北陸新幹線の金沢延伸開業によって、その沿線ではない黒部ダムなどに波及効果が出ています。

“通過点”となった長野エリアでも

 2015年3月に、長野駅から金沢駅まで延伸した北陸新幹線。

JR西日本によると北陸新幹線の延伸区間について、この8月における利用者数は、前年の在来線時代と比べ264%(上越妙高~糸魚川間)にもなっているとのこと。金沢・富山をはじめとする北陸エリアがいま、変化の時を迎えています。

 しかし、延伸によって“通過点”となった長野県を含むエリアでも、新たな変化が起きています。映画『黒部の太陽』で知られる黒部ダムや標高2450mの立山室堂を経由し、長野県大町市の扇沢駅と富山県立山町の立山駅を結ぶ「立山黒部アルペンルート」です。

 この「アルペンルート」は扇沢~立山間で、トロリーバスやケーブルカーなど6本を乗り継ぎます。すべて通り抜ける場合、モデルコースの所要時間は6時間。午前10時出発の場合、到着する頃にはもう夕方です。

 そのためJR東日本長野支社によると、長野県側から「アルペンルート」に向かう観光客には、富山県の立山駅まで抜けず、途中の室堂で長野県側へ引き返す人も多いといいます。

 また「アルペンルート」でトロリーバスを運行する関西電力によると、逆に富山県側から入った観光客は長野県まで抜けず、途中の黒部ダムで立山駅へ引き返す人も多いとのこと。

 こうした状況が、北陸新幹線の延伸開業で変わりつつあります。

離れた場所で起こる新幹線効果

 JR東日本長野支社は2015年6月、長野県内から日帰りで「アルペンルート」を走破する旅行商品を発売しました。

「これまで長野からの『アルペンルート』日帰りは時間的に難しかったですが、北陸新幹線の延伸で、それが楽にできるようになりました」(JR東日本長野支社)

 北陸新幹線の延伸開業により、長野~富山間の所要時間は約2時間40分から45分へ大きく短縮。

これにより、「日帰りアルペンルート」という新たな“人の流れ”が誕生したわけです。

 新線開業の経済効果は、その“線”沿線へ注目が集まりがちですが、“線”の活用によって、遠く離れた場所にも効果が波及していました。

 黒部ダムや立山室堂は都会から遠く離れた山奥の“秘境”というイメージがあるかもしれませんが、新幹線はその“秘境”を身近なものにしていました。

 ちなみに北陸新幹線の活用で、東京から日帰りで「アルペンルート」を楽しむことも可能です。東京駅を7時20分発の「かがやき503号」で出発。富山駅発の東京行き最終の新幹線は21時20分発「かがやき518号」で、東京駅23時32分着。ややハードですが、「アルペンルート」を走破したうえ、富山市内で食事をする時間もあります。

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