日本各地で老朽化したインフラの問題が顕在化しています。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、水道管や下水道管の老朽化が社会課題となっていることを改めて浮き彫りにしました。
道路、橋、水道管…老朽化する日本のインフラ
ここ数年の東京市場は、生成人工知能(AI)や半導体関連株が主役となっています。実際、世界中でAI向け投資が拡大し、それに関連する企業の株価も大きく上昇しています。一方で、日本国内に目を向けると、AIほど派手ではないものの、今後10年以上続く可能性があるテーマがあります。それが「インフラ更新」です。
2025年に埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没事故は、多くの人に衝撃を与えました。道路の下に埋設された下水道管の老朽化が原因の一つとして指摘され、改めて日本のインフラが抱える課題が注目されることになりました。
また、2024年の能登半島地震では、道路の寸断や上下水道の被害が復旧活動の大きな障害となりました。私たちは普段、道路や橋、水道などの存在を意識することはほとんどありません。しかし、それらが機能しなくなった瞬間、社会や経済活動は大きな影響を受けます。
日本では、高度経済成長期に整備されたインフラの多くが更新時期を迎えています。道路、橋梁(きょうりょう)、水道管、下水道、港湾施設、トンネルなどの中には、建設後50年以上経過するものが増えています。
今後は「新しく作る」こと以上に、「安全に維持する」「更新する」ことが重要な時代に入ろうとしています。今回は、そんな「老朽化する日本を支える企業」に注目してみたいと思います。
建設後50年超えが増加。インフラ更新需要高まる
戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、日本は世界でも有数のインフラ大国となりました。1964年の東京五輪を前後して新幹線や高速道路が整備され、その後も全国各地で橋や港湾、上下水道などの社会基盤が整備されてきました。
しかし、それらの多くは建設から半世紀以上が経過しています。国土交通省の資料によると、建設後50年以上となる道路や橋、トンネル、河川管理施設などの割合は今後さらに増加する見込みです。橋梁だけを見ても、全国に70万ある橋の多くが高度経済成長期に整備されましたので、2040年代には半数以上が建設後50年超となるとされています。
さらに問題なのは、人口減少と自治体財政です。高度経済成長期には人口増加を背景に新たなインフラを整備することが重視されました。しかし、現在は人口減少社会に入り、多くの自治体が厳しい財政状況に直面しています。
それでも、道路や水道などのインフラは止めることが許されません。
また、日本は世界有数の自然災害大国でもあります。地震、豪雨、台風などへの対応は避けて通れません。政府は「防災・減災、国土強靭(きょうじん)化」を重要政策として掲げており、道路や河川、港湾施設の耐震化や老朽設備更新を継続的に進めています。特に港湾施設は、南海トラフ地震への備えや物流機能維持の観点から耐震化需要が拡大しています。
半導体やAIのように技術革新によってテーマが変化する分野とは異なり、インフラ更新は社会そのものを維持するために必要な支出です。その意味では、一時的なブームではなく、長期的な投資テーマとして考えることもできるでしょう。
防災・減災、国土強靭化:「骨太の方針」で探る長期投資テーマのヒント
こうしたインフラ更新需要を考える上で注目したいのが、政府が毎年6月頃に公表する「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる「骨太の方針」です。骨太の方針は、その後の予算編成や政策の方向性を示す重要な文書であり、投資家にとっては中長期的な政策テーマを探るヒントにもなります。
近年の骨太の方針では、防災・減災や国土強靭化が継続的に重要課題として位置付けられてきました。特に能登半島地震や豪雨災害などを受けて、老朽インフラの更新や耐震化、災害対応力の強化は優先順位の高い政策分野となっています。
道路や橋梁、水道施設、港湾設備などの維持更新は、一度整備して終わりではありません。
社会インフラを支える高配当株5選
AIや半導体関連投資が「成長投資」である一方、国土強靭化は「社会を維持するための投資」と言えます。景気動向に左右されにくく、長期的な政策テーマとなる可能性がある点は投資家にとっても注目ポイントでしょう。
そうした視点から見ると、老朽化する日本を支える企業群は、中長期的な恩恵を受ける可能性があるテーマ株として注目できそうです。
なお、今回紹介する5銘柄は、予想配当利回りが4%を超える銘柄も少なくありません。AI関連株のような高成長期待銘柄とは異なり、インフラ更新関連株は安定したキャッシュフローを背景に株主還元を強化する企業も目立ちます。国土強靭化や社会インフラ更新という長期テーマに加え、高配当という魅力も併せ持つ点は個人投資家にとって注目ポイントと言えそうです。
銘柄名 証券コード 株価(円)
(5月26日終値) 予想配当利回り
(5月26日終値) 特色 ショーボンドHD 1414 1,266.5 ー% 老朽インフラ補修のトップランナー 五洋建設 1893 1,857 2.80% 港湾インフラ更新の中核企業 世紀東急工業 1898 1,419 5.29% 道路更新需要を取り込む舗装大手 栗本鐵工所 5602 1,369 4.38% 水道管更新の恩恵期待銘柄 横河ブリッジHD 5911 2,836 4.58% 橋梁更新需要の本命企業 (注)ショーボンドHDは2026年1月1日付で株式分割を実施し、2026年6月期の配当予想を単純合計できないため、配当利回りを非表示とする。
ショーボンドHD(1414)
橋梁やトンネル、高速道路など社会インフラの補修・補強工事が専門です。新設工事中心のゼネコンとは異なり、既存のインフラを長寿命化するためのメンテナンス分野に特化していることが最大の特徴です。
インフラを「作る」時代から「直す」時代へと移行するなか、同社の事業領域はまさに時代のニーズと重なります。国や自治体向け案件も多いことから、インフラ更新関連の代表銘柄として注目されています。
五洋建設(1893)
国内有数のマリコン(海洋土木会社)で、港湾や空港、海上インフラ工事に強みを持っています。港湾施設の老朽化が進む一方、防災や物流機能強化の観点から更新・耐震化需要も高まっています。
国土強靭化政策では道路や橋梁だけでなく港湾インフラの機能維持も重要テーマとなっており、同社はそうした分野を支える代表的な企業です。国内外で豊富な施工実績を持ち、中長期的なインフラ投資拡大の恩恵が期待されます。
世紀東急工業(1898)
道路舗装工事が主力事業です。道路は一度整備すれば終わりではなく、交通量や気象条件によって定期的な補修や再舗装が必要となります。近年は豪雨や地震など自然災害への備えに加え、老朽化した道路インフラの更新需要も高まっています。同社は全国で舗装工事や維持補修工事を手掛けており、公共工事との関係も深い企業です。
国土強靭化政策が進むなかで、道路の長寿命化や防災対策工事など継続的な需要が期待されることから、「作る」よりも「維持する」時代を象徴する銘柄の一つと言えるでしょう。
栗本鐵工所(5602)
上下水道向けのダクタイル鋳鉄管を主力とする老舗メーカーです。全国で水道管の老朽化が進むなか、更新需要拡大の恩恵が期待される企業として注目されています。日本では高度経済成長期に整備された水道インフラが更新時期を迎えており、漏水や破損リスクへの対応が大きな課題となっています。
同社は鋳鉄管だけでなく、水処理設備や産業設備なども手掛けており、インフラ整備を支える幅広い事業基盤を持っています。国土強靭化や防災・減災関連投資の拡大も追い風となる可能性があります。
横河ブリッジHD(5911)
橋梁建設・補修の大手企業です。
橋梁は一度劣化が進むと補修費用も大きくなるため、定期的な点検や予防保全の重要性が高まっています。防災・減災や国土強靭化政策の進展を背景に、中長期的な需要が期待される企業です。
(田代 昌之)

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