東京都内の車両基地や鉄道関連施設が集まる“鉄道の街”に、公道を横切る単線の踏切があります。閉まったときのほうがむしろレアな部類。
都市部には「開かずの踏切」のように、遮断時間が長すぎて対策が講じられる踏切がある一方、遮断する様子を滅多に見られず、「足止めされたらむしろレア」ともいえる踏切があります。そのひとつ、東京都北区にあるJR線の踏切を訪れました。
田端・尾久の両車両基地を結ぶ踏切は、人やクルマの通行量は少ない。正面奥に見える灰色の建物がJR東日本東京支社(小川裕夫撮影)。
踏切の名称は「王子街道南亘り踏切」。
先述の通り田端駅と尾久駅は別々の路線上にあるため、両駅をダイレクトにつなぐ列車はありません。しかし、それはあくまでも旅客の話。田端運転所や尾久車両センターなどは1本の渡り線で結ばれており、それがまさに王子街道を横切っているわけです。
ここを通過する列車は主に回送される機関車です。回送列車は時刻表に記載されず、また運転回数も少ないので、渡り線、そして踏切を通過する列車を目にする機会は滅多にありません。運が良ければ、尾久車両センターに所属するお召列車E655系電車や、クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」のE001形なども見られるかもしれません。
地元の東田端まちづくり協議会は、お祭りなどの際、渡り線に列車を走らせるといったことも模索していたようです。しかし公道を横切るという事情から、実現には至っていません。