「船が砦と戦うのは愚か」
イギリス海軍のホレイショ・ネルソン提督の言葉です。海上戦力である「船」と陸上戦力である「砦」が戦えば、一般に有利なのは陸上です。
これをデモンストレーションして見せたのが、2026年4月20日~5月8日にフィリピンで行われた米比主催多国間共同訓練「バリカタン26」の一場面でした。SNSで注目されたのは、陸上自衛隊による88式地対艦誘導弾の実射映像です。ルソン島北西部の沿岸からミサイルが2発連続発射され、洋上約75kmに配置されていた標的艦に初弾が命中します。2発目は命中しませんでしたが、これは同一目標にミサイルが集中するのを避け、命中確認後は別目標に移行するようプログラムされた正常な動きとされています。貴重な実艦標的を航空部隊の射爆訓練にも使えるようオーバーキルを避ける意味もあったようですが、結局航空部隊到着前に沈没してしまいました。
重要なのは、88式が命中したことだけではありません。映像では88式発射機の周囲に、アメリカ海兵隊のNMESIS(海軍・海兵遠征艦艇阻止システム)、海兵隊防空統合システム(MADIS)が展開していました。今回の訓練は「対艦ミサイル実射」に留まらず、中国海軍を第一列島線で封じ込めるための“分散型・機動型の海上拒否ネットワーク”をデモンストレーションすることでもありました。
88式地対艦誘導弾は1988(昭和63)年に調達が始まった陸上自衛隊の対艦ミサイルです。
88式はアメリカの射場でほぼ毎年射撃訓練を行っていますが、フィリピンでの訓練は意味合いが違います。訓練地域となったルソン海峡は、中国海軍が太平洋へ進出する際の主要な通路の一つです。そこの多国間演習で実射を行い、従来の「本土防衛用兵器」から、「前方展開型兵器」の役割を担う可能性を示したのです。
現代の島嶼防衛戦で重要なのは?88式と一緒に映っているのは、アメリカ海兵隊の「NMESIS」です。ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社が開発したナーバル・ストライク・ミサイル(NSM)を搭載した新型の沿岸対艦ミサイルシステムで、小型高機動力、無人運転や空輸展開も可能です。小規模部隊で島嶼(とうしょ)へ迅速展開し、敵艦隊を牽制、抑止するために設計された兵器です。
かつてアメリカ海兵隊は、「上陸して地上戦を行う部隊」でした。しかし中国軍の長距離精密打撃能力が急速に向上したことで、大規模部隊を集中的に展開する戦い方は危険視されるようになっています。そこで海兵隊は現在、「フォース・デザイン2030」に基づく大規模改革を進めています。
もう一つが、MADIS防空システムです。近距離防空・対ドローンシステムで、30mm機関砲とスティンガー・ミサイル、電子戦機能を装備する「Mk.1」、索敵レーダー、赤外線光学装置、指揮通信機能の「Mk.2」の2種類でペアを組みます。
ロシア・ウクライナ戦争でも明らかになったように、ドローンによる戦場監視は常態化しています。ミサイル部隊が発射準備を始めれば、その位置は上空から発見され、自爆ドローンや徘徊弾薬、砲撃などによる反撃を受ける危険があります。「敵艦にミサイルを命中させる」前に「ミサイルを撃つまで生き残れるか」が重要になっています。そのため対艦攻撃、防空、対ドローン、電子戦、分散機動をセットで運用しなければなりません。MADISはその生存性を支える装備となっているのです。
88式は古い兵器です。すでに自衛隊では、より長射程の25式地対艦誘導弾の整備が進められています。
つまり現代の島嶼防衛戦では、「どこの国のミサイルか」ではなく、「誰が探知し、誰が撃ち、誰が守るか」が重要になっているのです。1980年代生まれの88式であっても、そのネットワークの一部として機能するなら、依然として大きな価値を持ちます。フィリピンの88式の映像は、中国の「船」に対して第一列島線内で多国間の「砦」ネットワークが構築された瞬間を映したものでもありました。

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