イラン攻撃で再び脚光もさすがにもう限界?

 アメリカ空軍が運用しているA-10C「サンダーボルト II」攻撃機は、その特徴的な外見から軍用機として高い知名度と人気を博しており、現場では「ウォートホッグ(イボイノシシ)」の愛称でも知られます。

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 実戦においても今年の2月末から始まったイラン攻撃作戦「エピック・フューリー」では、ホルムズ海峡周辺でイラン海軍や革命防衛隊の高速艇に対する攻撃任務に投入されました。

さらにイラン領内で脱出した戦闘機乗員の救出作戦では、救難ヘリを護衛する支援機としても活動しています。

 しかし、世間の注目度の高さと活躍とは裏腹に、この攻撃機はアメリカ空軍からの完全退役が迫っているのです。

 A-10の退役については度々話題となっていました。

 アメリカ空軍はA-10のような低速で飛ぶ攻撃機は、防空兵器が高性能化した現代の戦場で生き残れる可能性は低いと考えており、2015年頃から同機の全面退役を考えていました。そして、A-10の完全退役によって浮いた予算と人員を、F-35ステルス戦闘機などの新しい装備品に転用して、装備と能力の更新を考えていたのです。

 ところが、アメリカ議会は攻撃機として唯一の存在であるA-10を高く評価しており、同種の能力を持つ後継機が存在しないことから、アメリカ空軍の退役案に反対しました。これ以降、A-10の退役は軍と議会の対立によって延期され続けてきたといってもいいでしょう。

支援インフラの活動停止! もうさすがに退役するしか無い?

 アメリカ空軍は議会の反対にされつつも、A-10の段階的な削減を進めており、退役計画を打ち出した2015年頃には約280機あった機体が、現在はその半分以下まで削減されています。

議会「А-10退役ダメです」さすがにもう無理ですよ! “地上...の画像はこちら >>

アリゾナ州デイビス・モンサン空軍基地で駐機するA-10攻撃機(画像:アメリカ空軍)

 最新の計画では2026年度予算案でA-10の全機退役の方針を示していて、次年度予算が始まる今年の10月までにすべてのA-10が退役する予定でした。

 しかし、またしてもこの案に議会が反対し、2026年度NDAA(国防権限法)において「2026年9月30日までA-10を103機保有し、その内の93機を任務機として維持」という条件を義務付け、完全退役の予定はまたしても不透明になっています。

 ただし、A-10の完全退役自体は、多少の延期はあっても確定路線なのは間違いないようです。議会と退役機数を巡ってつばぜり合いをしている一方で、アメリカ空軍内のA-10の運用を支えていた部隊は、その役割を次々と終えています。

 今年の2月にA-10の重整備を担ってきた571整備飛行隊が解散し、機体延命を支えてきたデポ整備体制も終了しました。

 4月には新人パイロットを育成する第357戦闘飛行隊で新規パイロット教育課程が終了し、これ以降の新規パイロットの訓練は行われないそうです。

 A-10は現在も最前線で活躍する一方で、その本国では整備と教育の基盤が次々と消えている状況にあります。つまり、機体の延命も退役したパイロット補充も不可能という訳です。就役から半世紀以上経ってようやくA-10は退役に向けた姿勢を示したともいえます。

 ただ、この攻撃機は実戦に出ると確実に実績を残し続けています。終焉に確実に向かっているのにも関わらず輝き続けており、その終わりは静かなものにはならないようです。

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