新しい1万円紙幣に明治の実業家、渋沢栄一と、JR東京駅の丸の内駅舎が描かれます。日本の紙幣で鉄道の施設が描かれるのはこれが初めてとみられますが、渋沢も日本の鉄道と深く関わった人物でした。

鉄道施設が描かれる初の紙幣に

 財務省は2019年4月9日(火)、日本銀行券のうち1万円、5000円、1000円の各紙幣を新しいデザインに変えると発表しました。このうち1万円紙幣は、表面の肖像が明治期の実業家として知られる渋沢栄一。裏面は「赤レンガ駅舎」として知られるJR東京駅の丸の内駅舎が描かれます。

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新1万円紙幣の裏面に描かれる東京駅の丸の内駅舎(2014年1月、草町義和撮影)。

 鉄道施設が日本の紙幣に描かれるのは初めてとみられますが、実は表面の渋沢栄一も、鉄道と深く関わりのある人物です。

 渋沢は江戸時代末期の1840(天保11)年生まれ。

若いころは倒幕運動に関わりましたが、のちに江戸幕府の第15代将軍、徳川慶喜の幕臣に。1867(慶応3)年のパリ万博開催にあわせ、フランスに渡りました。

 しかし、大政奉還後の1868(慶応4・明治元)年、明治新政府の命令を受けて帰国。1869(明治2)年、フランスで得た知識をもとに、静岡で商法会所(金融商社)を開きました。これが新政府の目に留まり、同年10月には大蔵省(現在の財務省)に入ります。

 1873(明治6)年には退官して実業家に転身。

第一国立銀行(現在のみずほ銀行)の頭取に就任したほか、全国各地の企業の設立に関わりました。その数は500社以上といわれています。

「裏」も「表」も埼玉と深い縁

 この企業のなかには、鉄道会社も多数含まれています。1872(明治5)年に開業した日本初の本格的な鉄道(新橋~横浜)は官設鉄道(国鉄)でしたが、渋沢をはじめとした実業家らは、この鉄道の払い下げを目指して鉄道会社を設立しました。

新1万円札は表裏で「鉄道つながり」! 渋沢栄一と東京駅をつなぐ縁

渋沢栄一は京阪電鉄など数多くの鉄道会社の設立に関わっている(2010年7月、草町義和撮影)。

 この払い下げは実現しませんでしたが、その後も渋沢は、都電の起源といえる東京馬車鉄道や、関西の京阪電鉄、関東の秩父鉄道などの設立に関与。

関東の東急電鉄も、1918(大正7)年に渋沢らが設立した住宅開発会社「田園都市株式会社」が起源です。ほかにも、北から南まで数多くの鉄道会社に何らかの形で関わっていました。

 ちなみに、渋沢が生まれた地は現在の埼玉県深谷市。ここにはかつて、渋沢が設立した日本煉瓦製造という会社の工場があり、東京駅丸の内駅舎の赤レンガも、この工場で製造されました。その縁もあり、1996(平成8)年にJR高崎線の深谷駅が建て替えられた際は、東京駅の丸の内駅舎に似せた駅舎を新築。北口の駅前広場(青淵広場)には渋沢の銅像があります。

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東京駅の赤レンガ駅舎に似せて建設された深谷駅。
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深谷駅の案内板には深谷と東京駅を結ぶ「縁」の解説がある。
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深谷駅の駅前広場にある渋沢栄一の銅像。

 渋沢栄一や東京駅丸の内駅舎が描かれた新しい1万円紙幣は、2024年度上期をめどに発行される予定です。

※一部修正しました(4月9日17時55分)。

【画像】渋沢栄一と東京駅が描かれる新1万円紙幣

新1万円札は表裏で「鉄道つながり」! 渋沢栄一と東京駅をつなぐ縁

新しい1万円紙幣のイメージ。
渋沢栄一と東京駅丸の内駅舎が描かれる(画像:財務省)。