは12月利上げ確率が約35%に上昇しています。


 11月の米中間選挙を控えているトランプ米大統領にとっては、物価上昇を抑制するために14日の米中首脳会談でイラン情勢にプラスとなるような成果を上げることができればよいのですが、足元を見られるような交渉はしないことが予想されるため、あまり期待はできないかもしれません。


 ドル円は、介入効果によって水準がやや円高になりましたが、イラン紛争の終結、原油低下とならない限り、まだ様子見相場が続きそうです。介入警戒感から円安も抑制されると思われますが、加えてイラン紛争の戦火拡大・激化も両国が望んでいないことから一段の原油高、ドル高も進まないことが予想されます。


 ただ、様子見状態が長引くと、原油高止まり状態も長引き、各国の物価や経済への悪影響が進むことが予想されるため、物価指標への反応には敏感になってくることが予想されます。それまではドル円も155~160円のレンジで推移しそうな気配です。


(ハッサク)

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