セルフのガソリンスタンドで、なかなか給油が始まらなかった経験を持つ人もいるかもしれません。実はこの給油には「許可」が必要なのです。

セルフ店ならではの仕組みですが、現在はその効率化を図る動きがあります。

「給油許可」が必要なセルフのスタンド

 セルフのガソリンスタンドで、なかなか給油が始まらなかった経験を持つ人もいるかもしれません。実は、その一連の流れは必ず店員にチェックされています。給油が始まらなかったのは、事務所にいる店員が「給油許可」を出すのが遅れた、あるいはその給油をしたい人が“正しく”給油しようとしていなかったのかもしれません。

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給油のイメージ(画像:Wavebreak Media Ltd/123RF)。

 セルフスタンドでは店員がサービスルーム内から、目視あるいは監視カメラで客の行動をチェックします。

 総務省消防庁によると、誤給油の心配はないか、ポリタンクなどの容器に給油しようとしていないか、子どもに給油ノズルを持たせていないかなど、危険に直結する行為に注意を払い、適切に指導する必要があるといいます。

 客が一連の手順を問題なく済ませ、給油ノズルをクルマの給油口に差し込んだ時点で、店員はサービスルーム内にある「制御卓」と呼ばれる装置の「給油許可」ボタンを押します。これで給油が可能になります。

 このような「給油監視」と「給油許可」のため、店側はたとえ深夜でも、ひとりは必ずサービスルームに常駐する必要があります。2017年にあるガソリンスタンドで、小さな棒が自動で繰り返し給油許可ボタンをたたく“謎の装置”を使って不正をしていたことが話題にもなりましたが、給油許可は消防法により定められたセルフスタンドのルールなのです。

給油許可、いずれは全自動? すでに一部規制緩和

 他方、この安全性を担保するためのしくみを効率化しようという動きもあります。

カメラ映像と給油許可システムを掛け合わせ、画像からAIが給油監視と給油許可を判断するというシステムの実証実験が、2018年から行われています。

 コスモ石油マーケティングによる実証実験の概要書では、次のように書かれています。

「SS(サービスステーション)業界ではスタッフ募集をかけても人が集まらない状態が常態化しており、後継不足による廃業、事業精算が進んでいる他、大手のセルフSSでもすでに24時間営業をやめる店、カーケアサービス休業日を設ける店への移行が始まっている。また、2030年度までにガソリン需要は大きく減少するという予測に対
し、各社車販・リース等取り扱い商材の多様化、SS敷地内での他業種展開に取り組んでおり、今まで以上にスタッフに幅広い知識とスキルが求められるようになっている」

 そのうえで、「現在SSC(給油監視)スタッフが行っている業務をAIに代替させることで、SSの少人化や、既存スタッフの高付加価値販売へのシフトを可能とし、またAIによる安全サポートにより現状以上の安全を確保できるようにすることを目的としている」とあります。

 AIによる自動給油許可は、カメラより取得された画像情報などから正常な給油姿勢であれば給油の許可を、給油の際に火気の疑いがある際や、ポリタンクや携行缶への給油が疑われる際は、給油の停止を自動で行うそうです。

 こうした背景から実証実験は「業務の効率化と多角化に資する」目的で行われていますが、その過程ですでに一部の規制緩和もなされています。

あれ、給油が始まらない…全部見られてます! セルフGSは「給油許可」が必要なワケ “全自動化”もメド?
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AI自動給油許可システムのイメージ(画像:ELEMENTS)。

 2020年から、サービスルームの制御卓に限らず、タブレット端末での給油許可がOKになり、スタッフは他の仕事をしながら給油許可を出すことが可能になっています。

 また、AIによる自動給油許可システムについてコスモ石油マーケティングは、2023年の実証実験で、「今後も試験的にSSに導入する等して運営者からのフィードバックを受けながら改良する必要はあるものの、今回実証で実用レベルのAIシステムが開発できた」としています。