国鉄が普通列車に使われていた旧型客車を取り替えるために953両もの数を製造した50系客車。「レッドトレイン」と呼ばれた国鉄時代の50系客車に、いまでも乗ることができる列車があります。

かつては日本各地で使われた赤い客車

 寝台特急の「ブルートレイン」に対して「レッドトレイン」と呼ばれた客車をご存じでしょうか。それが50系客車です。

 50系客車は国鉄が普通客車列車に使用していた旧型客車を取り替えるため、1977(昭和52)年から1982(昭和57)年にかけて製造した車両です。本州以南用のオハフ50形とオハ50形とともに、1978(昭和53)年から1982(昭和57)年にかけては北海道向けに小さめの二重窓とされた51形(オハフ51形とオハ51形)も製造、総計953両が日本各地で使用されました。「レッドトレイン」の愛称は、それまでの客車が青色や茶色の車体色だったのに対し、50系では赤色となったためです。

「レッドトレイン」と呼ばれた国鉄50系客車 昭和後期生まれの...の画像はこちら >>

EF71形電気機関車のけん引で奥羽本線の板谷駅付近を走る50系客車(伊藤真悟撮影)。

 1987(昭和62)年のJR化後はJR東海を除く旅客会社に引き継がれましたが、普通列車の電車化などにより2001(平成13)年で赤い車体の50系は運転を終了。快速「海峡」用に改造されたJR北海道の50系も2002(平成14)年で運転を終了し、JR線上から50系の定期列車は消滅しました。

 しかし、現在でも50系客車に乗ることができる列車が存在します。

真岡鐵道「SLもおか」

 真岡鐵道のC12形蒸気機関車がけん引する「SLもおか」は、1994(平成6)年の運行開始以来、50系客車が使われています。

「レッドトレイン」と呼ばれた国鉄50系客車 昭和後期生まれの一大勢力 いまも乗れる!

C12形蒸気機関車がけん引する真岡鐵道の「SLもおか」(画像:写真AC)。

 真岡鐵道の50系客車はJR東日本から3両を譲り受けたものです。

その際、車体色は赤から茶色(ぶどう色2号)となり、当初は白い帯を巻いていましたが、2010(平成22)年に赤帯に変更しています。

 現在、車内の座席モケット(布地)が青色から緑色に変わっていますが、冷房改造も行われていないため、首都圏でオリジナルの50系の雰囲気が楽しめる列車と言っていいでしょう。

JRでは観光列車に残る

 JRでは50系客車を使用した一般定期列車は消滅しましたが、観光列車で使われています。

JR北海道「釧路湿原ノロッコ号」「富良野・美瑛ノロッコ号」

 JR北海道の釧網本線で運転される「釧路湿原ノロッコ号」と富良野線で運転される「富良野・美瑛ノロッコ号」に50系客車が使用されています。

「釧路湿原ノロッコ号」は、1989(平成元)年6月に釧路~塘路間で運転を開始。当初は旧型客車のスハフ42形と貨車のトラ70000形(トラ71422)と車掌車ヨ3500形(ヨ4350)を改造した3両編成でしたが、1993(平成5年)6月にオハフ51 4を連結。1998(平成10)年5月まで4両編成で運転されました。同年7月からは50系客車を改造した3両編成での運転を開始。2004(平成16)年には最長5両編成となりましたが、2016(平成28)年以降は4両編成での運転となっています。

「レッドトレイン」と呼ばれた国鉄50系客車 昭和後期生まれの一大勢力 いまも乗れる!

DE10形ディーゼル機関車がけん引する「釧路湿原ノロッコ号」。DE10形の次に連結されているのがオハ510-1(画像:写真AC)。

 このうち自由席車両として使われるオハ510-1はオハフ51 57を改造したものです。

車端部に発電機室を装備していますが、車内は改造前の姿を保っています。

 いっぽう、「富良野・美瑛ノロッコ号」は1997(平成9)年6月に初代の「釧路湿原ノロッコ号」編成で運転を開始し、1999(平成11)年6月に50系51形を改造した編成が登場。「釧路湿原ノロッコ号」編成とは異なり車体色を茶色となったのが特徴です。ただし車内は改造され、木製の座席とテーブルとなっています。一時期は貨車を改造した車両を連結した最大5両編成でしたが、現在は3両編成で運転しています。

 2021年4月現在、JR北海道が所有する50系客車は、この2列車に使われる7両のみです。

50系客車はSL列車にも

 50系を使用するJRの観光列車は、蒸気機関車がけん引するSL列車でも乗車することができます。

JR九州「SL人吉」

 JR九州の「SL人吉」に使われている客車は、50系客車を改造した50系700番台です。1988(昭和63)年に豊肥本線のSL列車「あそBOY」用として3両が登場したもので、屋根は二重屋根(ダブルルーフ)として、3両編成の両端の客車には展望室を設置。車内の床や座席、テーブルに木材を使用して車両全体を「ウエスタン風」としました。

 2005(平成17)年8月の「あそBOY」運行終了後、50系700番台はリニューアル。2009(平成21)年4月より「SL人吉」に使用しています。

「レッドトレイン」と呼ばれた国鉄50系客車 昭和後期生まれの一大勢力 いまも乗れる!

JR九州の観光列車「SL人吉」(画像:写真AC)。

 このリニューアルで、車体色は黒を基調としたものに。展望室の前面下も窓となったほか、座席も一部は本革張りとなるなど、高級感あふれる車内となっています。オリジナルの50系客車とはイメージが異なりますが、数少ない50系客車を使用した列車です。

「SL人吉」は本来、熊本~人吉間の列車ですが、「令和2年7月豪雨」の影響による肥薩線不通に伴い、2021年5月からは鹿児島本線の熊本~鳥栖間での運転となっています。

 2021年4月現在、JR九州が所有する50系客車は「SL人吉」用の700番台3両だけです。

番外編

 ここまでは実際に運転される列車を紹介しましたが、番外編として50系に乗車できる「保存車」を紹介します。

 それが京都鉄道博物館(京都市下京区)に保存されている「オハフ50 68」です。オハフ50 68は播但線などで使われた50系客車のなかの1両で、1993(平成5)年8月31日付で廃車。最終配置はJR西日本宮原客車区(現在の網干総合車両所宮原支所)でした。

 廃車後は京都博物館の前身、梅小路蒸気機関車館の扇形機関庫の横に「客車休憩所」として置かれ、京都博物館となってからも変わらず休憩所として利用することができます。車体色は赤色のまま。

残存する50系客車のなかでいちばん「レッドトレイン」を彷彿させる車両です。

編集部おすすめ