陸橋などの下に潜る構造のため豪雨時は水没しやすい「アンダーパス」。なぜ危険なのにこのような道の通し方になっているのでしょうか。

毎年のように水没事故があるのになぜ?

 道路や鉄道などが立体交差する際、下側の道路が地面よりも低く掘り下げられた構造を「アンダーパス」と呼びます。特に都市部ではよく見かける構造ですが、豪雨や台風の時期になると冠水してしまい、毎年のように事故車が出るという問題も抱えています。

夏の豪雨や台風で度々水没「アンダーパス」なぜ無くならない? ...の画像はこちら >>

豪雨時は水没リスクのあるアンダーパスのイメージ(画像:写真AC)

 では、それほど危険を伴う構造が、なぜ今なお作られているのでしょうか。

 国土交通省によると、アンダーパスは交通渋滞の緩和や安全性の確保などを目的として整備されています。もちろん、立体交差を作る方法は他にもあり、たとえば橋をかける「オーバーパス(高架)」という手段もあります。

 しかし都市部では、高架構造には土地の制約や景観への影響、騒音などの問題がつきまといます。さらに、高架よりもアンダーパスの方が、工事費を安く抑えられる場合が多く、結果として地下に掘る選択が取られるのです。

 また、鉄道と交差する「無踏切化」の工事においても、アンダーパスは有利です。線路の下を車道がくぐる構造にすれば、鉄道の運行を止めずに工事ができるため、工期やコストを抑えることが可能です。

 このように、アンダーパスには実用面で多くの利点があるため、水没のリスクがあるからといって数を減らすことはなさそうです。

 そのためJAF(日本自動車連盟)や地方自治体は豪雨時のアンダーパスの通行について、定期的に注意喚起を行っています。豪雨時には「この先、道路冠水のおそれあり」などの標識がある場所には極力近づかず、回避行動をとるように呼びかけています。

 特に激しい雨のときは、わずか数分でアンダーパスが水没することもあります。低い位置にあるため周囲の雨水が集まりやすく、排水ポンプが一時的に機能を失うと一気に冠水してしまうためです。

 また夜間では、浅い水たまりと見間違えて車で進入してしまい、水没事故につながることもあります。視界が悪い状況では特に危険性が高まるため、豪雨時は不要不急の運転を控えるのが賢明です。

  ちなみに国土交通省は2022年にアンダーパスの全国の数を発表していますが、その資料によると、全国には3661か所の存在し、都道府県別で最も多いのが埼玉県で262か所、2位が新潟県の240か所、3位が兵庫県の178か所になっています。

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