船乗りといえばお酒好き、というイメージを持っている人も多いかもしれません。そのようなイメージのとおり、アルコール離れが進む令和の時代にあっても、海上自衛隊には飲兵衛の隊員が多々います。
【マンガを読む】護衛艦乗りの飲酒事情 現役自衛官に聞いてみた!
ところが、実は海上自衛隊の艦艇では基本的にお酒の持ち込みは禁止されており、飲兵衛隊員も出港中はもれなく「強制休肝日」になってしまうのです。理由は極めてシンプルで、規律維持と安全確保のため。艦内では見張り(ワッチ)や機械操作など、常に高い集中力が求められる任務が続きます。ほんのわずかな判断ミスが重大な事故につながる可能性もあるため、お酒の影響は排除する必要があるのです。
ただ、隊員が出港から帰港まで一滴もお酒を飲めないというわけではなく、寄港中であれば船から降りて外で飲酒することは可能ですし、許可を取れば寄港地でお酒を土産として買うこともできます。ただし、この場合は必ず許可を取り、CPO(先任海曹室)などで厳重に保管するという条件つきなのだとか。
過去には、「少しならいいだろう」と無許可でお酒を持ち込んだ隊員に懲戒処分が下されたこともありました。たかがお酒、されどお酒。沖縄に行ったらハブ酒、東北なら地元の日本酒を買いたいところですが、ルールは絶対です。
ちなみに、ささやかな慈悲としてノンアルは持ち込みOK。
こんなにお酒に厳しいなんて、旧海軍から続く伝統なのだろうと思いきや、実は旧海軍時代には、「酒保(しゅほ)」という艦内のコンビニ的なお店でお酒が買えました。現在の海上自衛隊では発足時から米海軍のルールに倣い艦内禁酒となっていますが、現在でも売店のことを「酒保」と呼ぶ名残はあります。とはいえ、最近はあまり使われない、ほぼ死語になりつつあるようですけどね。
護衛艦内に設置された自動販売機。乗員の福利厚生のほかに真水の節約という意味もある(画像:自衛隊和歌山地方協力本部)
私の夫で海上自衛官のやこさんに、このあたりの事情を聞くと、なかなか面白い話が聞けました。いわく「上陸中に街へ飲みに行ったはいいけれど、ご機嫌で帰艦しようとしたら岸壁に同じ型の艦艇が隣に停泊していた。間違えて違う艦に帰った隊員がいるから禁酒は妥当」とのこと。なんというトラップ。その飲兵衛隊員がそのまま知らない人のベッドにお邪魔していなかったことを祈ります。
というわけで海上自衛隊では残念ながら禁酒ですが、海外ではお酒がOKな海軍もあるので、海外寄港時の艦内レセプションなどでは相手に合わせて飲酒が許可されるレアケースもあります。じゃあここぞとばかりに飲んでしまう飲兵衛隊員がいるんじゃないか……と心配になりますが、そこはスマートで鳴らした海上自衛官。
そんな海上自衛官のお酒にまつわる悲喜こもごものハナシでした。次に上陸した日の一杯が、最高のご褒美になりますように!

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